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むちゃな生産と技術向上と賃金

世間はGWですが、うちのような小規模な製作会社は休み明けに納品するという過酷の作業があるためにとにかく仕事。
人の休日ほど仕事をせねばなりません。

さてそんなおりですが、とてもすごい動画を拝聴しました!

安彦良和氏のアニメの歴史の関するインタビューなのですが…
そもそも安彦良和氏といえばやはりガンダム、ということになるでしょう。
もちろんヤマトだのライディーンだのクムクムだの(笑)枚挙に遑がないのですが、自分的にはガンダムは別格として、絵描きとしては湖川友謙氏や恩田尚之氏がものすごく好きで、彼らのアオリの絵や表情に入る皺の表現など死ぬほど模写しました。

まあなんというか。安彦氏の話になると彼を好きな人からものすごい攻撃を受けるので(そういうところファンがダメにしてしまうんだよなあ…)あまり話題にすることはない。

まあそういう私情はさておき(笑

この動画、そういうクリエイティブな部分の歴史のお話かと思いきや、80年代のアニメの変貌というか80年代の表現が完成したというお話でもありつつ、実のところ業界の経営面での困ったことを知らずに業界にきた人たちによる技術や表現の底上げ、というものにも言及されていた。

いわゆる、話の中でも触れられている大友克洋氏や庵野秀明氏によって緻密に描かれていくことが職業アニメーターには非常に酷な出来事だった。
実施賃金が上がらないのに作業量だけは膨大になる。
実作業に見合わない賃金であればかかった時間に対する身入りも減り死活問題だと。

この辺はうちのソフビ業界もそうで、何度も書いている通りソフビは

『いかにお金がかからず生産できるか』

という部分に特化してきたため残りは人の勘だのみ。
という荒技技術の世界。

つまり安い設備投資を人の手でカバーする。
ぶっちゃけおもちゃとしてはかなり不安定極まりない技術であるのです。
むしろ偶然の産物の組み合わせ。

しかしながら、最近は新しく参入してくる人たちがそういう雑なくせにデリケートな部分を知らず、かなり無茶を言ってくる。
まあうちなんかが外注をやめたところがそこで

『お忙しいですねえ〜でもうちのは遅れないでね』

という人ばかりで(笑
先にも書いた通り、できないことをやってほしい。
そういう要望が非常に多くなり、その説明をセッションする→遅れる。
しかし締め切りは守れという。

そういうクライアントが十人いたらそれぞれ1日遅れたとして10日遅れるわけだ。
こういう実作業に関してあまりされたことがない人ほど無茶を言い、遅れるな、遅れたら値引きだ。
という話になるので、もううんざりだと(笑

まあ愚痴はこれくらいにして(笑
昔からのクライアントであればツーカーで作業が進むのですが、新規の方だとなかなかその説得と打ち合わせに膨大な時間がかかる。
そこに料金が発生しないと最悪。
まあ、そこまでいうなら自分でやりなさいと(笑

これは実のところクリーター業界だけでなく、医療現場や介護の現場などでも起きていると思います。
クライアントや顧客の『高い』要望に応えるためには膨大な時間と高い賃金があってこそ成り立つ。

しかしながら現場はそうなってないよなあ…
としみじみ思います。

かと言って、これも安彦氏がおっしゃってますが、そういう無茶な現場がとてつもない技術向上になる場合も多々ある。
日本のアニメーションや漫画が世界で評価されるのはそういうあり得ない賃金で搾り出してなんとかする。
という悪習慣が逆にすごいものを生み出している側面もあるのだ。

このバランスの着地点って…
見つからないよねえ…

なんだかんだ言って締め切り効果って絶大なのよ(笑

ただ、やはりそういう無茶な賃金の発生しない現場はこれまた安彦氏が語るように『会社が潰れる』。
これも揺るがないことだと思います。
まずは賃金の発生する現場。
これが一番であって、そうなるには顧客も商品に準じた対価を支払う。
ということも重要になります。
もちろん、少しでも安く購入したい…
という気持ちはわかりますが、対価は利益に繋がりお給料も上がる。
現在は価格以上のサービスを求め過ぎていることでいろんな職業が疲弊している。

そう感じてなりません。

スーパーの大安売りでで1玉100円のキャベツを買った!
安く手に入った!
と思っても1玉使わず半分腐らせた!
というのであれば100円で1/2キャベツを買った方が全てが幸せだ。
と思うんだよなあ…
日本は長らくそういうスパイラルにハマり過ぎている、と思わずにはいられません

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