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Arc.1-【応援メッセージ】2021年度弁理士試験論文試験を受験される方へ

 来週のこの時間、令和3年度(2021年度)弁理士試験論文式筆記試験が行われます。
 令和2年度(2020年度)弁理士試験合格者でありフィラー特許事務所の経営者である弁理士の中川真人から、受験生のみなさまへ応援メッセージをお送りします。


1 みなさんが書くのは法律答案です。

 まず、弁理士試験論文式筆記試験の答案を採点されるのは法律家の先生方です。あくまで、法律答案として皆さんの答案を採点されます。
 うっかり、「みなす」とか「参加できる」とか、日常用語のノリで法律答案として採点される答案を書かないように気をつけてください。
 「均等侵害とみなされる」といった表現に要注意です。

2 理解を伴わない文字列の再現は危険です。

 中途半端なコピペをするくらいなら、条文だけで要件判断し、解答すべきです。間違っても、判例の文言をオウムのように再現する必要など全くありません。
 必要なのは、問題提起と、妥当な答えの導出プロセスです。結論は、誰も間違えません。それでも、合格者と不合格者の差が出るのは、妥当な答えの導出プロセスがあるかないかの違いです。
 (短答的な)答えは間違えているのに合格する受験生がいるのは、その結論の導出プロセスが正しかったからです。

3 審査基準を制定法と同列に扱うことは法の不理解です。

 審査基準は特許庁の内規に過ぎません。条文に当てはめてください。
 例えば、組物の意匠であるか否かの要件判断は、意匠法8条にしたがって、
(1)同時に使用される2以上の物品であるか否か
(2)ここで、物品に該当するか否か
(3)経済産業省令で定めるものであるか否か
の3要件を判断して解答を導いてください。これらを無視して、あるいは全く言及せず、
(1)各構成物品等の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合が、同じような造形処理で表されているか否か
(2)各構成物品等により組物全体として一つのまとまった形状又は模様が表されているか否か
(3)各構成物品等の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合によって、物語性など組物全体として観念的に関連がある印象を与えるものであるか否か
といった要件判断をするようなことはやめてください。
 弁理士試験はあくまで弁理士試験であって、意匠審査官の職員登用試験でもなければ、特許庁内の業務能力試験でもありません。

条文に始まり条文に終わる

 弁理士試験は、条文に始まり、条文に終わる試験だと、口酸っぱく言われたはずです。それは、その通りです。
 私は条文の理解力で合格が判断されるという言葉通り、事例に則し、問いに答え、コピペをしない答案を3通用意して、全科目を同じ得点で合格しました。
 正確には、商標だけは2点高い得点で合格しましたが、「弁理士試験は、条文に始まり、条文に終わる試験」であることは間違いありませんでした。より正確には、「弁理士試験は、条文の理解に始まり、条文の理解に終わる試験」だと思って間違いありません。

 条文の理解が間違っていなければ、細かな表記の間違いは合否に影響を与えるはずはないはずです。もちろん、完璧なコピペで再現された答案に勝てるはずはありません。
 しかし、条文の理解が間違っていなければ、どんなに拙い説明でも、不合格とするわけにはいきません。

最後は試験委員の先生方を信じる

 特に、条文を理解し、事例に則し、問に答えようとする姿勢で勉強されてきた受験生の方は、ぜひ試験委員の先生方を信じて、あなたの条文の理解度を精一杯アピールしてきてください。
 試験委員の先生方は、予想以上にあなたの答案をじっくりと読んでくれています。5分で流し読みなど絶対にしていません。
 この受験生はどのような理解に基づきどのような導出プロセスで結論を導こうとしているのか、興味を持って読んでくれています。
 そうでなければ、私のような反骨精神バリバリの答案で合格させるわけがありません。しかも、全法域にわたって同じ点数がつくと言ったミラクルなど起こるはずがありません。

 最後は、試験委員の先生方を信じる以外にできることはありません。これまで勉強されてきた知識をフル動員して、ぜひ試験委員の先生方に「この受験生は多少荒削りだけどぜひ弁理士になってもらいたい」と思ってもらい、合格点をいただける答案を用意してあげてください。

 理解の伴わない、事例に則さない、問にも答えていない、どんな問われ方をしても判を押したような同じフレーズを再現したコピペの答案を提出して帰る必要はありません。
 コピペをしない事例に即した答案を提出するのは不安だとは思いますが、大丈夫です。

 今年もイレギュラーなスケジュールとやや奇をてらって失敗した問題が短答試験で出題されるなど不安ずくめの弁理士試験となりました。
 それでも、法の理解を伴った受験生を不合格にするような試験ではありません。

健闘を祈ります。

フィラー特許事務所では今年から新しく令和5年度向け弁理士試験対策講座を提供します

弁理士 中川真人(フィラー特許事務所@大阪梅田