ソフビけもの道(その11)無謀な量産
結局、全く量産塗装に向けての道筋は見えてこない。
このままだと筆で塗る。
その道しか残っていない。
そもそも怪獣軒にお金がなかったのでこれ以上塗装マスクを作る余裕がなかったのだ。
シルバー仮面を発売するには怪獣軒としても間が空きすぎた。
以前も書いたようにHPを更新すれば皆が見ている、というあまりにも楽観的な計測であった。
そのおかげで次作のレッドバロンに関してはほぼ塗装マスクを作ることはできない。
かろうじて顔の横のラインを作ってもらうことはできたが、他の塗装に関してま全くどうにもできない状況だった。
自作の塗装マスク以外の道はなかったが現状は全く持ってなんの手立てもないに近い。
ただその間に使える材料だけはある程度用意はできた。
できる部分はそこでなんとかしよう…
怪獣軒も塗装はどうするの?
という感じだったので塗装に関してもう人に頼ることはできない。
商品を出すには自分で塗るしかない。
それ以上でもそれ以下でもなければ、自分で塗る以外の選択肢がないのだ。
その方法論がなければ筆塗りをする。
それだけである。
まだこの頃はエアブラシに対しての苦手意識もあるというのと、ソフビの塗料の扱いは非常に難しい。
希釈と調合。
この二つは最大の難関ではあるがこれができなければ全く塗装にならない。
現状それすらどうにもできない状況だった。
あまりにも希釈が難しすぎるのだ。
とにかく少しでも量産塗装ができるよう何か手を打たなければなかった…
そんな中、もちろん造形は止まることなく進んだ。
商品になるならないでなく、スカルピーという存在がこれほどまでにスピーディーに作品を作れるということに感動。
今まで溜まりに溜まった欲求がここで爆発する。
もちろんこれらをブログに載せることで一つの宣伝になるだろう。
という目論見もあった。
もちろん、それらはその通りとなり、少しずつ怪獣軒と造形をしているあべというのが認識され始めてきた。
そして中野にショーケースを借り、その場で店長にレッドバロンを展示して予約をとらせてもらえないか?
と打診。
快く引き受けてくれた。
そもそもこの段階でシルバー仮面を置いてもらってもまだ周知されておらず、なかなか動きは鈍かったのによく相談に乗ってもらえた。
と今考えると冷や汗が出る。
それでも何かしらの手立てが必要だった。
そうしながらも造形は続ける…
こうして、2010年はシルバー仮面のみの発売で終わる。
レッドバロンをワックス転換することが非常に難しく、なるほど他の原型師がヒーローやロボットをやりたがらないわけだ…
と実践してその難儀さに気付かされた。
しかしこの段階で求められていたのはヒーローやロボットであったことは間違いない。
そういう意味でもこの市場を取ることは非常に重要だったのである。
そもそもこの時代の原型師さんの大半はワックスができていた、というのもありその側面からもヒーローやロボットというのはめんどくさい作業ではあったのは間違いない。
そうして遅れに遅れて2011年、約1年半をかけてレッドバロンが完成する。
時に4月。
このレッドバロンが一番目の転換期となったのは言うまでもない。
ブログ、ショーケース、そしてフェイスブックも始める。
そういう露出を増やすことでシルバー仮面で失敗した部分を大きく補填できたと考えられる。
レッドバロンはスタートから数倍の注文をいただいた…
しかしここで最大の難関『塗装』。
これには全くなんの手立てもなかった。
もう筆塗りしかないのである。
自分のその時の技術ではエアブラシさえまともに吹けなかったのだ。
しかしこれを逆手に、筆塗り塗装をエンタメとしてブログにあげた。
ある意味制作工程を公開することは版権物としてはタブーである部分もある。
いや、実のところ版権元様によってガイドラインが違っていたりもしている。
仮申請が終わったら原型を出してもいいよ、などそれぞれにガイドラインがあった。
もちろん、今はもっと厳しくはなっているが、その辺は担当者の方とのセッションでご許諾いただけたりもする。
その辺は色々とやり方があるのだが、そのあたりは割愛せざるおえないのご了承いただきたい。
そうして、地獄の塗装は始まった…
1巡目は筆塗りをしたのだが、やはりエアブラシを覚えるしかない…
とにかくプロジェクトは動いているので『できない』『終わらない』はあり得ないのだ。
やるかやらないか、それだけである…