10月10日
本を開いた。僕の人生は、本の中から始まった。
昔の人の言葉に、芸術について語ってあった。正確なニュアンスは覚えていないが、
「芸術を始めてから人生を始める、人生を始めてから芸術を始める」という深い内容の言葉であった。今の僕にそんな才能があるのかと、後悔が思い浮かぶ。その後悔は、脈絡として繋がっていないが自分の書く文章が、金木犀の香りのように、一直線でなければならなかった。
秋という季節は、人を少し寂しくする。それでも、僕は思ったんだ。どんな人生を送っても、AIに負けても良いじゃないか。信念という基軸があるなら、自分が書いた文章が人に養分を与えたり、幸せを伝えたりしてしまうことがあっても。それは、実績として自分にプライドを持つということだ。人から笑われても、自分の信念というものに確証があるのならば、愛する人を幸せにしたいと思える。
若い頃に、よくシャボン玉の話をしてくれた人がいた。
シャボン玉は遠くに飛ばすものなんだよと。
幼い頃、そういう心を教わった人は、絶対に負けない。
僕は、走るのが遅かったが、人並みに明るい性格の人間に育っていった。そうして、僕は空想の中にいるような、不思議な実在の中にいた。
そこには、声が聞こえる!
衒学的になれ!もっと立派に生きろ!などの細波を水平線を渡るように光が煌めいて夜になった。夜には、灯火が明日という真実、それをおそらく未来という言葉を使って表現するのだろうが、言葉を知らぬものだから、またわからなくなる。
僕は、シャボン玉が消えてしまうことを教えてくれた人に出会ったことはない。それは、自信を持てということだ。泣き止むな、走り続けろ、人に笑われても諦めるな。
君と溶けていく新しい季節が現実になっていく。トナカイは、ロマンチックな衣装を拾って、虹の切れ目を走っていく。そこには、笑顔があるだろ?形而上学?自己欺瞞?そんな事は、専門家がやることだ。芸術は、どんなに貧しくても、人に希望を与えてくれる。
本には、色々なことが書かれている。まるで、「本自身が認識していない」ように。そんな夢中になって過ごせる人生は明るい。あっという間に過ぎ去る。笑顔を見せてよ、君の笑顔を見せてよ、そんな何とも言えない愛が僕を彩る。人が人で無くなったらどうなるんだ?
<私>という時空の中で、輝きを見せるのは、きっと君だ。そよ風が、靡いて僕は空を見上げた。そこには、少し歯の欠けた子どもの姿が映っていた。そして、母なる大地には、歌にしろ、雰囲気にしろ、場に至っても、消えない楽しい人生がある。人が生きると書いて、人生。「人」とは、支えあって生きているんだ。お茶目な人生を送ってない人も、人間に怖がっている人も笑顔があると嬉しいな。まだ、永久歯が生えてないの?と子どもの僕が友達に送る。みんながそんな冗談を言いなさんなと言って笑える世界。本は、そんな世の中を作っていくものだ。信念を持って生きれば、きっと大丈夫。君も芸術家になれるさ。
その頃、シャボン玉は、散文詩のように広がっていた。