学校規模ポジティブ行動支援:支援の3層構造と基本的な要素
はじめに
ポジティブ行動支援は、子どものポジティブな行動に着目し、罰によらない方法で子どものよい行動を引き出す環境づくりを目指します。そして、ポジティブ行動支援の取組を学校全体に広げることで、校内の行動問題が減ったり、出席をする子どもが増えたり、学業成績に好影響を及ぼしたりすることが研究によって示されています。こうした研究の成果があるならば、指導や支援に生かしたい、と考える学校や自治体が現れるようにもなってきました。そこで、今回は、学校規模ポジティブ行動支援(School-Wide Positive Behavior Support; 以下、SWPBSとします)の概要をご紹介します。
3層支援構造
SWPBSは、支援を効果的に提供するために3つの層に支援を分けて構成します。
支援は、すべての児童生徒を対象にした普遍的な支援(第一層)、特定のグループに向けたターゲット支援(第二層)、そして、より個別化された集中的な支援(第三層)です。第一層では、すべての子どもたちに対して期待される行動を教え、肯定的な環境を整えます。第二層では、追加的な支援が必要な子どもたちに焦点を当て、グループ活動や特別な指導を提供します。第三層では、個別に高度な支援が必要な子どもたちに対し、支援を要する状況を詳細に分析し、計画的な支援を行います。このように、SWPBSは全校的な取り組みを通じて、すべての子どもたちに適切な支援を提供する仕組みを構築します。
SWPBSの要素
SWPBSを成功させるためには、以下の5つの要素が重要です。
Equity(公平性): SWPBSでは、どの子どもにも適切な支援が「公平かつ公正」に提供されるよう、教育環境の整備に努めます。
Systems(システム): 学校全体で統一された支援体制を構築します。教職員が一丸となって同じ目標に向かい、一貫性のある取り組みを実現するための「仕組み」を整えます。
Data(データ): 子どもたちの行動や学習状況に関する「データ」を定期的に収集・分析し、その結果に基づいて支援方法を改善します。
Practices(実践): 研究に裏付けられた「実践」方法を用いて、子どもたちに期待される行動を教えます。これにより、子どもたちが成功するために必要なスキルや行動を身につけることができます。
Outcomes(成果): 最終的な目標は、すべての児童生徒が学業、行動、社会性の面でポジティブな「成果」を上げることです。SWPBSは、子どもたちの成功をサポートし、その結果として学校全体の環境が向上することを目指しています。
これらの要素が一体となって機能することで、SWPBSは学校全体のポジティブな環境を育み、すべての児童生徒にとってより良い学びの場を提供することができます。
まとめ
SWPBSにおける支援の3層構造は、子ども一人ひとりのニーズに応じた支援を提供するための枠組みです。子どもたちを特定の層に区別し分類する道具ではありません。支援の枠組みを生かし、より多くの子どもたちに必要な支援を行い、すべての児童生徒が学校生活に適応できるようにすることを目指します。また、この取り組みは、教員同士の協力や地域との連携を通じて、学校に関わるすべての人々の生活の質を向上させることにもつながります。SWPBSは、単なる行動管理の枠を超え、学校全体が協力して、子どもたちの成長を支えるための包括的なアプローチとなります。
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