弁理士 遠山 勉

1955年生まれの弁理士です。特許・意匠・商標等の特許庁への出願代理業務、特定侵害訴訟代理などをしてまいりました。秀和特許事務所の経営から65歳で退き、後進に引き継いでもらい、現在はピンの弁理士として知財経営コンサルティングを中心として活動しています。

弁理士 遠山 勉

1955年生まれの弁理士です。特許・意匠・商標等の特許庁への出願代理業務、特定侵害訴訟代理などをしてまいりました。秀和特許事務所の経営から65歳で退き、後進に引き継いでもらい、現在はピンの弁理士として知財経営コンサルティングを中心として活動しています。

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知的財産法 (8)・・特許要件:発明該当性と産業上利用可能性(特許法第29条第1項柱書)

特許法第29条第1項柱書の意義 特許法第29条第1項柱書では、「産業上利用することができる発明をした者は、・・・・その発明について特許を受けることができる。」としている。 この条文は、発明が特許として保護されるためには、産業上利用可能性がなければならないことを規定しています。これは俗に「有用性」ということもある。 また、この条文から、発明完成時に、特許を受ける権利が生まれていることが推察される。 さらに、特許法2条1項で定めた「発明」概念に相当しない場合も、「発明該当性」

    • 知的財産法 (7)・・職務発明の問題

      職務発明とは何か1.職務発明とは、従業者のした発明であって、その性質上使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明をいう(特許法第35条第1項)。 制度趣旨 2.今日、発明の多くは企業内の従業者によるものである。かかる発明も従業者たる発明者の特別な能力・努力によるものであるが、その完成には使用者による設備の提供等の貢献も見逃せない。   従って、職務発明については、従業者及び使用者の両立場からその

      • 知的財産法 (6)・・発明完成から特許出願までの法的問題                                   

        発明の完成に伴う問題発明はいつ完成したと言えるのか 前回の知的財産法(5)・・発明って何だ?で、発明の定義につき学びましたが、では、その発明は、いつ完成したといえるのでしょう。 もう一度発明の定義を振り返ってみると、その答えが見えてくるはずです。 発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」でしたね。 ここで、特に着眼すべきは、発明は「技術的思想」であり、技術とは「一定の目的を達成するための具体的手段」であることです。 当該の技術分野における通常の知

        • 知的財産法(5)・・発明って何だ?

          発明の定義みなさんは、「発明」とは何かと、聞かれたら何と答えますか? よくある答えは、「新しいもの、新しい技術、役立つもの」とか、「エジソン」とかちょっと質問の趣旨とは違う答えをする人も・・。 発明の定義について、特許法には以下のように定められていす。 これをよく読めばわかるように、定義の中には、「新しい」とか「役に立つ」というような要件は明確に定められていません。 その理由は、後述しますので、まずは、この定義について逐次明らかにしていきましょう。 「発明とは、自然法

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        • 知的財産法を学ぶ
          7本

        記事

          知的財産法(4)••知的財産法の保護対象と保護の仕組みの関係を理解する

          知的財産法を学ぶには、その保護の仕組みを知っておくことが、理解を早めることになる。その仕組みを理解するため、ここでは、視座・視野・視点という概念セットに知的財産法を当てはめてみたい。視座とは、立ち位置を意味する。視野は、見る範囲のことである。守備範囲と言っても良いかもしれない。視点は、着眼点である。知的財産法の視座・視野・視点が何であるかは、知的財産法各法の目的規定から理解されるでしょう。 特許法の仕組み特許法の視座:産業の発達 特許法の視野:発明の保護と利用による発明の

          知的財産法(4)••知的財産法の保護対象と保護の仕組みの関係を理解する

          知的財産法(3)••知的財産法の必要性

          所有権では、知的財産を守れない? 所有権の内容 民法第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。 まずこの事件を見てください。 かえでの木事件  東京地裁平成14年(ワ)1157号平成14年7月3日判決  https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/772/011772_hanrei.pdf この事件は、かえでの木を所有する原告が、同かえでの木の写真を掲載した書籍を

          知的財産法(3)••知的財産法の必要性

          知的財産法(2)••知財尊重三原則•パクリと言われないために

          はじめに・・パクリ炎上の時代インターネットの発達、SNSの発達により誰もが自身で情報発信できる時代となった。それに伴い、発信した情報がいわゆる「パクリ」と言われ、知的財産法(1) で紹介したように、SNSなどで炎上してしまうケースも多々見られる。 これら事件を見ると、炎上の原因として、知財リテラシー不足があることが多いことに気付かされる。 その一つ目は、創作側当事者に知財リテラシーが欠けていて、知的財産法に抵触した作品を作ってしまう場合、もう一つは、評価する側の公衆に知財

          知的財産法(2)••知財尊重三原則•パクリと言われないために

          自己紹介

          このnoteの記事で、知的財産法の講義を提供するのは、弁理士の遠山勉です。大学での知的財産法講義録に基づいて、知的財産法を分かりやすく学ぶ場を提供したいと思います。 弁理士  遠山 勉 の 経 歴 書 学歴/研究歴  昭和49年3月    埼玉県立熊谷高等学校卒業  昭和49年4月    中央大学法学部法律学科入学  昭和53年3月       同      卒業  昭和57年11月     弁理士試験合格  昭和58年3月     弁理士登録  昭和62年3月 東京理科

          知的財産法(1)・・・模倣と創造と知的財産法

          by 弁理士 遠山勉 模倣してはいけない・・ってホント?知的財産法というと、すぐに、「模倣してはならない」と頭に浮かぶのではないだろうか。 とりわけ、ネット社会となった現代において、いわゆる「パクリ」疑惑が多方面で取り沙汰され、炎上する例が多くみられる。 ネット上で炎上するものは、「見てすぐわかる」ものが多く、そのほとんどは著作権法における著作物の模倣問題である。しかし、知的財産として保護されるものは、著作物に限らず、特許法で保護される「発明」、実用新案法で保護される「

          知的財産法(1)・・・模倣と創造と知的財産法