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PADで自動コピペ勉強会(第2弾)番外編

 PADを使ったExcelコピペの自動化勉強会(第2弾)の1日目の内容が終わり、次は自動化の真骨頂である「フォルダに複数格納されているExcelファイルを順番に起動してはコピペして閉じる」というフローを作ることを学ぶ2日目ということでしたが、ここで思いもかけない事態が発生してしまいました。


参加者のドタキャン

 勉強会当日、私は会場の会議室の準備をしていました。すると「自分の仕事も自動化したいのでPADを教えてほしい」と言ってきた別の部署の若手社員がやってきてこう言いました。「今日は仕事が忙しいので、勉強会は欠席します」

え?どういうこと?

 私は、とっさに彼女の言っていることが理解できませんでした。「あなたが自分の仕事を自動化したいからPADを教えてと私に頼んできたんですよね?私はそれを受けて他の人やその上司たちにも声をかけて、参加者全員にスケジュールを訊いたうえで日程を調整して決めたんですよ。それをよりによって言い出しっぺのあなたが『今日は忙しいから参加しない』っていうのはどういうことなの?」とは言いませんでしたが、要はそういうことです。
 絶対に今対応しなければならない緊急案件が入ってきたというわけではありません。彼女の言う「今日は忙しい」というのは、毎度この時期にはある程度立て込むと分かっている業務がいつも通りにある、ということでした。また、彼女の上司は勉強会には参加していないものの、一応この日のこの時間は彼女が勉強会に出る予定になっていることを承知しているはずです。それでも、彼女は「いつもの業務をするために勉強会をドタキャンする」という選択をしました。
 私は心底がっかりしました。なぜなら彼女が見せたやる気(のようなもの)がただのポーズだったことが分かったからです。その彼女のポーズとしての発言に私は嬉しくなってしまい、エンジニア系上司にも協力を仰ぎ、他の人にも声をかけ、いろいろと調整をして勉強会を実施してしまったというわけです。私自身もそのために時間や労力を費やしましたが、それ以上に協力をしてくれたエンジニア系上司やそのほかの人達にも時間と労力を使わせてしまったということに申し訳なさを感じました。加えて、ドタキャンをしてきた彼女に対しては「馬鹿にするのもたいがいにしろよ」という憤りさえ感じました。上司・部下、同僚、先輩・後輩関係なく、他人の時間を奪うことの罪深さについてあまりにも無自覚だと思ったからです。
 彼女のこの態度は私にとって受け入れがたいものでしたが、一方で彼女がこうなってしまうのも仕方がないとも思えました。なぜならば、この組織では老若男女問わずほぼすべての従業員が、そして組織そのものが他人に時間や労力を使わせることに対してものすごく鈍感だったからです。私はこの組織の人達が「延々と何年間もコピペ作業をさせる」とか「使うかどうか分からない資料を作るため、とりあえず情報を集めてまとめさせる」といった無駄で無意味な作業を平気で他人にやらせていることに、耐えがたい苦痛と嫌悪感を覚えていましたが、この組織ではそれが当たり前になっており、むしろ苦痛を感じている人のほうが少なかったと思います。そうした組織で過ごしているうちに、自分もそれが当たり前になり何の疑問も感じなくなるというのは本当に恐ろしいことだと思います。
 また、「人の時間の貴重さ」に無自覚な人が集まった組織だからこそ、時間を有効に使おうというインセンティブが生まれず、業務効率化やそのためのツール習得にも身が入らないため、組織全体のデジタル化も進まないのだと思います。
 そして、なぜ彼らは時間が貴重だと思わないのかというと、それは彼らには目的や本気で実現したいこと、解決したい課題といったものがないから、というのが現在の私の結論です。

ドロップアウトは必然かも

 一応私も大人ですから、その場では「分かりました。では送ってあるテキストを見ながら自分でやってみて、分からないところが出てきたら質問してくださいね」と伝えましたが、結局その後彼女が質問に来ることはありませんでした。また、自分でPADを使っている様子も作業を自動化した様子も見られず、当たり前ですが彼女はドロップアウトしてしまいました。さらにもう一人の別の部署の参加者も「別の仕事がある」といって2日目の途中で退出し、そのまま同じようにドロップアウトしていきました。
 彼女たちがドロップアウトした直接の理由は私には分かりません。1日目を終わった時点で「ちんぷんかんぷんで全く分からない。もうこれ以上のことを教えられても無理」と思っていたのかもしれませんし、逆に「これなら簡単だし楽勝。あとは教えてもらわなくても一人でできるから今日は目の前の仕事をやろう」と思ったのかもしれません。また、そもそも自分の作業が面倒だとは思っていない可能性もありますし、上に書いた通り、無駄な作業に時間を使うことが彼らにとってたいした問題でなければ、はなから効率化や自動化などする必要はありません。彼らが学ぶのを途中でやめた本当の理由は分かりませんが、彼らがその後自分の業務にPADを使うことも効率化や自動化することもなかったというのは事実です。これはもう価値観の問題なのかもしれません。
 結局、3日間の全日程を最後までやり終えたのは2人でした。そして、その2人の部署の上司はどこかの日にちょっとでも勉強会に参加したり見学をしにきたりしていました。上司が少しでも一緒に学ぶこと、あるいは部下が学んでいる内容を知っていることと、参加者が最後までやりとげることにどういう関連があるのか定かではありませんが、上司や同じ部署の別のメンバーを巻き込むことで途中でやめたくてもやめられない環境ができるのかもしれません。

学びよりも目の前の業務が大事

 ここで思い出したのが、「田中淳子の『人材育成』応援ラジオ」というVoicy番組の昨年9月26日の放送です。
 この放送では、人材への投資が非常に価値あるという認識が定着してきた今でも、部下が研修に参加することに積極的ではない(昭和世代の)マネージャー層がいて、企業内の正式な研修でさえも「業務都合」を理由に休ませることが通用している現状に驚きを感じたと話されています。田中さん自身は、研修というのは業務時間内に行われる以上必要だからこそ企画されるものであり、業務の一部であると考えているということですが、研修などの学びは福利厚生の一環だと考える人もまだまだ多いようです。福利厚生だと考える人にとっては、当然ながら研修(学び)よりも目の前の業務が大事ですよね。

 私の勉強会は自主的な勉強であって正式な研修ではありません。ですが、部署のリーダーも承知したうえで、普段からおこなっている定型業務を自動化するスキルを身につけるために業務時間内に設定したものでした。自分から依頼しておきながら「今日は忙しい」とドタキャンするのは論外ですが、現在数時間かかっている作業を1か月後には1分で終わらせるスキルを身につけるために目の前の数時間を投資することよりも将来にわたって数時間かけていくことを選ぶというのは、どう考えても合理的とは思えません。
 でもまあ、そもそも人間というのは合理性だけで生きている動物ではないでしょうし、時間や仕事に対する価値観も人それぞれですしね。

 ということで、今日は番外編を書いてしまいました。本編?についてはまた次回以降に続きを書いていきます。

 

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