学校規模ポジティブ行動支援:国内外に広がるSWPBS
学校全体で取り組むポジティブ行動支援(School-Wide Positive Behavior Support: SWPBS)は、近年、世界中の学校教育に取り入れられるようになっています。今回は、様々な国や地域に合わせてSWPBSが広がる状況と、SWPBSを導入する利点をまとめてまいります。
各国への広がり
SWPBSは、アメリカでの導入が最も早く進みました。その取組は、今や全米の公立学校26,000校に広がっていると言われています。 SWPBSの導入によって、児童生徒が学習に集中しやすい環境に変わり、結果的に学業成績が向上するケースが多く見られています。また、問題行動の予防に重点を置くSWPBSのアプローチにより、校内でのいじめや暴力といった問題行動が減少し、学校の安全性も高まるという報告も挙がっています。さらに、 学校全体でポジティブな行動が促進されることで、子どもたちが学校に安心して通えるようになり、出席率が向上するという知見もあります。
さらに、SWPBSの影響は、児童生徒に留まりません。 教員間での指導が一貫し、問題行動に対する対応が効率的に行われるようになったことで、教職員のストレスの軽減も図られるといいます。これらの成果は、SWPBSが単なる行動支援のツールではなく、学校全体の文化や環境をポジティブに変える包括的なフレームワークであることを示しています。
このような成功事例は、アメリカだけでなく、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、イギリスなど世界中でも報告されています。各国では、それぞれの文化や教育システムに合わせた形でSWPBSが実施され、ポジティブな学習環境の構築に寄与しています。
SWPBSの利点
児童生徒の視点から
SWPBSの導入は、児童生徒の適応を促進します。それは、SWPBSが児童生徒が「何をしたらよいか」を非常に明確に理解できる環境を提供するからです。こうした環境のもとで、子どもたちは自分の行動に自信を持ち、ポジティブな行動を取ることで得られる達成感や認知を積み重ねることができます。加えて、学校全体で一貫したルールが用いられるようになり、子どもたちは安心して行動でき、心理的な安全性も向上します。
教員の視点から
SWPBSの導入は、教員にとっても利点があります。一つは、全教職員が共通のフレームワークに基づいて行動支援を行うことから、教員間での指導が一貫し、児童生徒への対応がブレないようになるということです。加えて、問題行動に対する予防的アプローチを整備するため、教員は問題行動が発生する前に介入できる機会が増えます。対応もシステマチックになるため、教員の負担軽減が図れます。さらに、SWPBSに基づいた研修が充実すれば、教員自身の指導スキル向上、さらに効果的なクラスルームマネジメントも期待できます。
管理職の視点から
SWPBSの導入は、管理職の学校経営にもプラスになるでしょう。それは、管理職が学校全体で統一された行動支援システムを導入することで、学校運営の効率性を高めることができるからです。また、SWPBSはデータを活用した行動支援を推進しているため、管理職はデータに基づいて的確な意思決定を行うことができ、学校全体の成果を高めるための戦略を効果的に実施できるようになります。
日本での広がり
SWPBSの広がりは、日本でも起こりつつあります。2022年時点で、日本の学校でのSWPBSを導入する学校は400校を超えていると言われています。自治体によっては、教育振興基本計画の中でSWPBSの推進をうたったり、事業化によって地域への拡大を図ったりしています。そうした動きが生じているのは、SWPBSの導入によって様々な利点が学校に生まれるという実感が、児童生徒、教員、管理職に伴うからでしょう。私たちは、この広がりをさらに支えるために、リソースの提供や支援を続けていきたいと考えています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?