【投資ノウハウ】2022年アメリカ株はどうなる? 相場展望
今年も残すところあとわずかになりました。このコラムも、今回が今年最後になります。
今年の相場を振り返りながら、来年の米株相場について考えてみたいと思います。
超緩和政策から緩和縮小へ
2021年の相場を語るうえで避けて通れないのが、2020年、突如、全世界を襲った新型コロナウイルスです。1918年から1920年にかけて全世界で流行したスペイン風邪以来の、ウイルス禍(通称:コロナ禍)です。コロナ禍により、景気が後退するなか、各国、地域の政府は大規模な財政出動を実施、中央銀行は空前の金融緩和措置を取りました。これにより景気は回復、株価は予想を超える歴史的な上昇をみせます。2020年、米国の代表的な株価指数S&P500の上昇率は約15.3%、ハイテク株が中心のナスダック総合株価指数に至っては約42.5%もの上昇となりました。2021年に入っても株価上昇は衰えず、12月20日時点の上昇率は、S&P500が約23.4%、ナスダック総合株価指数は約15.6%となっています。
しかし、この株価の急上昇をもたらした大規模な財政出動と超緩和政策は、同時に物価の上昇、インフレをもたらしました。米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和の縮小(テーパリング)の開始を決定、12月のFOMCでは、2022年中に3回の利上げが実施される見通しが示されています。いよいよ来年は金融緩和の縮小が本格化します。このため2022年の米国株式相場は、2020年、2021年のように相場全体が押し上げられるのではなく、時代のテーマに合った銘柄群が買い進まれることになりそうです。
DX関連銘柄
2022年も引き続き注目を集めそうなのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連銘柄です。今年11月下旬から新型コロナウイルスの変異株オミクロン株が猛威を振るっており、クラウド・ベースのITインフラストラクチャへの移行は継続して行われるでしょう。また、コロナ禍がもたらした賃金上昇やサプライチェーンの混乱のソリューションとしても、DXの加速が進みそうです。すでにDX関連銘柄は人気銘柄となっていますが、5Gが広がる中、今後、数年単位での成長も期待できそうです。
今後もリモートワークやDX化に伴い、重要視されるのがセキュリティ関連です。クラウドストライク・ホールディングス(CRWD)やそのライバル企業であるゼットスケーラー(ZS)が、引き続き注目されそうです。また、クラウドを通じてユーザーの認証サービスを提供するオクタ(OKTA)やクラウド上で電子署名から契約書などのビジネス・ドキュサインを管理するドキュサイン(DOCU)なども面白そうです。
実は、これらの銘柄は、コロナ禍がピークアウトしたとの見方から、直近の高値から下放れています。ただ、先日、ファイザー製薬がパンデミックは2024年まで続くと声明を出したように、残念なことにコロナ禍が長期化した場合や、企業がそのような事態に備えることが予想できることから、来年は再び評価される可能性が高そうです。
ニューノーマル
また、コロナ禍に進んだニューノーマルな生活も引き続き注目されるでしょう。コロナ禍で、その利便性が示されたネットショッピング、アマゾン・ドットコム(AMZN)、ショッピファイ(SHOP)などは再び注目される場面もありそうです。
ただ、すでに多くの国がウィズ・コロナの方針を取っていることから、外出規制がほぼなくなると考えると、フードデリバリーサービスなどが再度、脚光を集めるよりは、メタバースのような新しい価値観を創出できる事業やそれらに付随するサービスが脚光を集めそうです。このあたりは、DX関連とも絡みますが、ネットショッピングやテレワークを支える企業として、半導体関連では、エヌビディア(NVDA)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、インテル(INTC)、クラウドサーバーでは、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン・ドットコム、アルファベット(GOOGL)、通信サービスでは、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)、AT&T(T)などを引き続き見ていきたいです。
通信サービスを除けば、ハイテク株ですでに株価が高値にあるものもありますが、今後、社会インフラになっていくと考えると、急落場面などがあれば、買い拾ってもいいと考えます。
2022年は、前記したように金融引き締めが本格化しそうです。相場は荒れやすくなるので、長期的な視点で狙いを定めて取引することが重要になってきそうです。
記事作成:2021年12月22日
ライタープロフィール
佐藤 隆司(さとう りゅうじ)
米大卒業後、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(のちの株式会社オーバルネクスト)入社。原油、貴金属、天然ゴムなど工業品を中心としたアナリスト活動を経て、金融市場全般の分析を担当。
2010年、エイチスクエア株式会社を設立し、セミナー講師、アナリストリポートを執筆する。また、「FOREX NOTE 為替手帳」、「チャートの鬼・改」などの企画・出版も行う傍ら、ラジオ日経「ザ・マネー」の月曜キャスターも務める。
資格
「国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト」
メディア情報
・ザ・マネー 月曜日キャスター
・「夜トレ」(ラジオ日経)、「昼エキスプレス」(日経CNBC)など出演
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