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孤高の山と孤独のファイター

小さな命が発したのは、孤独のサインだった。

自分の専門分野には小児が抱える病気もあって、病気が子供たちの心や体の成長を妨げていることもある。

病気を抱えた子供たちは自分自身ととても良く向き合っているし、「将来〇〇になるんだ」と言って、学校や保育園に行けないながらも一生懸命勉強したりしている。

周りにはたくさんの大人たちがいるけれど、
子供たちはいつも孤独を感じていることを、
ふとした表情や言動から気付かされることがある。


まだ5歳の女の子が、
風邪をひいたことがきっかけで、
激症型心筋炎を発症して運ばれてきた。

入院後、体外式補助人工心臓を植え込んだ。
そうしなければ助からなかったからだ。

ある日のこと。
自分は明日から夏休みで、
海外登山に行くことが決まっていた。
それは『マッキンリー』という山で、
現在は『デナリ』と改名されている山だ。
デナリはアメリカ合衆国アラスカ州にある山で、アラスカ山脈、アメリカ合衆国、北アメリカ大陸の最高峰で、その最高点は6190mの高山だ。

それは5歳の子供でも、
危険な山だということを知っていた。

「明日からマッキンリーだから、しばらく会えないよ」と話すと、
真っ直ぐこちらを向いてこう言った。
「山から落ちて、VAD(バド:補助人工心臓)着けて帰ってきて!!!」と。

・・・ 言葉が出なかった。

5歳の女の子の周りには、
常に大人がいた。
でも、その子は常に孤独だったんだ。
同じ境遇の友達が必要だった。

病院での闘病生活は、
誰しも孤独を感じるのかもしれない。

その子は長い闘病生活を乗り越え、
その後アメリカで心臓移植手術を受けた。

そして今は、あの頃出来なかったこと、
走ったり友達と遊ぶことを楽しんでいる。


明日、いや今日亡くなってしまうかもしれない子供でも、病気が治るということだけじゃなく、ちゃんと大人になる過程を知ってほしいなと願っている。
生きることは素晴らしいことだから。

自分で選んだ生き方で、
その人生を歩いてほしい。


教育者になってほしかったなぁと、
お互いのその立場で話をしてみたかったなぁと
思う人がいる。
ただその人が本当に敎育者になっていたら、
出会っていなかったと思う。

だからこれでよかったのかな。


あのとき、
5歳の女の子に教えてもらったこと。
孤独のファイターを本当に孤独にしないように、時間が空けば病室を訪れ、できるだけファイターのそばにいるようにしている。

子供たちの未来を守るために、
「今」が大切なんだ。

自分たちは、応援するしかない、
ただのセコンドかもしれない。
でもそれが、
非力でもパワーになればいいなと思う。

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