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あいつ狂ってる

11月1日と2日、いわきフェルマータでパクチーハウスをした。内房で2拠点生活を始めた友人が、千葉市と金谷で2拠点生活をする友人を紹介してくれ、彼が入手した僕の本が、彼の兄に渡った。ウルトラシャルソン以来7年間訪れていなかったいわきに行くチャンスはこうしてできた。

集客その他、不安な要素はたくさんあったし、店にある設備も前日まで全く分からなかったのだが、これまでいろいろな場所でやっているので、どんな状況になっても対応できると思い、なりゆきに任せた。

この人は恐ろしいことに、このイベントがたとえうまくいかなくても、別に俺のせいじゃないし、そりゃ主催者側とそこに集まった人でなんとかすりゃあいいんじゃん、っというオーラでいっぱいである

https://note.com/iwaki_fermata/n/n02d0f6e9a91c

その「なりゆき任せ」はフェルマータ店主の薫からはこのように見えたらしい。小人の僕としては3連休に鋸南を離れある程度自動的に売上が生まれる稀有な日々を捨てることに抵抗がなかったわけではない。しかし、「こいつと会いたい」「じゃあいつやるんだ」とぐいぐい攻めて来た薫とイベントをやると決めたら、どんな状況になろうと1ミリも動揺することはない。どうせうまくいくんだから。

僕にとって「成功の定義」は多様である。人がたくさん集まったら楽しいし、集客がうまくいかなかったとしても密度を高めることができる。その日の売上は集まった人の数に比例するから近視眼的には人が集まれば集まるほどいいということになるが、続かなければ何の意味もない。

企業や青年会議所など、集客数を重視する主体がシャルソンをやると、その場は盛り上がっているように見える。でも、日常を逸脱することがほとんどないので参加者のコミュニケーションは希薄だし、イベント自体も継続しない。大いに盛り上がったように見えるイベントの終盤で、「次はないな」と密かにため息をついたことが何度もある。

パクチーハウス東京を特徴づけるために、僕が一番力を入れたのは「パクチーをてんこもりにすること」ではない。「誰もが参加できるパーティ営業というスタイルを確立すること」だった。1人で来てもたくさんの知り合いができ、僕やスタッフがゲストといつもより長く話をすることができることを目指して。

2009年の正月、最初の営業日に僕はスタッフに宣言した。今年は最低月に3回のパーティ営業をするぞ、と。正直、企画するのも大変だった。人を集めるのはもっと大変だった。店の知名度は上がってきており、予約もそれなりに入る状況だったが、「パーティ営業」の日は店全体を使った立食パーティであるため、席の予約は取れない。「パーティ営業」の趣旨を理解してもらった上で来てもらうのは、それなりに大変だった。

最終的なゲスト数が10人に満たなかったことがあった。閉店記念パーティには89人が入ったそれなりに広い空間である。集客できなかった自分を恥じ、来客数より予約を断った数の方が遥かに多いことを知っているスタッフの視線が痛すぎて、挫けそうになった。「意味あるんですか」と言われたこともあった。でも僕は、食事を食べるだけの場所にはしたくなかったし、食事の対価として支払う額よりも遥かに多くの価値(友情や世界とつながる知恵、勇気など)を返すためにはこのスタイルが必須だと確信していた。

「今日はいつもよりゆっくり食べられて、こういう日もいいね」
「恭さんやスタッフの考え方が知れて有意義でした」
次につながるこのようなコメントを残したゲストたちは、パクチーハウス東京の強烈なサポーターとなった。パーティ営業しか来ないと言う方もいたし、自分達の大切な友人を連れてきてくれた。パーティ営業でつながって一緒に起業したり、誰かの話をヒントに転職をするなど、人生の決断をした例もたくさんある。

「パーティするように仕事する」というフレーズと共に始めたコワーキングは、「パーティ営業」による大きな副産物だった。目の前の数人に語りかけることが、時を経て数万人の心を動かすことにつながる。

今回のパクチーハウスいわきにおいて、準備を始めた初日の夕方に、突然リハーサルが始まった。ミュージックバーなので何らかの演奏があることはここでの日常なのだろうが、事前にライブをしようとかそういう話が決まっていたわけではなかった。

「パクチーのうた」の楽譜を見ながら、ピアノ・ベース・バイオリンで音合わせが始まった。即興でアレンジをして、この日のスタイルを築きあげていく。僕は、パクチー料理の準備をしながら、いわきに来て本当によかったと思った。1回目のパーティが始まる直前、僕もボーカルとしてリハーサルに加わった。

イベントの途中と食後、毎回ライブをすることになった。2日間で3回のパーティをし、8〜9回パクチーのうたを熱唱した。

珍しい料理を食べるだけでなく、乾杯の発声に加わったり、「パクチー食べたい」「パクチー山盛りで」とパクチーのうたに合いの手を入れたり。いつものパクチーハウスとは全く違うスタイルであったが、フェルマータならではの時間が作れ、主催側もゲストも大いに満足した。終わった瞬間から「次」に期待が始まる、とてもよいパーティだった。


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paxi
パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。