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武器屋の餌付け【毎週ショートショートnote】
毎朝決まった時間に窓を開ける。
空気を入れ替え朝の爽やかな日差しを店内にいれる。
ここ数ヶ月その時間に可愛らしい来訪者が現れる。
出窓から手を伸ばし可愛らしい来訪者に朝食の残りを差し出す。
可愛い見た目に反した鋭い牙を剥き出しに美味しそうに食べている。
「よし」と自分に声を掛けるように呟き、朝のルーティンを終えて仕事に取り掛かる。
翌朝、昨日と変わらぬ太陽が昇り一日が始まった。
そろそろ頃合いかもしれないと、いつもより近くまで手を伸ばして可愛らしい来訪者に朝食の残りを直接差し出してみる。
一瞬身体が強張ったものの、特段気にする様子もなく美味しそうに食べ始めてくれた。
わずか数ヶ月でここまで距離が近付いたことに驚きと共に高揚感を感じる。
工房に戻り新作の刀を手に握る。
武者震いで刀を持つ手が小刻みに揺れる。
窓の外では警戒心を失った可愛らしい来訪者が依然として食事をとっている。
いつもと変わらぬ足取りで窓へと近付き、腕を高く上げ刀を振り落とした。
これでこの刀も完成を迎えた。
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他の方の作品はわりとほっこりした類のものが多かったので、逆張り癖が出てしまい鬼畜系に走ってしまいました。