【投資ノウハウ】東証市場再編とは? 企業や株価への影響は?
投資にあまり詳しくない方でも、「東証一部」や「TOPIX(東証株価指数)」という言葉は、ニュースなどで耳にしたことがあるのではないでしょうか。
今年4月4日、東京証券取引所(以降、東証)の市場再編に伴い、「東証一部」という言葉はなくなり、「TOPIX」は算出ルールが段階的に変わります。東証の市場再編は、東証二部が誕生した1961年以来、61年ぶりのことです。
今回は、あと3カ月をきった東証の市場再編、特にプライム市場についてみていきましょう。
東証市場見直しの背景
今回、市場区分を再編する背景には、大きく3つの理由があると考えられます。
1つ目の理由は、現在の4つの市場区分が曖昧であることです。「ジャスダック」と「東証マザーズ」はコンセプトが重複しています。
2つ目は、TOPIXに絡む問題です。
TOPIXは東証一部の全ての銘柄を対象にします。このため、TOPIX連動のインデックス投信は、東証一部の全ての銘柄を自動的に購入します。この際、売買高が少なく流動性の低い銘柄も、東証一部に上場しているというだけで購入されてしまうので、実態にそぐわない株価がついてしまうことがあります。
そして、3つ目は、上場廃止基準が緩いため、上場を維持するための企業価値向上の意欲が不十分な企業もあることです。現在は、業績が低迷している企業や、時価総額の小さい企業が散見されます。このため日本の株式市場は国際競争力が低いと言われており、テコ入れを行うのが今回の市場再編の目的です。
市場区分の見直し
現在、東証は「東証一部」「東証二部」「ジャスダック」「東証マザーズ」という4つの市場に分かれています。一般的に、新興企業や成長企業は、まず「ジャスダック」もしくは「東証マザーズ」に上場し、企業規模が大きくなるにつれて、「東証二部」、「東証一部」へと市場替えを行っていくケースが多いです。
この4市場を「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに再編します。東証が1月11日に発表したところによると、プライム市場に1841社、スタンダード市場に1477社、グロース市場に459社、上場する予定になっています。
各市場の上場維持基準は以下の表の通りです。
プライム市場とは
プライム市場は、今回の市場再編で東証が設置する最上位の市場です。上場基準は、現在の東証一部より厳しくなっています。特に、市場で流通する株式比率が35%以上、そして、流通株ベースの時価総額が100億円以上というのは、現在の東証一部上場廃止条件の流通株式比率5%未満、流通株ベースの時価総額5億円未満と比べると、各段に厳しくなります。
また、コーポレートガバナンス面でも、スタンダード市場、グロース市場は独立社外取締役2名を置くことが上場要件なのに対し、プライム市場は独立社外取締役が取締役の3分の1と高い水準を求めています。これらは、海外投資家からの資金流入を狙った措置でしょう。
プライム市場の実情は
現在、東証一部には2185社上場していますが、約8割にあたる1841社がプライム市場に移行します。しかし、このうち296社はプライムの上場基準を満たしておらず、「上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出し、経過措置の適用を受けながらプライムに上場する予定となっています。
4月4日の再編以降の予定ですが、今年10月末に流通時価総額が100億円を満たしているか再度査定されます。この時、100億円に達していない企業は、2023年10月末の再査定までに改善を図り、それでも未達なら、2025年1月にプライム市場から退場となります。
プライム市場から退場となれば、インデックス投信などから外れるため、株価にとっては大きなダメージとなるでしょう。このため、企業は是が非でもプライム市場の上場要件を維持することになりそうです。そのことが、企業の成長や国際化を促すことにつながれば、日本の株式市場もかつての賑わいを取り戻す可能性がありそうです。
記事作成:2022年1月26日
佐藤隆司(ライタープロフィール)
佐藤 隆司(さとう りゅうじ)
米大卒業後、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(のちの株式会社オーバルネクスト)入社。原油、貴金属、天然ゴムなど工業品を中心としたアナリスト活動を経て、金融市場全般の分析を担当。
2010年、エイチスクエア株式会社を設立し、セミナー講師、アナリストリポートを執筆する。また、「FOREX NOTE 為替手帳」、「チャートの鬼・改」などの企画・出版も行う傍ら、ラジオ日経「ザ・マネー」の月曜キャスターも務める。
資格
「国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト」
メディア情報
・ザ・マネー 月曜日キャスター
・「夜トレ」(ラジオ日経)、「昼エキスプレス」(日経CNBC)など出演
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