ぱちこ_愛蘭覚書

アイルランドに関するあれやそれを書きます。パトリック・ピアース周辺のアイルランド史とアルスター伝説が好き。 ブルースカイ→ https://bsky.app/profile/patiko65.bsky.social

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  • アイルランドのあれこれ雑記

    旅行記や歴史考察など、アイルランドに関する記事をまとめたページです。

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    アルスター伝説の翻訳をまとめています。

  • クー・フリン伝説「ロスナリーの戦い」

    ケルト神話「ロスナリーの戦い」の翻訳をまとめたページです。

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いつの日か見たい「イースター蜂起」関連ドラマ

この記事では、めちゃくちゃ見たいのに日本ではどう足掻いても見ることができないイースター蜂起関連の映像作品を紹介する。 ①「Eoin MacNeill: The Forgotten Man of 1916」 2016年に制作された、1時間のドキュメンタリードラマ。学者であり、政治家でもあるオーエン・マクニール(Eoin MacNeill)を主役としている。彼はゲール語の復興を目指す団体「ゲール語連盟」の創設者の一人で、イースター蜂起の指導者パトリック・ピアースの師ともいえる

    • ④クー・フリン&ロイグ主従が大活躍!アルスター伝説「ゴルとガーブの壮絶なる死」

      アイルランド伝承「ゴルとガーブの壮絶なる死」の訳つづき。間違ったところや、気になるところがあればお気軽にご指摘ください。 元文はこちら 34 ロイグは馬をとめ、クー・フリンはエウィンに入りました。エウィンに入って最初に出会った英雄は、スアナン・サルセン、コノールの給仕人でした。彼は自身の給仕人をエウィンから決して離れさせなかったのです。 「ええと、スアナン。みんなはどこへ行ってしまったんだ?」 「クアルンゲのグレオ・グラスの子、コナルの邸宅へ」スアナンは言いました。

      • 意外といるぞ パトリック・ピアースの友だち①

        皆さんご存知(?)、アイルランド建国の父パトリック・ピアース。教科書などで名前は見たことがあるかもしれないが、実際にどんな人物だったかを知る方は少ないのではないだろうか。 パトリックの性格は、ひと言でいえば「内気」。幼いころから極端な無口で恥ずかしがり屋だった。学校では友だちをつくろうとせず、いつも独りぼっちで本を読んでいた。同級生の取っ組み合いやバカ騒ぎを目にすればあからさまに怯え、「いくじなし」と言われることもあったらしい。 この内気さは大人になっても変わらなかったが

        • ③クー・フリン&ロイグ主従が大活躍!アルスター伝説「ゴルとガーブの壮絶なる死」

          アイルランド伝承「ゴルとガーブの壮絶なる死」の訳つづき。添削済みですが、気になるところを指摘していただけると土下座して喜びます。 元文はこちら 22 「さて、ロイグ」クー・フリンは言いました。「馬に鞭を打って走らせてくれ」 「どちらへ行くんです?」尋ねるロイグに、クー・フリンは答えます。 「偉大なるエウィン・ウァハへさ」 「僕があなたなら、ダンドークとフォルガルの娘(※1)から離れませんけどね」 「どうしたんだ、ロイグ? 今日の夜明けに我らが王、コノールが言ったこ

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        • クー・フリン伝説「ロスナリーの戦い」
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        記事

          ②クー・フリン&ロイグ主従が大活躍!アルスター伝説「ゴルとガーブの壮絶なる死」

          アイルランド伝承「ゴルとガーブの壮絶なる死」の訳つづき。添削済みですが、気になるところを指摘していただけると土下座して喜びます。 元文はこちら 11 「じゃあ、ロイグ」クー・フリンは言いました。「あの英雄に近づいて、やつの領土や親族、名前や祖国、得ようとしてる場所について聞き出してきてくれ」 12 そこで、ロイグは侵入者のもとへ行き、彼の向かい側の土手で立ち止まりました。「偉大な英雄よ、そなたはどこから参られた?」 ロイグは尋ねましたが、返事はありません。 「そなた

          ②クー・フリン&ロイグ主従が大活躍!アルスター伝説「ゴルとガーブの壮絶なる死」

          ①クー・フリン&ロイグ主従が大活躍!アルスター伝説「ゴルとガーブの壮絶なる死」

          アイルランド伝承「ゴルとガーブの壮絶なる死」の訳。いつものようにクー・フリンが敵をぶっ飛ばす話かと思いきや、クー・フリンとロイグの掛け合いが超可愛かったり、クー・フリンがコノール王(コンホヴァル)にブチ切れたり、仲間の戦士と対立したり、楽しい要素がもりだくさん。なんでこの話がマイナーなのか、ちょっとわからないレベルで面白いです。 添削済みですが、気になるところを指摘していただけると土下座して喜びます。添削は、ロスナリーの戦いと同じくseri.naznaさまにお願いしました。

          ①クー・フリン&ロイグ主従が大活躍!アルスター伝説「ゴルとガーブの壮絶なる死」

          暇なら見とけ!オタクが勧める「近代アイルランド史のドラマ&映画」

          今回は、「近代アイルランド史のことをもっと知りたいけど、英語の本やら論文やら読むのめんどくさい」というあなたのために、オタクがおすすめの近代アイルランド史ドラマ・映画を適当に紹介する。 ①「Rebellion(リベリオン)」オタク向け度:★★☆☆☆ 一般向け度:★★☆☆☆ アイルランド独立のきっかけとなった、「イースター蜂起」にまつわる出来事を描いたドラマ。イースター蜂起100周年を記念して、2016年に放映された。 本作最大の特徴は、「女性の視点でイースター蜂起を見つ

          暇なら見とけ!オタクが勧める「近代アイルランド史のドラマ&映画」

          ④パトリック・ピアース最愛の弟「ウィリー・ピアースの足跡」

          ガバガバ歴史探究つづき。前回と同じく、パトリック・ピアースの弟ウィリー・ピアースの人生について紐解いていこう。 1910年、兄パトリックは教育に適した静かな環境を求めて、聖エンダをラスファーナムというダブリン郊外の土地に移転させる。 このころから、聖エンダに政治と関わる人間が出入りするようになった。 たとえば、バルマー・ホブソンとコンスタンツ・マルキエヴィッチら(※1)によって設立された「フィアンナ・エイリアン(Na Fianna Éireann)」との関係がある。

          ④パトリック・ピアース最愛の弟「ウィリー・ピアースの足跡」

          ③パトリック・ピアース最愛の弟「ウィリー・ピアースの足跡」

          ガバガバ歴史探求続き。前回と同じく、パトリック・ピアースの弟ウィリー・ピアースの人生を紐解いていこう。 美術学校に通いながら、ゲール語連盟の一員としてゲール語を指導するなど、忙しい日々を送るウィリー。 そんな彼に、運命を大きく変える出来事が起こる。1908年、兄パトリックによる「聖エンダ学校」の設立だ。 聖エンダ学校は、子供たちに英語とゲール語で教育を施し、バイリンガルに育てることを目指した学校。カトリック教会の影響力を排除したり、体罰を禁止したり、当時としてはあらゆる

          ③パトリック・ピアース最愛の弟「ウィリー・ピアースの足跡」

          ②パトリック・ピアース最愛の弟「ウィリー・ピアースの足跡」

          前回に引き続き、パトリック・ピアースの弟ウィリー・ピアースの人生を紐解いていこう。 ゲール語以外の学問はてんで駄目なウィリーだったが、彼の関心は芸術に向いていた。ウィリーは彫刻家の父ジェームズと、ジェームズの手伝いをしていた異母兄ヴィンセントの影響を受け、彫刻芸術に興味を持つようになった。 そして1897年、15歳の時、ウィリーは近所のメトロポリタン美術学校に入学。日中は父の経営する建築会社の見習いとして働き、夕方は学校で美術を学んだ。 こうして彼は、芸術家としての第一

          ②パトリック・ピアース最愛の弟「ウィリー・ピアースの足跡」

          ①パトリック・ピアース最愛の弟「ウィリー・ピアースの足跡」

          ガバガバ歴史探求つづき。今回は、パトリック・ピアースの弟ウィリアム・ピアース、通称ウィリー・ピアースについて紹介する。 兄の影にあることを運命づけられた男 アイルランド建国の父、パトリック・ピアースの人生に最も近く寄り添い、心を通わせた人物、それが弟ウィリー・ピアースだ。 彼は偉大な芸術家になることを夢見る、内気で優しい、ごく普通の青年だった。彫刻家や俳優として活動しつつ、兄パトリックが創立した学校「聖エンダ」の運営を手伝った。 しかしある時を境に、彼はアイルランド独

          ①パトリック・ピアース最愛の弟「ウィリー・ピアースの足跡」

          独断と偏見で選ぶ「アイルランド旅行におすすめ!? ケルト神話スポット」

          今回は、アイルランド旅行2回の経験溢れる筆者が、アイルランド旅行におすすめのケルト神話スポットを独断と偏見でテキトーに選出する。 中の人の特性上、ちょっとポリティカルかつ下品な臭いがするがそこはご容赦いただきたい。なお、行ったことのない場所は★マークを付けている。 ダブリン周辺 ①ダブリン中央郵便局(GPO)  しょっぱなから政治絡みで申し訳ないが宗教上の理由で紹介。我らがクー・フリンの像があることでオタク界隈にもよく知られている。 クー・フリン本人の像と言えるかは微

          独断と偏見で選ぶ「アイルランド旅行におすすめ!? ケルト神話スポット」

          意外とあるぞ クー・フリンにまつわる音楽大紹介

          「ニーベルングの指環」や「牧神の午後への前奏曲」などなど、古今東西、神話や英雄の生き様は芸術の題材になるものである。 もちろん、我らがクー・フリンも例外ではない。 というわけで、今回はアイルランド伝説の英雄クー・フリンにまつわる音楽をゆるゆると紹介する(7月11日追記)。 ① The Blood of Cu Chulainn~映画「処刑人」より映画「処刑人」のテーマ曲。 法では裁けない極悪人に鉄槌を下す、アイルランド出身の兄弟が主役のアクションバイオレンス映画。タイトル

          意外とあるぞ クー・フリンにまつわる音楽大紹介

          地獄に堕ちたかつての英雄…アルスター伝説「クー・フリンの幽霊戦車」

          アイルランド伝承「クー・フリンの幽霊戦車」のガバ訳。地獄に落ちたアルスターの英雄、クー・フリンが聖パトリックの力で蘇り、エーリゥ(アイルランド)の王ロイガレにキリスト教への改宗を迫るお話です。 この物語のクー・フリンは、地獄の苦しみに耐えきれず聖パトリックに許しを請うという、少々弱々しいキャラクターになっています。英雄クー・フリンの活躍を知る人からすれば、「こんなのクー・フリンじゃない!」と思われるかもしれません。 しかし、「クー・フリンの幽霊戦車」は「クアルンゲの牛捕

          地獄に堕ちたかつての英雄…アルスター伝説「クー・フリンの幽霊戦車」

          歴史と伝説の交わる場所…コナハト地方「ピアースコテージ」訪問記

          今回は、アイルランドのゴールウェイ県、コネマーラ地方の小さな村ロスマックにあるドマイナー歴史スポット「ピアースコテージ」について紹介しよう。 ピアースコテージとは、1916年イースター蜂起の指導者、パトリック・ピアースが建てた別荘のことである。イースター蜂起とはなんぞやという方は、この記事を読む前に独立国家アイルランド始まりの場所――「ダブリン中央郵便局」訪問記に目を通されたし。 訪れた感想を述べる前に、まずは彼が別荘をコネマーラ地方に作った経緯を説明しよう。 パトリッ

          歴史と伝説の交わる場所…コナハト地方「ピアースコテージ」訪問記

          ③アイルランド建国の父を育んだ者たち――パトリック・ピアースの「父と母」

          前回に引き続き、パトリック・ピアースの母親マーガレット・ピアースがどのような人生を歩んだのか、かる〜く見ていこう。 1908年9月8日、長男パトリックが男の子のためのバイリンガル学校「聖エンダ」を設立すると、マーガレットや長女マギーら、ピアース家の面々も運営を手伝うようになった。 マーガレットは、母親と従姉妹のミス・ブレディと共に家庭仕事全般を受け持った。長女マギーは手伝いのほか、1910年を過ぎるとフランス語も教えるようになった。同じく次女メアリーも、1910年以降は音

          ③アイルランド建国の父を育んだ者たち――パトリック・ピアースの「父と母」