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「光る君へ」1話の色彩と心理解説

2024年の大河ドラマ「光る君へ」が始まりました。世界最古の長編小説『源氏物語』を創作した紫式部の人生を描く物語です。大河ドラマですが戦のシーンはなく、そのかわりに陰謀、愛欲、友情、家族愛が豊かな色彩の中で描かれる異色の作品です。ポーポーの色彩研究会では、色と心理の勉強としながら、この物語をより楽しんでいただけるように、時代背景をからめつつ解説していきたいと思います。ストーリーを追って解説をしていきますので、まだご覧になっていない方はネタバレにご注意ください。毎週できるかわかりませんが、色彩と心理のポイントは解説したいと思います。

冒頭、陰陽師の安倍晴明の不吉な予言から物語が始まります。「せいめい」いう名前が有名ですが、これは音読みであり、ドラマでは訓読みである「はるあきら」が採用されています。この時代、陰陽師は学術と占いの両面から問題を解決するアドバイザー、道先案内人のような立場でした。平安時代は怨念や陰謀などが渦巻いており、怨霊やモノノケの影響で人は体調を崩すと考えられており、貴族たちの闇側には陰陽師の姿がありました。安倍晴明のユースケ・サンタマリアさんのメイクが怪しく怖い顔に作られているところから、この物語はダークサイドの性質を持つことが印象付けられます。

1話には主演の吉高由里子さんは登場せず、幼少期、8歳になる紫式部が登場します。劇中では「まひろ」という名前で呼ばれます。ナレーションがが丁寧に入り、キャラクターの説明や時代背景を説明してくれます。

続いて大納言・藤原兼家。屋敷の大きさ、衣装の色彩の多さ、食事の立派さで上級貴族ぶりが描かれます。大納言とは左大臣・右大臣に次ぐ役職で、大臣と共に国政を担っている存在です。そして兼家はこの後、右大臣に出世します。右大臣は「副総理」ぐらいでしょうか。なかなか偉い人です。藤原兼家の一家、父親、長男、イラつく次男、野心が溢れる家族のバラバラな感じが見て取れます。

まひろの父である為時は、下級貴族で苦しい生活が屋敷が傷み、質素な食事で兼家との生活ぶりが対比されます。貴族の食事は意外と質素で、朝の10時と16時ごろに2回出されていたといいます。電気もない生活なので、日が暮れてから夜は早かったと思われます。

まひろの父、為時と藤原兼家の衣装の色から見る階級の違いはこちら↓にまとめています。衣装の違い、その色彩からも階級の差が強く出ます。

為時は仕事がなく子どもたちと過ごす時間が多い中で、中国の歴史書「史記」をまひろに読み聞かせをします。伝説上の黄帝から武帝の話を聞き、壮大な大陸に思いを馳せ、まひろの好奇心は、こうして育まれていきます。

正月から季節は春を迎えましたが、貴族たちの衣装は変わりません。実際には季節によって男性も女性も多彩な色の変化を見せていたと思われます。十二単の色の重なりである「襲」は、季節によって表現されます。このドラマ、ここがちょっと惜しいです。

帝(天皇)の后妃になる言葉として「じゅだい」という言葉が何度も出てきますが、これは天皇の住居としての御殿である内裏(だいり)へ入ることで、「入内」と書いて「じゅだい」と読みます。自分の娘が入内して、帝からご寵愛をいただければ、家も本人も安泰になります。娘を帝の后として差し上げ、帝との間に皇子誕生を実現することが、上流貴族の幸せの形だったのです。

では主人公、まひろの衣装を見てみましょう。まひろ桃色の簡素な着物です。植物で染めたややくすんだ桃色で、柄は白い「蝶」のように見えます。『万葉集』にも蝶が出てきますし、紫式部が書いた『源氏物語』にも出てきます。揚羽蝶(アゲハチョウ)は平氏の家紋になっており、不死再生を象徴する縁起物。健やかに育つまひろを願っていた親心が垣間見えます。


一方、藤原兼家の三男である三郎(藤原道長)は発色が良い透明感のある澄んだ水色の狩衣を着ており、下級貴族としてのまひろと上級貴族の三郎とのコントラストが強く印象付けられます。澄んだ水色は、澄んでまっすぐな三郎の性格を投影しているように思えます。視聴者はこのあたりの性格イメージを色からも無意識に刷り込まれるのです。

逃げた鳥を追ってまひろは、川辺で三郎と出逢います。漢文の話になり知らなかった三郎は恥ずかしくなって、「貴族の子ではない」と思わず嘘をついてしまいます。逆にまひろも天皇の血を引くと思わず嘘をついてしまいます。博学なまひろに魅了される三郎ですが、約束したお菓子を落として無くしてしまいます。

まひろはお菓子を落とした三郎を責めているうちに、自分のことが恥ずかしくなり、天皇の血を引くことが嘘であると本当のことを言ってしまいます。このあたりでもまひろの芯の強さ、そして何やら小さな孤独感が垣間見えます。今の生活になんとなく不満と不協和を感じているように見えるまひろ。子役の役者さんはとても上手に表現します。

全体的にこの時代にはあまり見かけない緑の色を印象的に使っていました。次回はこの緑の話と効果も少し説明したいと考えています。

紫式部は日記をつけていて、それも残っているのですが、母親のことを語るところがありません。幼くして記憶のないうちに亡くなっていると考えられますが、ドラマでは母との衝撃的な別れが描かれます。

紫式部は博識で客観的な視点を持つ女性です。この時代、父親の言うことは絶対だと思います。ところが納得のいかないことを納得がいかないと訴え、その性格が次第に見えてくる感じがします。

空色のような青と出逢い、惹かれ合うふたり。豊かな色彩の世界の中で、紫は切なく、そして眩しい輝きを見せていきます。

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