基本色/ピンクの由来と物語
未来に残したい色のことば、色名で忘れてはいけないものがピンクです。特に女性に好まれる色の1位で、それも圧倒的な人気です。色の好みの調査をネットの会社や化粧品メーカーが実施します。調査の仕方、時代などで好みの色は順位が変わることがありますが、通常の調査をする限り(複数のピンク系の色があり、選ぶ色が分散するなどのことがない限り)、どの調査でも1位になる不動の人気です。もちろん過去にポーポーが実施した調査でも女性の人気1位の色です。
当然、商品のラインナップでも必ずピンク系の色はありますし、色相環の中にはない色ですが、あらゆる面から考えても、基本色として考えるのが良い色です。なぜ、ここまで人気があるのかといえば、考えられることがいくつかあります。
ひとつは日本を代表する桜の影響でしょう。これは単に桜が日本の花を代表する花だから、その花を多くの人が好きになるという単純な話ではありません。桜人気の影響で、桜関係の商品、グッズなどが多く出てくることにより、単純接触の原理からピンクの色に好意を持つ人が増えたと考えられます。一般庶民にお花見が浸透したのは江戸時代からですが、実際に江戸時代まではピンク系の色の流行は小さいものでした。
また、女性は小さい頃から「女の子はピンク、赤」とピンク系のものをプレゼントされたり、持たされたりします。すると同じく、単純接触の原理、近接の要因などの心理的な影響で、ピンクを好んで使うようになります。これが女性がピンクを好む理由の一つと考えられます。ただし強制することで、ピンクを拒絶する人も一定数います。そして、何よりも日本人女性の性格傾向とピンクの持っている心理イメージが一致するので、持っていると心地よくなるのだと思います。
このような傾向からピンクが圧倒的人気の理由であることが見えてきますが、逆にいうと今後、多様な商品、キャラクターなどが流行する中で、別の色の露出度が増えていくことで、ピンク人気が下がっていく可能性もあります。実際、最近では紫人気が高まっていて、紫がピンクの人気を抜く可能性もあるでしょう。
ではピンクの原点を探ってみましょう。ピンクは洋名であり、英語で撫子のことをいいます。撫子は『万葉集』にも『源氏物語』にも出てくるもので古い伝統色なのですが、色としては一般的ではなかったのです。むしろ桃の花の色である「桃色」のほうが使われていました。
当時は淡いピンクよりも紅花で染めた「紅」を貴族たちは求め、赤ければ赤いほうがよかったのです。生地2反(たん)の絹布を染めるのに、20斤(12kg)という大量の紅花を使うといわれています。そのため、大変高価なもので、誰もが使えない禁色でした。大量の紅花を使うことは許されておらず、許されていたのは生地2反(たん)の絹布を染めるのに、わずか1斤(紅の1/20)の紅花でした。そのため淡い紅色になり、この色を一斤染(いっこんぞめ)といいました。割と綺麗なピンクになったのですが、平安の貴族は少しでも赤い色を求めたのです。
では『万葉集』におけるピンクの物語を見て見ましょう。
紅の薄染めの衣のように薄い気持ち(軽い気持ち)で、出会った人なのに、今はこんなに恋しく思っていますという歌になります。
▼動画で紹介
(後半はさらにピンク深掘りを)
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