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「光る君へ」に見る『源氏物語』に続く美しい色彩の世界
紫式部と藤原道長を描く大河ドラマ「光る君へ」が終わりました。素晴らしい作品でしたが、色彩の視点でドラマを見るとその素晴らしさがより際立ち眩く光ります。見どころも多く、話をしたいところが山のようにあるドラマです。たとえば主人公まひろの衣装、彼女の衣装は「紫」というテーマがありますが、それも紫を全面に出すのではなく、襲の中に取り入れたりして、奥ゆかしく、でも何かを言わんとする強さを感じる衣装になっていると思います。紫の持つ二面性、揺らぎ不安定になる心の演出にもうまく通じていたと思います。
たとえば他にも注目していただきたい服があります。まひろの唐衣(一番外に着ている服)に黄色がありました。この黄色は山吹ではないかと思うのです。上級の貴族たちは高価な赤(紅)を使い、その雅やかさを競います。一方、まひろは貴族であっても、下級貴族、そんな高価な服を数多く着ることができません。貴族の象徴ほど赤は深く濃く、一方で下級になるほど赤は薄く、紅よりも茜や他の色になっていきます。この時代の赤は特別でした。まひろは姫でありながら、山吹など他の色を着るしかありませんでした。
そして紫式部が書いた『源氏物語』の「若紫」には、のちに光源氏が生涯をかけて愛する女性、紫の上、当時まだ十歳の少女が光源氏の前に現れます。この少女は山吹の襲を着ているのです。
山桜が散った四月の北山、桜が霞みゆく中で、ひときわ金色に輝く少女。光源氏はそこに最愛の女性の影を見て、この少女のことが頭から離れなくなります。
ドラマにおけるまひろは道長と自分の関係を、紫の上と光源氏に重ねたのではないかと思うのです。山吹の色が繋ぐ思い。なんという神脚本、神設定。
本当に素晴らしいと思う脚本や伏線が散りばめられている作品です。
到底語り尽くせませんが
2024年12月29日(日)には
「光る君へ」平安の色彩の世界と衣装の世界と題してオンラインセミナーを開催しました。よろしければこちらもご覧ください。
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