『Four』について
Print House Session という横田大輔さんの ”Matter” という作品を4人のデザイナー,4社の印刷所と篠原紙工でZineを制作して配付したいという企画.また,今回は横田さんとは直接お会いせずに,デザイナーの意図でどのようにも写真を扱って良いという条件.この話を roshin books の斉藤さんから聞いたのが年末でした.日頃のストレスを発散できる企画かも!と引き受けました.その後,Zineだと言っていたのに,750枚ほどの写真が届いてまずおじけづきした.これを24や32ページでどうしたら良いのだろうと… 大変だなと…
[基本姿勢]
まず始点としては横田大輔さんとも面識がなく作品についても詳しくお話しがあったわけでもなかったので,通常の写真集のように素直にコンセプトから設計していくのはむずかしいなと.より,プライベートで主観的な制作物・実験物と捉え,印刷所・製本所のそれぞれの技術的特徴が色濃く出る事にしようと方向付けました.Print House Sessionだし.それとなるべく無茶しないで既存の Zine から逸脱する設計をするということ.
[編集]
途方に暮れながら750枚ほどの写真を「スー」とスクロールして眺めているうちに写真が混ざり合いドロっと視覚混合される感じを受けました.この混じり合う感覚を直接カタチに結びつけられないか.また,基本的に写真は全て抽象的なんですが,なんとなく,カラーで具象・抽象,モノクロで具象・抽象と大きく4つの分類を感じ取り,ここを糸口に編集できるかなと考え,色・フォルム・意味性の展開でリズミカルに写真をセレクトしレイアウトしていった感じです.
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基本的には天地左右で独立した中綴じとなっています.写真は天(上部の綴じ)の見開きで1点づつ展開,地(下部の綴じ)見開きで1点づつと展開されるのですが,
頁をめくっていくとたまに中央でイメージが生成されるという風に少し視線が移動するように編集してます.
[カラー]
カラー・モノクロとの差別化を顕著に出したかったので,カラーインキはカレイドにして彩度を極端に上げてもらいました.モノクロは通常のダブルトーンだと,ストンと収まってしまう感じがしたので,変化を付けてスミ+銀で考えていましたが,抽象的なドロっとした雰囲気がより醸し出せるかなと,試したことのないスミ+金で熊倉さん(山田写真製版所)に提案しました.熊倉さんもこの分解はじめての試みだったようですが,意図した雰囲気以上の印象が出せていると感じます.
[用紙]
全ての用紙を変えようと提案しました.ただ,あんまりコストをかけさせるのもわるいかなと,営業の板倉さん(山田写真製版所)に在庫のなかから数案提案してもらい,その中からセレクトしました.表裏でツヤ・ザラと質の違う用紙も使用しています.
[製本]
ダミーとして制作したのは2案で,蛇腹の変化型の製本と,定着された4辺の綴じで四方に展開させる製本です.ダミーを見せた篠原さんの「できる!」という一言で結果的に後者を選択したわけですが,とても時間がかかってしまったようです… 2案は共にイメージが広がりながら視覚混合されていく感じを定着させたかったのが理由です.今回の4辺の綴じは ”Beyond Here is Nothing” というflotsambooksから購入した写真集も参考にしてます.(これは3辺の綴じを1冊にした写真集.デザインは-SYB-)
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綴じに関しては当初ミシン綴じを希望していましたが,時間の問題もありホチキスになりました.ただし,4辺を明示的に分けたい意図があったので各辺の芯の色を4色にしています.4色は方位の色を基準に東(右)・西(左)・南(地)・北(天)として,東=青(青龍)・西=白(白虎)・南=赤(朱雀)・北=黒(玄武)という風に設計しましたが,篠原紙工に青の芯の在庫がなかったため,右の綴じは銀になっています.
最後に,タイトルは「Matter」の私的な4分類と天地左右を綴じる造本から『Four』としました.こじつけると横田大輔さん・山田写真製版所・篠原紙工・そしてデザイナーのセッションの「Four」でもあります.それと,ページを天地左右1ページづつ入れ子にしようとしてたんですが,現物をみて開きたくなくなるのでやめました.左右のカラーから始まって天地のモノクロに繋がる流れにしました.
一度,見たらもう二度と開きたくないような気もするけど,自分でページをならびかえたり組み直したり(こんなことをする人は希だと思うけど)そんな可能性もある本です.こんなモノもあるのかと楽しんでもらえれば良いです.さらには,この造本をもっと展開して次に繋げてもらえればより嬉しく思います.