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色彩心理の基礎/(1)色は感情に影響を与える
色が人に与える効果には、いくつかの種類があります。心に影響を与えて感情に変化を与えるもの、感覚を狂わしてしまうもの、心だけでなく体そのものに影響を与えるものです。たくさんの心理効果をわかりやすくするために何に影響を与えるかによって効果を3種類に分類をしました。
(1)感情に影響を与える
(2)感覚、判断に影響を与える
(3)生体に影響を与える
ここでは「感情に影響を与える」を取り上げます。
人が色を見ると心の中に様々な感情が生まれます。楽しい気持ちになったり、安心感を持つこともあります。色と感情の間には結びつきやすい関係があり、「リラックスしたい」「元気になりたい」などと感じるときに、そうした感情を誘導しやすい色があるのです。また、色との好み性格の間には相関関係があることがわかっています。
色が感情を変える例として代表的な話は、ロンドンのテムズ川にかかるブラックフライヤーズ橋です。中世の頃、ブラックフライヤーズ橋は自殺の名所として記録的な数字を出していました。黒く塗られていた塗装を明るい緑色にしたところ、自殺者が大きく減りました。明るく変わった外装の色が自殺を思い悩む人の心に影響を与えたことは想像できます。現在は、さらに明るくなって赤(ピンク)とオウホワイトで塗装されています。
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アメリカのカルフォルニア州にあるサンタクララ刑務所では、受刑者たちの喧嘩や暴動などトラブルが絶えませんでした。そこで凶悪犯収容部屋の無機質な壁の色をやさしいピンクに変えたところ、受刑者同士の喧嘩や暴動の発生率が低下したのです。ピンクには、人の心をやさしくおだやかにする心理効果があるのです。自分の愛情に気がつき、人のことを大事にしたくなり、世話をやきたくなる色でもあります。
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赤・橙・黄色などは暖色と言われる色のグループです。暖色を見ると火や太陽といったもののイメージを持ちやすく、暖かいイメージを持ちます。そして暖色は行動的な感情を持ちやすくなります。青緑・青・青紫などは寒色と言われる色のグループです。寒色は水を連想し、冷たいイメージを持ちやすいものです。感情的には消極的な気持ちを持ちやすくなります。色によって感情が誘導されることもあります。逆に言えば、気持ちが落ち込んでいるときは寒色よりも暖色を見たほうが良いでしょう。
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鮮やかな色は固有の色の強さが出やすく、薄い色、淡い色(水色・ピンクなど)は固有の色に関係なく全体的に優しい感情を想起しやすい傾向があります。つまり、気持ちが落ち込んだときは暖色の鮮やかな色を見るのが好ましいのですが、赤や橙の鮮やかな色は強すぎることもあり、受け入れ難い時もあると思います。そんなときは寒色であっても、鮮やかな青は気持ちを前向きにしてくれます。
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