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「魅惑の心理」マガジンvol.25(若い世代に生まれる『新承認欲求』)

承認欲求は最近のトレンドのひとつです。承認欲求は誰にでもある「欲求」で、 SNSの普及と共に増加しています。自分の日常をみんなに見てもらい評価をしてもらいたいと思っています。SNSの通知をつい楽しみにしてしまい、「いいね」が増えるととても嬉しい気持ちになります。

何を「承認」してもらいたいかは人それそれです。自分の充実した生活だったり、自分の頑張りだったり、自分の所属だったりします。ところがこの承認の「認められたい」と思う感情に、最近、変化が見られるようになってきました。今までは自分は努力して頑張ってきたから、その「頑張り」を認めてもらいたいという人が多かったのです。何かの努力の対価、報酬として「よく頑張ったね」と言ってもらいという気持ちになるのです。ところが最近はそうではありません。私は頑張りません。頑張りませんが、私の「存在」をただ認めて欲しい。そう思う人が若い世代に増えてきたのです。これはどんな現象で、いったい何があるのか、そのメカニズムについて少し詳しく見ていこうと思います。

ある企業で専門職として勤めている Aさん(女性)は最近の新人の変化に微妙に気づいていました。 Aさんはキャリア15年以上のベテランで、最近は新人教育の仕事が増えてきました。最近の新人は注意すると「教わっていません。教わっていないからできません」と言います。最初は職業に対する意識の低下が見られると思っていました。そうした新人をたくさん見るようになってきたある日、ある新人の一言に衝撃を受けました。いつものように知らないもの、わからないものを勉強してくるように注意をすると「私は努力しません。努力はしなくても、ずっと認められてきましたから」という意見でした。

 Aさんは驚きました。職業意識がここまで低下したかと憂いました。そしてそういうことを恥ずかしげもなく言ってしまう新人の態度に驚かされたのです。単なる甘えで育ってきて就職をしてしまった人と思ったようですが、同じような感覚を持った新人が次から次へとやってくるようになり、これは「個」の問題でなく、世代の変化だと感じるようになったのです。新人の中にある感情は、知らないものに対する焦りや勉強をしたいという意欲ではなく、ひたすら強い「認めてもらいたい」という感情と、その欲求を満たすべく努力をしないという開き直りでした。


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