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SWPBS座談会:#2 推進チームの議論を職員におろす
第2回SWPBS座談会の開催
地域の先生方と共に、第2回となるSWPBS座談会を開きました。参加された先生方の中には、新たにSWPBSを立ち上げようとする学校の先生もおり、教職員間での賛同を得ることの難しさについて悩みを共有してくださいました。この先生方は、SWPBSの概要を説明したものの、組織的に支援を進める際に全教職員の協力を得られるのかということを心配されていたのです。
こうした悩みに対し、すでにSWPBSの実装を数年続けている先生方から、興味深い回答が寄せられました。今回は、その回答を報告しながら、教職員間の賛同を得るための工夫について考えます。
ある学校の取組
SWPBSに取り組み始めたある学校の先生は、ご自身の当初の取組を振り返りました。その学校では、推進チームを組織し、SWPBS実施の価値をチーム内で共有しました。しかし、トップダウン方式では受け入れが悪くなるのでは、という懸念がありました。
そのため、「学校の課題は何か?」という話し合いの場を全教職員と設けることが大切だと、その先生は語ってくださいました。学校のビジョンやミッションに基づき、既存のリソースを最大限に活用する効果的な実践を議論し、その答えとしてSWPBSへの共通理解を形成するまで、フォーマル・インフォーマルな場で対話を重ねることが、教職員の納得感につながるとのことでした。
人事異動と体制の維持
SWPBSを数年継続している学校では、人事異動の影響を受けやすい状況にあります。特に郊外の学校では、教職員の入れ替わりが激しいようです。新たに着任された先生の中には、「SWPBS?知らない!」という方もいるとのことです。そうした先生方と一貫した支援を提供しようとすると、前年度に取り組んだ内容であっても、再度共通理解を図る必要があります。
そこで、共通理解を深めるための工夫を尋ねると、粘り強い取組が功を奏することがわかりました。その学校には、新しい先生に「既にあるもの」と押し付けず、新年度の研修で理論的な部分を再確認する、研修の場で疑問や意見をぶつけ合い、賛同を改めて確認する、年度のはじめには試行段階に戻り、目標や場面を限定した取組を進める、などの工夫がありました。こうしたプロセスは一朝一夕にはいきません。しかし、組織的な取り組みを維持するためには必要だと感じました。数年来SWPBSを継続している学校の先生方には、改めて敬服したところでした。
SWPBSは目的か、手段か
意見交換の中で、「SWPBSは目的ではなく手段である」という視点が、賛同を広げる上で重要だと指摘される先生もいました。つまり、学校教育は「期待される子どもの姿を実現すること」が目的だというのです。確かに、SWPBSはその実現のための枠組みにすぎません。逆に、SWPBSの実践が目的化する、つまり「ポジティブ行動マトリクスつくらなきゃ」「トークンつかわなきゃ」など、必要とされる要素をただただ形式的に取り入れることだけが先行したとき、教職員間の軋轢を生むことは容易に想像できます。
ゆるやかな広がり
粘り強い取組を進めた学校では、SWPBSが少しずつ浸透していきます。しかし、十分に理解が進んでいない先生もいるため、SWPBSの良さや子どもたちへの影響を伝え続けることが今後も必要となっています。特に、「教師の関わり方が重要である」という視点を伝え続けたことで、理解が深まり、若手教員が積極的に「今の関わりはよかったね」と声をかけ合うようになるなど、前向きな雰囲気が醸成される例を聴くこともできました。こうした取組は、まさに「大人のPBS」です。教職員同士の関わりを大切にすることが、SWPBSの理念を学校全体に広げる鍵となるのです。
地域の情報活用
地域の教育委員会がPBS推進に積極的である場合には、その説明資料を活用することが、取組の納得感を高めるのに役立つという意見もありました。地域の教育委員会の情報発信がない場合でも、先進的に取り組む地域の資料を参考にすることが重要です。日本国内では、徳島や宮崎のようにSWPBSを自治体レベルで実施する地域もあります。こうした情報の活用は、きっとSWPBSの推進を後押しするでしょう。
まとめ
今回は、SWPBSの推進にあたり、教職員間の賛同を得ることに苦労している先生方の声を取り上げました。そして、先行して実践している先生方の話には、多くの示唆がありました。特に、共通して言えるのは、SWPBSを推進する先生方には「他の先生を支える」という視点が強くあることだったと思います。こうした先生方が活躍する学校では、大人も子どもも前向きな学校生活を送ることができるのではないかと感じました。
今後も、こうした先生方の支えを得ながら、SWPBSの取組がさらに広がり、より多くの学校で前向きな学びの環境が実現することを目指して活動します。次回の座談会報告も、乞うご期待!