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「魅惑の心理」マガジンvol.84(失敗の心理学)

私たちは何しろ間違う。仕事上のミスは機械のトラブルよりも圧倒的に人為的ミスです。医者の誤診はけして珍しいものではありません。

「私の誤診率は14.2%である」神経内科の権威で東大名誉教授の冲中重雄氏は、東大を退官する際の最終講義でこう述べました。日本最高峰の権威ですら1割以上は間違えると自覚しているです。フランスの医師らがICU(集中治療室)で死亡した人々の剖検結果についての論文を掲載には、生前診断の約30%は誤診だったことが示されていました。さらに交通事故の約90%は人為的ミスと言われています。労働災害も約90%は人為的ミスです。人は間違えるものです。こうして書いている原稿、メール、ラインも誤字脱字であふれています。文字などは毎日書いているはずなのに、あまり制度が上がらない。人は何しろ間違う。なんでこんなことが起きるのでしょう。

人がミスをする理由は色々と研究されています。今回の「魅惑の心理」マガジンでは、人はなぜミスをするのかという原始的な問題を取り上げ、その傾向と対策を解説していきたいと思います。

○人の情報処理過程

まず私たちがミスをする理由を知るために、私たちの情報処理の過程を知りましょう。脳内でおこなわる情報処理は基本的には「情報」→「認知」→「判断」→「行動」の順でおこなわれます。主に目から受け取った情報は脳で認知されます。その情報が何かを認知するときに、私たちは記憶の影響を強く受けることがわかっています。「あれは猫だ」「あれは車だ」と認知する場合は、過去の記憶と参照しています。猫の場合は可愛くて安全と判断し、近寄って手を差し伸べるという行動をします。車の場合は危ない、危険と判断し、避けよう、離れようと行動します。

人がミスをする場合、様々な部分でミスをする可能性があります。まず最初に「認知」のミスです。私たちは主に目から情報を入手しています。その比率は対象が何かによっても変化しますが、一般的に8割以上を目に頼っています。この目にまず問題があります。私たちは見ているものが見えているとは限らないのです。では面白い実験をしましょう。下記の写真を見てください。

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