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基本色/紫の由来と物語


紫という色はとても不思議な色です。紫という色を出すのはとても手間がかかり、非常に高価な存在でした。古代ローマではこの紫を出すのには、大量の貝を使いました。1gの染料を取るには、2000個ほどの貝が必要で布を1枚染めるのには数万個の貝が必要だったと言われています。皇帝と呼ばれる人たちはなぜか紫が好きです。古代の中国でも「天帝の色」とされて、皇帝に愛され、使用を禁止される「禁色」になりました。それは「貴重なもの」という存在に加え、紫が持つ妖艶なイメージ、神秘的な存在に魅了されてきたのでしょう。

ムラサキの花(左)と紫根(右)

日本では紫を出すのに、紫草(ムラサキ)の根である紫根を染料として用いてきました。紫の草と書いて「ムラサキ」と呼びます。日本で主流だったのはこのムラサキによる染色です。聖徳太子の制定した冠位十二階の最上位は深紫(こきむらさき)です。ムラサキの根である紫根の外皮に色素が含まれており、色素を取り出し、手もみで染めていきます。この紫もまた高貴な人にだけ許された「禁色」でした。『万葉集』にも天皇が管理する地で栽培されることが明記されるなど、西洋東洋問わず紫は高貴なものだったことがわかります。

「むらさき」という言葉、この由来は群(むら)+咲き(さき)であるといわれており、「むらがってさく」つまり群生して咲く様子から付けられたとされています。高貴な色にしてはなんとも、名前の由来は雑に思えなくもありません。

藤の花(上)と桐の花(下)

「紫」を尊ぶ文化は平安時代によく見られます。『源氏物語』は「紫の物語」と言われるほど、重要な色として紫が登場します。光源氏が最も愛する相手が「紫の上」、母は桐壺、母の面影を見る藤壺、青年となった光源氏が出会う空蝉、どれも紫に関係する色であります。空蝉が着る重ねは紫が入ります。そして何よりも作者は「紫式部」です。同じ時代に生きた清少納言もまた、紫に魅了されたひとりでした。

紫の由来と物語を紹介しました。動画でも紹介しています。

では後半、紫をもう少し深掘りをしていきましょう。

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