徳田直

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最近の記事

斜陽記 2人の子どもたちの場合

仮にでも愛してくれた人の首を掻き切る。 もう何度目だ、こんなの嫌なのに。 どうしてこんなことをしているんだっけ、それを思い出すのはシャワーで体を流す時だ。 排水溝に吸い込まれていく血液が僕が被っていた皮に見える。 偽物の僕を洗い流して、 帰る。やっと帰れるんだ、家に。 「しずく、ただいま…」 幼い頃から寄り添って、今やとても大事な存在となったその人の寝床に潜り込み、額にそっとキスをする。 その人は浅い眠りから覚めて、僕に気づく。 おかえりなさいという声は掠れて、髪を撫でる

    • 雰囲気のお話

      People.1 「…帰ろうか…」 僕とパートナーは、夏の陽気にあてられて海に来たことを早速後悔していた。 勿論、ふたりとも長袖長ズボン、サングラスに帽子、日焼け止めは全身に塗りたくった状態で来たのだけど、それでも眼の前に広がるぱりぴぱりぴな光景を見て即回れ右したくなったのを耐えている。 「せっかくですから、波打ち際だけ歩きませんか」 パートナーの提案に渋々うなずき、人が比較的少ない波打ち際を歩いた。 遠くに賑やかな人の声を聞きながら打ち寄せる波を避けて歩いていると、意外と

      • どうでもいい自己紹介のやつ。

        1、 最近買って良かったな、って思ったもの。 近くに、オーダメイドで、ドライフラワーのブーケを作ってくれるお店が、できたから、そこで部屋に飾るドライフラワーブーケを見繕ってもらったんだ。 生花を、飾ったり、しているときもあったけど、ドライフラワーも、良いよ…。 2、 最近買って良かったな、って思ったもの、そのに。 無印良品で、シュガーバインを買った。 直接水をやるタイプじゃないから…不器用な僕のもとでも、元気に育ってくれているよ。先住植物のタモ(ウンベラータ)とも仲良しで、

        • 自分のスペックを晒す、やつ

          みんな、まずは、沢山のいいね、を、ありがとう…。 のんびりに、なりましたが…全部、答えました…。 僕を、知る…きっかけに、なってもらえたら…って、思うよ…。 ----------------------------- 1.身長 170センチ...、縮んでたら、どうしよう... 2.年齢 32歳、だよ... 3.性別 男性、です、 4.特技 長く眠ること...。 なにかを、少しずつでも、続けること…。 毎日の、ルーティーンが、できていること…。 5.勉強 学ぶことは

          いいねをくれた人を紹介します

          なおさんはRTした人について ①呼び方 ②好感度(10段階) ③もし家族ならどんな関係か ④勝手に持っている印象・偏見 ⑤不思議に思っている事 ⑥もし教師だったらどんな教科を担当しそうか …を書きましょう。 呼び方は、最初に、言う、から あと…好感度、飛ばします…。みんな、好きなので…。 教師のやつは、僕が生徒、という設定(?)で、いくね…。 それでは…れっつ、ごー。 ---------------------------------------------------

          いいねをくれた人を紹介します

          四季と時間帯で分類するやつ その1。

          蓮さん ・夏の夜 線香花火に火をつけて貴女は笑う。 派手に火の粉を飛ばす手持ち花火より、僕はこっちのほうが好きなのです、そうこぼしたのを覚えていてくれた貴女は、集団が苦手で少し距離を取って一人でいる僕のためにわざわざ線香花火を持ってきてくれた。 しゃがんで見る、ぱちぱちと明るく花開くような火花は、大きな打ち上げ花火を小さくしたみたいだ。 「とても綺麗ね」 そっと、楽しそうに笑う貴女の横顔をうかがおうと視線を動かしたその瞬間に膨らんだ火の玉が落ちて、あっという間に光を失った瞳が

          四季と時間帯で分類するやつ その1。

          祈ることもお仕事

          「あの…、本当に、大丈夫…でしょうか…、」 悪い癖だと分かってはいても、いつも口をついて出てしまう言葉に長官である鵜沢さんは片眉を上げてこちらを見上げる。 自分が手に入れた情報を元に、組織の人達が動くことが僕はいつも怖かった。 もし情報が間違っていたら?自分が今もなお敵の掌で転がされているだけだったとしたら? そのミスは仲間の命に直結しているのだから。 モニター越しの雑音や、敵地に潜入する仲間の声、それに指示をする声、様々な音が飛び交うその部屋で、小さく漏らした声を聞き

          祈ることもお仕事

          真下に見る街

          ガラス張りのビルの最上階にあるカフェラウンジ、ブラインドの隙間で、床にどうしても一筋、赤いようなオレンジの光が差す席。 空いているならば、僕はいつもその席に通してもらうようにしている。 この時間、眩しいその席を選ぶ人は少ないので、大抵いつも空いているのだけど。 そこから、日暮れに向かいで分刻みに色が移ろう街を見下ろすとき。 働いていたり、買い物をしていたり。けれど、これだけ高いところから見ているというのに、みんなすごく早足なのがわかる。 僕はそんな時、勝手に「生き急いでいる

          真下に見る街

          自己紹介するやつ

          1、 名前は、徳田直。直っていう、名前の由来とかは、しらない。 2、 身長は、170センチ。 もう伸びないと思うし、最近、縮んでるんじゃないかと思ってる。 体重は、55キロ。さっき、はかった。 やっぱり、コロナで少し太ったのと、晩ごはん食べると、必ず1キロ増える。 3、 誕生日、は、1990年の6月18日。今年、30歳になった。 血液型はね、O型。なんだか、A型ぽいって、時々言われるけど…色んなところ、大雑把だから、自分では納得してる。 4、 お仕事は、研究室の小間使い

          自己紹介するやつ

          ある場合

          狭い部屋。型落ちのテレビには、黒人男性同士が交わるアダルトビデオが流れている。 粗雑に抱かれて、僕は精液まみれの身体でベッドに横たわったままでいる。 天井を見上げながら、このままいつまでこんな日々が続いていくのか。 そんなこと、いつもは考えもしなかったけれど。 まあ別にどうでもいいか。そう思って目を閉じた。 僕が生まれたとき、僕の両親はひどくがっかりしたという。 待望の女児として生まれてくる予定だった自分たちの子供が、いざ出てきてみたら男児だったからだ。 2000g台の、色

          ある場合

          僕がヒトでないのなら

          ヒトより、寿命の短い生き物になりたいと思うことが、よくある。 欲を言えば、ヒトに飼われる生き物がいい。 もっと欲を言うならば、放っておいてくれてもいいけれど、大事に、してもらえたら尚良い。 それが例えば犬であったり、猫であったり、なんでもいいが、どちらにしても、お互いに言葉の通じない、僕たちであろう。 ただ、この大きなヒトと呼ばれる生き物が掛けてくれている音の意味は分からないけれど、その声音の柔らかさや、ヒトの表情を見て、愛とか呼ばれるような、優しいものを感じて、僕はその伸ば

          僕がヒトでないのなら

          ザクースカ

          靴 ワルツ おはよう ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日曜日。朝9時。 私は優しい出汁の香りで目を覚ました。 少しけだるい体をゆっくりと起こして伸びをする。 窓が少し開けられていて、初夏ならではの爽やかなそよ風がカーテンを揺らしている。 彼女が作る朝食は休みの日でもいつもと変わりない。 野菜がたっぷり入った味噌汁と、卵焼きに作り置きの青菜のお浸し、そして炊きたてのごはん。 「おはよう。明(あき)」 「あ、おはよう、ハルちゃん。まってね、もうすぐできるから」 食

          ザクースカ

          トリクル・トリクル

          歩く 宝石 紫陽花 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー それは7月のある晴れた日。 私の幼馴染が交通事故に遭って死んだ。 「これ、貴女にあげるのが一番いいと思うの」 葬式で幼馴染の母から私に託されたのは何本ものUSBメモリ。 うちにあるパソコンに挿してみると、そこにはどれにも複数の音声ファイルが入っていた。 私はそれを知っている。 盲目であった彼の、その音声ファイルを録音していたのは、私だったのだから。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー File0

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