【投資ノウハウ】年度末の金融相場の特徴 仕込みは中旬までが有利?
今年もあっという間に3月です。日本では、多くの企業が年度末の決算を迎える月です。このため、3月は他の月に比べ、決算に絡んだ特徴が出やすい月となります。
今回は、年度末の金融相場にどのような特徴があるのか、また、株式投資という視点では、どのように考えていくべきかをみていきましょう。
持ち合い解消
3月の株式相場では、「持ち合い解消」売りという言葉をよく耳にします。「持ち合い」とは、友好関係にある企業同士がお互いの株式を投資ではなく、保有を目的として持ち合っている状態です。
友好関係にある企業同士とは、例えば、お金の貸し手の銀行と借り手の企業、親会社と子会社、小売り業でしたら販売業者と仕入先などです。
「持ち合い」は、もともと第二次世界大戦後、GHQにより解体された財閥が、その結束を保つために始まったと言われます。
「持ち合い」には、主に3つのメリットがあります。経営の安定、企業間の結束力の向上、そして敵対的買収の阻止です。
その一方、デメリットは、バブル崩壊時のように株価が暴落した場合に弱いことです。「持ち合い」で持っている株式の暴落により、資産が大幅に減少し、経営が急激に悪化します。また、そもそも自社の事業に充てる資金を、「持ち合い」のために株式購入に充てているので、資本効率が低下します。そして、ガバナンスという面では、「持ち合い」により、一般の株主の意見が経営に反映しにくくなります。資本有効活用や企業の透明性が求められる中、今後も持ち合いを解消する動きは続きそうです。
ドレッシング買い
「ヘッジファンドの換金売り(※)」のように、機関投資家やファンドの運用機関の事情を映したものに、「ドレッシング買い」というものがあります。「ドレッシング買い」は「お化粧買い」とも呼ばれます。運用会社が、月末や四半期末に、運用しているファンドの評価をよくみせるために、運用対象として株式などを買うことです。ただ、こちらも「ヘッジファンドの換金売り」と同様に、実体がつかみにくいのが実情です。ただ、後述しますが、3月末に日経平均株価が上昇する傾向はあります。
レパトリエーション
もう一つ、年度末の特有の動きとして挙げられるのが、レパトリエーションです。通称、レパトリです。
「レパトリエーション(Repatriation)」とはもともと「本国へ帰還する」という意味ですが、これが金融の世界では、「海外にある資金を自国内に戻す」という意味で使われます。
日本でレパトリが2~3月に起こりやすいのは、金融機関や機関投資家が、決算に向けて、海外で運用している外貨建て資産を売却し、円に戻す動き(円転)が強まるためです。これにより、ドル売り/円買いの注文が増え、ドル円相場は一時的に円高に振れやすくなります。円高は、一般的には株価の弱材料とされるので、日本株は軟化傾向となると言われています。
下のグラフは、2001年から2021年までのドル円の3月の月初からの値動きを平均化した騰落率平均の推移です。なお、青い線は、特殊要因である東日本大震災があった2011年と新型コロナウイルスのパンデミックが起きた2020年を除いたものです。
これをみると、月初から月央に向けて、狭いレンジでもみ合いとなりますが、その後、月末に向けては、円安傾向が強まるようです。これは月央までに、レパトリによる円買い需要が終わり、その後は円売りが強まることを示しているようです。
一方、同じ時期、2001年3月の日経平均株価の騰落率の推移をみると、こちらも月初から月央までは、もみ合いとなりますが、月末に向けては堅調に推移する傾向があることがわかります。また、3月の最終取引日の4営業日前に向けて株価が上昇し、その後、失速するのは、配当金や株主優待の権利を得ることができる権利付き最終取引日に向けて買いが入っていたためでしょう。
なお、2019年7月から、株式の受け渡し期間が、4日から3日に短縮されています。3月決算の場合、今年は3月29日が権利付き最終取引日となります。
仕込みは中旬までか
持ち合い解消売りにしても、レパトリにしても、それぞれの期限の直前に大量に行うことはありません。株価、為替への影響を考慮して、2月中旬くらいから、粛々と進め、3月の平均騰落率の推移の表が示すように、3月中旬までには、それらの取引はほぼ完了するようです。そして、権利付き最終取引日に向けて上昇する。この値動きのクセを利用して取引を行うなら、3月中旬までに買いを仕込み、権利付き最終取引日に売り抜けるのも面白そうです。
記事作成:2022年3月7日
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ライター:佐藤 隆司(プロフィールはこちら)
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