【投資ノウハウ】格言を深掘り検証!今年はSell in May?
5月も中旬に入ってきました。
以前、ご紹介しましたが、この時期の米国株投資の有名な格言に「Sell in May, and go away. Don’t come back until St Leger day.」があります。簡単に訳せば、「5月中に株は売り払い、そのまま相場から離れなさい。セント・レジャー・デイ(9月の第2土曜日)まで相場に戻ってこないように!」となります。
実は、昨年このnoteでこの格言を検証した際、格言通りの結果にはなりませんでした。
今回は、一年たったいま、この格言を少し深堀りして再検証を行ってみたいと思います。
4月と9月の特性
まず、下の表1をご覧ください。この表はS&P500の1972年~2021年までの50年間の月別陽線確率と平均騰落率です。
月別陽線確率とは、月初より月末の株価が高い確率です。騰落率は、月初から月末の間で何パーセント上昇したのかを示し、ここでは過去50年間の平均を出しています。
この表をみますと、陽線確率では、4月と12月が70%を超える高い確率で株価が上昇しやすいことがわかります。その一方で、9月は、一年のうちで唯一、陽線確率が50%を下回る月となっています。月初に買って、月末で売るとマイナスになる確率が56%(100%-44%)です。
騰落率をみると、過去50年間の平均で一番騰落率が高いのが4月、そして、唯一のマイナスが9月です。
株式投資の基本は「安く買って、高く売る」です。4月に株価が大きく上昇しやすいなら、「5月中に株は売り払い」が意味する5月の利益確定売りは、合理的な行動と言えるでしょう。
後半部分の、「セント・レジャー・デイ(9月の第2土曜日)まで相場に戻ってこないように!」と言うのは、言い方を変えれば、「9月第3週あたりには相場に戻ってこい」ということになります。株価が一番下落しやすい9月に相場に戻ってきて買いを仕込むというのも、「安く買う」という点から、正しい行動と言えそうです。
ちなみに、なぜ、4月の騰落率が高く、9月がマイナスなのか、理論的な根拠があるわけではありません。このように理論的な根拠はないが、経験的によく当たるものをアノマリーと言います。
5月に買っても陽線確率は高かった
以前、このnoteで、この格言を過去50年のS&P500のデータを元に検証した結果、下落傾向の強い9月の翌月10月の始値で買って、翌年の4月末に売却すると、陽線確率は74%を超え、この期間の平均騰落率は8%弱になることがわかりました。格言通りです。
一方、「5月に売って、9月まで相場に戻ってくるな」について、夏相場はそんなにダメなのか検証してみましょう。
同じように過去50年のS&P500のデータを元に、S&P500を5月の始値で買って9月の終値で売ってみると、陽線確率が68%、騰落率が1.13となりました。5月に買って、9月に売ってもプラスで終われる可能性が高いことがわかりました。格言通りではなかったということになります。これは、米国株が長期的にみて上昇を続けているためでしょう。詳細については、こちらの記事をご覧ください。
関連リンク:【投資ノウハウ】格言検証!Sell in Mayは本当!?
4月に陰線が付いてしまうと...
ただ、今年は少し風向きが違う可能性がありそうです。
今年、米国は40年ぶりの高いインフレ率に見舞われ、米連邦準備制度理事会(FRB)は積極的な利上げに舵を切りました。その影響もあり、年間でもっとも陽線確率が高い4月に陰線を付けています。4月に陰線を付けたのは、1972年~2021年の50年間で14回のみです。その14回のうち6回は、年間の騰落率がマイナスとなっています(表2参照)。
4月の騰落率が-2.3%以上の年に限ってみれば、7回中6回の年間騰落率がマイナスとなっています。特に今年は4月の騰落率が過去50年で最大となる-9.15%ですので、注意が必要となりそうです。
利上げ局面は要注意
また、表2をみると、1973年と1974年の下落率の大きさが目を引きます。この背景には、FRBの利上げがありました。当時、FRBはインフレ高進を受けて、1972年3月31日から1974年4月25日までの間に政策金利を4.00%から11.00%まで7.00%も引き上げています。
1981年も同様であり、FRBは、1980年10月21日から1981年5月18日の間に政策金利を11.00%から19.00%まで引き上げました。2000年も同じく、1999年6月30日から2000年5月16日の間に4.75%から6.50%まで政策金利が引き上げられています。
なお、2002年は、前年に起きた同時多発テロによる影響が大きかったとみられます。
株は安く買え
このように利上げが株価に与えるネガティブな影響は大きいようです。ただ、利上げにより、株価が冷やされるということは、逆に考えれば、絶好の買い場になる可能性があるということです。
表3は、上記した4月が陰線引けとなった年の10月の始値で買って4月の終値で売った時の結果です。
この表から陽線確率を求めると64%、騰落率は6.52%となります。過去50年の平均陽線確率の74%、騰落率7.89%には劣りますが、まずまずの数値です。利上げの間、米国株が下落する傾向はありますが、大きな流れとして米国株は上昇が続いていることから、このような結果になるのでしょう。
今回の急速な利上げ局面で、米国株がどの程度下落するのかは、わかりません。ただ、「相場は山あり谷あり」、そして米国株は、長期の上昇傾向が続いていることを考えると、大きく水準を引き下げたところは、買い場と考えてもよさそうです。
記事作成:2022年5月10日
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ライター:佐藤 隆司(プロフィールはこちら)
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