見出し画像

アラフィフからのプログラミング!デジタルの海にダイブした私のリアルな体験#6

 #5では、前任者から引き継がれた方法を踏襲し、さらにそれをそのまま後任に引き継いでいくようなことを何十年も続けている組織の話をしました。私は、こういうことが起こる原因には、個人の性質と組織の体質や文化の2つがある、と考えており、今日はそのうち2つ目の組織の体質や文化について書いていこうと思います。


現状維持バイアス

 人間は本質的に変化を避ける特性を持っており、変化することにメリットがあると分かっても現状維持を選んでしまいます。これが「現状維持バイアス」ですが、脳のエネルギー消費を抑えるために備わっている機能とも考えられているそうです。確かに新しいことを始める時には頭を使って沢山考えないといけないし、「うまくいかないかも」という不安も出てくるので心理的な負担も増えますもんね。組織も人と同じでこうした負担を避けたいので、今のやり方で大きな問題がなければ「今のままで良い」となります。これは文化というよりも人としての性質です。

本当は変化したくない上層部

 この組織の特徴は、トップダウン型つまり上意下達型で、上層部の意思決定に従業員が従うというスタイルでした。このスタイル自体が悪いわけではないのですが、問題は上層部が変化の必要性を感じていなかったところにあります。一応「変革が大事だ」「今年は私たちも変革をするぞ」という掛け声はかかっていましたが、トップ本人は何一つ変化も変化しようという努力もせず、そのうえ組織の変革は部下に丸投げ。日々そんな姿を目にしているメンバーが「よし、自分も新しいことに挑戦してみよう!」と思うわけがありませんよね。
 かの電通で10万時間削減の働き方改革を成功させた小柳はじめさんも著書「鬼時短」の中で言っています。

「社長は『私欲』を訴えなければ社員には届かない」ということ。
つまり、「タテマエやキレイゴトではなく、ご自身の『心の底からの欲求』を、ストレートに発信しよう」ということです。

小柳はじめ 著「鬼時短」

 それによって本気で会社を根本から変えよう、その変化についてこられない社員が相当数いるのもやむを得ない、とまで「覚悟」をきめているのか。
 言いかえると、経営者にとって、そのテーマは「これだけは何が何でも実現したい、心の底からの欲求」なのか。

小柳はじめ 著「鬼時短」

 この本を読んだとき、「まさにそのとおり!」と膝を打ちましたね。トップが本人も組織も変わることを本気で望んでおらず、必要だとも思っていないのであれば、「我々は永久に変化せずこのままを貫く!いかに社会がデジタル化しようとも、うちは長時間かけて手作業をする奴が偉いとみなす!」と断言してくれたほうが余計な期待をせずに済むだけまだマシだということです。

従順で安定的な人を評価する制度

 また、従業員の評価も「上司や先輩の指示や助言をふまえて、いかに従来からの業務を忠実にこなすか」という、いわば従順さや安定性を重視したものでした。スキルの向上や効率化といったことが評価のステージに登ることがないので、従業員に改善提案やクリエイティブなアイデアを出そうとするインセンティブは生まれません。
 具体例をあげると「上司や先輩の指示や助言、組織の方針をふまえた資料を作れるか」という基準で評価されるのが「企画力」や「創意力」になっていたんですね。でもこれ、よく考えてみてください。指示や助言を受けて資料をうまく作る人って企画力も創意力もない人ですよね。どう考えたら誰かが決めた目的に沿った資料作りをする能力が「企画力」や「創意力」だと判断できるのか、私には理解できません。でも”ずっと”採用されてきた評価基準ですし、これによって長年評価されてきた在籍年数の長い従業員が「企画力と創意力が高くて安定志向の従順な資料作り屋」になっていること、想像に難くないですよね。

こうして改善を否定する環境ができあがる

 こうしてこの組織は長い年月をかけて変化や改善を否定する環境を作り上げていました。新しく入ってきたり異動してきた人がなにか工夫や改善をすると「なぜ教えたとおりにやらないんだ!」という怒号が飛びます。(これは変化云々という以前にパワハラか…)
 在籍年数の長い人は「自分はここまで頑張った(耐えた)。そして評価されてきた」という意識が強く、その同じ経験を後輩に押し付けることで「自分が耐えたのだから、次は君たちの番だ」と優越感を感じます。年配社員は自己防衛の意味もあって自分の苦労を正当化しますし、決まっていることを苦労して時間をかけて作業することをスキルの高さとか熟練と勘違いしているので、根拠のないプライドだけが形成されますます変化を受けつけなくなります。

怠慢は美徳だと思う

 ラリー・ウォールというアメリカのプログラマーが、「怠慢」「短気」「傲慢」をプログラマーにおける三大美徳だと提唱しました。私は特に「怠慢」はすべての人において美徳となりうると思っています。
 つまり、言われたことを言われたままに延々と繰り返しやるような「勤勉さ」よりも、同じことをしなければならないのなら、どうやって効率的に(=楽に)終わらせることができるか考える「怠慢さ」を持っていたほうが、我慢したり耐え忍ぶことを極力減らしてハッピーにやっていける、というわけです。

「怠け者」は美徳ではないですが…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?