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母のために禁煙外来の予約をした

私にとって最も勇気のいる一言だった。

「禁煙外来、行ってみない?」

揉んでいた母の痩せた小さな肩がピクリと止まった。
それから続いた沈黙。

いつからだろう。
母は私が幼い頃から隠れてタバコを吸っていた。
換気扇を回しても、隠せない独特のにおいがキッチンやトイレにはあった。

幼い私でも知っていた。タバコは体に良くないってことを。

でも、それよりも隠れて吸っている母にタバコの話を持ち出すことは、私にとってとても怖かった。同居する兄も父も知らないふりをしていた。ずっと知っているのに誰も、何も言わなかった。

そんな母はもう70代。

帰省して久しぶりに会った母が、とても小さくなった気がした。
とても痩せている。頬がこけて、年齢よりも老けて見える。

むせたり、咳こんだり、ちょっとした散歩で息切れしたりする。
それでも、今も隠れてタバコを吸っている。
むしろ本数が増えた気さえする。


今更遅いと思われるかもしれない。
でも、帰省している間に、専門家に相談してみようと思う。


本人が変わりたいと思わないと禁煙は難しいとネットには書いてあった。
勝手な私の思い込みかもしれないが、本当は母もやめたいのではないか、でもやめられないのではないか。

思い切って、禁煙外来を予約した。

4月16日。母は一緒に来てくれるだろうか。


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