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夜の森歩き(天人峡 くるみの沢)

雪の中、夜の森を歩くツアーがあると聞き、胸が高鳴った。
このツアーでは天人峡へ向かう途中、樹齢推定900年(と数十年)のカツラの木に会いに行きます。この木は、森の神様として林野庁が2000年4月に全国森の巨人100選にも選んでいる巨木(御神木)です。夜19時頃から歩き始め、休憩を含めて約120分程度森の中を探検しました。

ツアーを企画したのは、ensemblesさん。アウトドアクラブという企画で、今回が記念すべき、1回目の開催でした。

キュレーターは千葉県から北海道に移り住んで30年、現在は大雪山系旭岳を中心に登山ガイドとスキーガイドを務める鳥羽晃一さんで、愛称「とばじぃ」。長い自然ガイドの経験で、参加者を安心して夜の森へをご案内くださいました。

この日は、スノウシューを履いて歩くのは初めてという人もいて、参加者総勢10名(うち3名スタッフ)でいざ、夜の冒険へ。

スノウシューは自分の冬靴に簡単に装着できて雪の中を気軽に歩けるので、初めての方や旅行者にもとても人気があるアクティビティのひとつ。
急に参加したいがスニーカーだった。雪仕様でないという人にはガイドさんがスノウガードという靴を覆う袋状の靴型装備を貸し出してもくれるので安心。(今回はみんな自前の冬靴)

初心者でも5分程度で装着できるスノウシューの履き方をレクチャーするとばじぃ

私も数えるほどしか体験していないが、その魅力にハマっている。スノウシューの良さは雪が降る前は歩けない笹藪の中や人が通るには険しい森の中を場所を選べば自由に歩き回れること。時に、水場で穴があったり、急な坂や凹凸した所もあるし、野生動物が生息する森の中なので個人で闇雲に知らない土地や、森の中を歩くことは難しい。しかし、今回のようにその土地のことをよく知るガイドさんと一緒だと、とても安心して楽しめます。


倒れた木に雪が積もって自然のトンネルに。潜った人は1年間健康でいられるというおまじない付

この日は今年最初の満月に近づいている月が足元を照らしてくれた。夜の雪に月灯が反射して、木の形が影となり映り込む様子はなんとも幻想的。さっくさっくと、雪を踏み締める音だけが静かに聞こえる。

鹿、エゾリス、ももんが、雪うさぎ、たぬき 
ヒグマの爪痕の残る木の周りを見つけながら夜を歩く。

動物たちの足跡のなんとリズミカルなこと。
道なき道を歩く楽しさよ。

普段使わない感覚として、暗闇の中で呼び起こされる意識を参加者それぞれが徐々に感じ、身体を温めていったのが印象的。
マイナス10度の中を歩いているのに、寒さは感じない。もちろん、それぞの冬の装備をした上でのことだが、吹雪いていない日の夜を歩くのは最高に気持ちがよかった。

歩き始めて約1時間。樹齢900年のカツラの木に出会えました。

太古の記憶というものが、人のDNAに刻まれていて、夜の森を歩くことでその感覚は再び開かれていくようだとお話ししてくれた、とばじぃの言葉がじわじわと翌朝目覚めるまで身体に届いていた。

日常で過ごす時間もとても大切で、様々な物事が詰め込まれていく日々。
でもこうやって、ふと日常を離れた時間で別の感覚に出会う時間も尊い。

御神木の前でろうそくを灯し、参加者それぞれにお祈りをする時間。

この世界、大人ももっと遊ぶことを取り入れていいと思うし、実際にそういう時間を大切に過ごしたい。
本気で遊ぶってエネルギーもいるけど学びも大きい。私を自然の中に連れ戻してくれたのは過去の記憶と現在のご縁。最終的な想いを動かそうとする力はみんな自分の中にあるはずだ。そのきっかけをくれたり、向き方のアドバイスをくれる人にもらった愛をまた形を変えて、別の場所で活かしていける人になりたい。

とばじぃがキュレーターをする、ensembles アウトドアクラブ2回目は2025年3月にあるそうです。年間を通して、様々なアクティビティを計画中ということで、どんな出会いができるか楽しみです。

ご興味ある方はこちらからアプリをダウンロードすると詳細が届いたり、情報をご覧いただけます。

企画してくれたスタッフのひなこさん、Micciさん、案内をしてくれたとばじぃ、楽しい時間をありがとうございました。休憩中にとばじぃが入れてくれた、幸せのホットココアも最高でした。ホットチャイのご用意もあったことを知り、2杯目も飲みたいところだったが、ここは冬山の中(トイレも無いので)「少し控えめにね」というお言葉を受け止めて、帰路を辿りました。

※どばじぃの「じぃ」はネパールの言葉で人の名前の後につける敬称(さん)だそう。お年寄りにつける「じぃ」とは違い、「鳥羽さん」と呼ぶより
「とばじぃ」の方が気軽で親しみやすい感じでいいでしょと自己紹介してくれました。


森の静けさ。夜の闇。
この世界のまだ見ぬ場所へ。私たちはいつでも行くことができると信じて。
心をそこに置く、少しの時間ときっかけを見つけよう。そして いつも、少しの勇気を持って歩いていこう。