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日銀短観(のデータ収集)のはなし

 先日Voicyを聴いていたら、税理士の大河内薫さんが10月1日に公表された日銀短観の話をされていました。
 日銀短観というのは正式名称「全国企業短期経済観測調査」という、日銀(日本銀行)が行っている調査の一つです。日銀は金融政策を決定するにあたって、さまざまな調査をして経済全体の動向を把握するためのデータを集めているのですが、この調査では日本全国の企業にアンケートをして景気の現状や今後の見通しについて訊いています。
 まあ、本来はそういうものなんですが、私にとって「日銀短観」は「大嫌いな地獄のコピペ作業」を連想させる忌まわしい?ものでした。


公表されているデータ(の一例)

 調査対象の企業は、製造業17業種、非製造業14業種に分けられています。調査項目は例えば経営状況や商品やサービスの需給バランス、雇用人員の過不足など、細かい分類を含めると数十種類もあります。

公表されているシートはこんな感じ。このビジュアルだけでウンザリ…

 たとえば、宿泊・飲食サービス業を見てみましょう。業況のD.I.のところを見ると2023年3月~2024年9月の調査結果があります。例えば2024年9月調査では、調査時点で「自分の会社の業況が『良い』と回答した会社の割合(%)-『悪い』と回答した会社の割合(%)」が28なので、業況が良い会社が多いということになります。また、同じ2024年9月調査の雇用人員のD.I.を見ると、「自分の会社の人員が『過剰』と回答した会社の割合(%)-『不足』と回答した会社の割合(%)」が-68なので、人員が足りないと考えている会社がかなり多いということが分かります。

D.I.(ディフュージョン・インデックス:Diffusion Index)

 このD.I.を計算するための元のデータもあります。例えば10月に公表された2024年9月調査のデータを見ると、宿泊・飲食サービス業の会社のうち、最近自分の会社の雇用人員が「過剰:1」と回答したのが2%、「不足:3」と回答したのが70%あったということが分かります。先ほどのD.I.が-68というのは2-70という計算で導き出された数値ということが分かります。
(「適正:2」と回答したのは28%)

選択肢ごとの回答企業割合(%)も公表されている

担当者(私)のミッション

 長々と短観のデータの説明をしてしまいましたが、要するにこのように公表されているデータの中から、自分達が集めている業種の業況や雇用人員、資金繰りなどのデータを探して、集計のためのExcelシートにコピペをしなければなりませんでした。
 しかも、下の図を見ていただくと分かりますが、集計シートの作りが公表されているデータの作りと合っていないため、コピペをするにあたって左右を逆にしたり縦に並んだデータを横並びにしたり(行と列を入れ替え)をしなければなりませんでした。

左右を入れ替え&行列の入れ替えを行わなくてはならない

 「こんな形のシートにしたのはいったい誰なんだ?」と私は毎回腹を立てていました。手作業をすることが前提にあったとしても、その手順を最も少なくすることを考えなかったのでしょうか?でもまあ、このシートに限らず、組織で昔から管理している集計シートにはこういうのがたくさんあります。想像するに上司から「●●のデータを集めておいて」という指示を受け、データ集計シートから作ることになった担当者がデジタルリテラシーを持たない場合は大抵こういうことになり、それが何十年も引き継がれて今日の悲劇を生んでいるのです。
 また、上のシートがデータベースの体をなしていない(なので、さらに別のデータと組み合わせるとかBIツールで視覚化するなど、発展させるのはものすごく困難)ということは、ちょっと勉強した人ならすぐにわかりますよね。

政府もデータ表記方法の統一ルールを決めている

 データベースで思い出しましたが、総務省が2020年の時点で「統計表における機械判読可能なデータ作成に関する表記方法」というものを公表しています。「これは全国民が義務教育で学ぶべき」と言っていた人がいましたが、私も激しく同意します。会社の社長さんや採用担当者は、自分の会社や組織を持続可能にしたいのならば、これを知らない(しかも学ぶつもりもない)人は採用してはいけないと思いますし、私が社長だったら絶対に採用しません。でも、そもそも社長さんや採用担当者が知らないという場合がほとんどなのだと思います。

 ということで、これをどうやって自動的にコピペできるようにしたのか、という話はまた次回以降にしていきます。


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