『光る君へ』5話「告白」/色彩と心理解説
2024年の大河ドラマ『光る君へ』は、世界最古の長編小説『源氏物語』を創作した紫式部の人生を描く物語です。平安時代の陰謀、愛欲、友情、家族愛が豊かな色彩の中で描かれる作品です。ポーポーの色彩研究会では、『光る君へ』の衣装、色彩、登場人物の心理背景、色と心理の勉強としながら、この物語をより楽しんでいただけるように、時代背景をからめつつ解説していきたいと思います。ストーリーを追って解説をしていきますので、まだご覧になっていない方はネタバレにご注意ください。今回も色彩と心理のポイントを解説していきます。
前回4話「五節の舞姫」はこちら▼
4話では
・物語と登場人物の心理背景
・カラーグレーディング
・宮中に入ったまひろの十二単、襲
・五節の舞の色彩
などを解説しています
では今回のお話です。
物語はまひろと藤原道長の「複雑な愛情と哀しみを抱えた宿命」と宮中の内外での欲望の虎たちによる「権力と政争の戦い」の二つのパートが明確になってきました。これから道長はこのふたつの世界を行き来しながら、この時代の頂点へと上りつめていきます。また、まひろがなぜ『源氏物語』を書くようになったのか、その登場人物はどこから来ているのか、まひろのどんな感性が紡いだのか、そんな視点で見ると、面白い物語になってきたなと感じます。ドラマを彩る色彩の世界も、少しリアルから離れている部分はあると思いますが、色彩豊かな文化が生まれて平安の雰囲気を感じられて面白いと思います。
前回の最後で、道長と兄道兼の姿を見て倒れたまひろ。ショックのあまり、そのまま家で寝込んでしまいました。母を殺した道兼と日に日に心に強く残る道長、このふたりが兄弟ということを知ったのですから、そのショックは計り知れません。「単なる噂」「日常生活で姿を見る」「式典のような場所で知る」といろいろな知り方はあったと思いますが、後者の形ほど衝撃的なほどに心に傷になったでしょう。噂から知ると人は時代に心の準備ができますが、緊張の中、大きな舞台で知る知り方ほど心を切り裂かれる思いがしたはずです。式典中は高揚感が端まっていて乗り切れても、高揚感が下がると、その衝撃だけが強く残されてしまい、寝込んでしまうことは無理もないと思われます。
寝込んでいるまひろの家に寄坐・憑子(よりまし)が呼ばれます。寄坐は神霊を降ろす際に使われる人とか人形のことです。平安時代は治療法として医師もいましたが、お坊さんや陰陽師などが普通に活躍していた時代です。ドラマではお坊さんが真言を唱えていますね。真言とは密教に由来する呪術的な言葉です。最初にお坊さんが来ているので、まひろが倒れたのは、病気ではなく誰かの呪いとかモノノケの類だと思われたようです。そして、謎の母親が降臨し、まひろのことを「娘」と呼びました。この時代、名前は外には公開しませんでしたので、お坊さんも寄坐も名前を知らないのです。本当の母親なら知っているはずですが…
寝込んでいるまひろは白い単(ひとえ)を着ています。平安時代の中期ごろまでは、十二単の一番下に着る白い単を着て寝ていたと思われます。この後、単は大きくなって使いにくくなり、庶民が外出の際に着ていた小袖が寝巻きのような存在になっていくのです。
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