篠原紙工での製本作業
Photobook JPの開催がまもなくとなり、これまで各段階をレポートしてきたPint House Sessionの制作も大詰めを迎えています。今日はライブアートブックス × 田中義久さんチーム以外の、3チーム分の製本作業の現場を訪れました。
クライアントと協働して企画から関わり、様々な製本・紙加工に挑戦してきた篠原紙工さん。これまでに小部数のアートブックや変わった形のパンフレットなどを含め幅広く手掛けられています。自然光の入る風通しの良い事務所で、社長の篠原さんが迎えてくださいました。
2階の工場で行われていたのは藤原印刷 × 町口覚さんチームの製本作業。PUR製本という強度のあるのりを使った無線綴じで、ノドまでよく開き耐久性があることが特徴です。
まず紙を断裁し、ページ順に並べて揃え、手差しで機械に入れます。機械の中では背側をカッターで平らに削り、のりをつけて背表紙を圧着しています。紙の種類によってのりのくっつき具合が違うため、通す速さには微調整が必要。のりが乾いたのち、小口側を一辺ずつあえてギザギザに加工。一手間かけることで毛羽立ったような手触りになります。
金箔入りの和紙を使ったサンエムカラー × 町口景さんチームは和綴じを採用。機械で穴をあけた後は一冊一冊糸を通していく、とても根気のいる作業です。
工場内では新旧様々な機械がリズムを刻みながら稼働していました。
こちらは紙が折られていく仕組みをわかりやすく見ることができる、ハイデルベルク社製のデモ機。ハンドルを回すと紙がするするとローラーに巻き込まれ、見る見るうちにZ折りになっていきます。羽根の枚数や返しの位置を変えることで折り方が変わります。写真のものはデモ用で羽根が2枚のシンプルな状態ですが、実際使っている機械には12枚あるものもあり、さらに機械同士を組み合わせることで折りのバリエーションがより増えるのだそうです。職人が知識を元に工夫して機械をカスタマイズすることで、一見規格外のようなデザインでも量産が可能になることがあります。
事務所にはすでに製本された山田写真製版所 × 加藤勝也さんチームの冊子がありました。デザイナーの加藤さん自らページを折り畳んでいきます。当初はモノクロとカラーのページが入れ子になるように折り畳む予定でしたが、現物を見て変更。
今回は四方向に展開する特殊な造りで、しかも判型や紙の種類もすべてが同じわけではないため、手作業の工程が多くなり、製本には普通の造本の場合の30倍くらい時間がかかったとのことでした。四辺をとめるのは初めてだったそうですが、こういった前例のないオーダーに対してもどうやったら実現できるのか親身になって考え、柔軟に対応してくださいます。
ホチキスの色は辺ごとに違います。東西南北に対応するイメージカラーを意識した、細かいこだわり。
28日からのイベントに向けて、それぞれの冊子の最終形が見えてきました。同じシリーズの写真に対してアウトプットのアプローチは四チーム四様、かなり違ったものとなりましたが、いずれもデザイン・印刷・製本のどれをとっても妥協なく、第一線で活躍する皆さんの技術が活かされていて、無料とは言い難いクオリティに仕上がっているのではないかと思います。どの日にどの冊子が配布されるかは明かされませんが、お楽しみに。
(写真・文 / 清水はるみ)