【英論抄読】転倒恐怖症と運動イメージの関係 part2
▼ 文献情報 と 抄録和訳
高機能高齢者における運動イメージの欠損と転倒・転落の恐怖への影響
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景]
転倒リスクのある高齢者や転倒恐怖症(FoF)の患者は、「想像」した動作と「実行」した動作の間に乖離があることが知られている。歩行関連運動イメージパラダイムを用いて、運動実行の予測精度がFoFの発症と関連するか、FoFを持つ高齢者の転倒予知と関連するかを検討した。
[方法]
地域在住の高齢者184名のコホートにおいて、ベースライン時に速いペースでTimed Up and Go(TUG)テストを想像・実行するテストを行った。まず、TUGを行うことを想像し、それにかかる時間を推定してもらい(iTUG)、次に実際の試行を行い(aTUG)、その2施行の差を算出した。ベースラインから2年後のFoF評価までの間、前向き転倒をモニターした。
[結果]
基本情報
✓ベースライン時にFoFを発症していなかった85名中27名(31.8%)が、フォローアップ時にFoFを発症していた。
✓ベースラインでFoFを発症した99人中27人(27.2%)が転倒を経験した。iTUGとFoFの関係
✓iTUGはaTUGと比較して、FoFを発症した者、または複数回の転倒を予測した者において、有意に短い時間が観察され、TUG能力の過大評価を示唆した。
✓調整ロジスティック回帰モデルでは、ベースライン時のΔTUGが大きいほど(つまり過大評価の傾向がある)、ベースライン時にFoFがない人のFoF新規発症リスクおよびベースライン時にFoFがある人の複数回の前向き転倒リスクの上昇と関連することが示された。
[結論]
運動イメージの欠陥(すなわち身体能力の過大評価)は、運動計画の障害を反映しており、FoF患者のFoFおよび転倒再発の高リスクの新たな説明となり得る。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
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✅以前、運動イメージと転倒恐怖感に関する論文を紹介した。
前回は横断的にiTUGによる運動イメージ能力と転倒恐怖感の関係性を示したが、今回は縦断的に行われた、非常に貴重な研究である。結果も、非常に興味深い内容だ。”運動イメージと転倒恐怖感”は近年研究され始めているようで、他にも↓のような研究がある。
そこで、気になることとしては、運動イメージ能力の改善が、転倒恐怖感の改善に繋がるか、ということだ。今後の動向をチェックしていこう。
”運動イメージ”というぼんやりとした輪郭が、少しずつはっきりとし始めた。飛躍することなく、慎重に且つ着実に、”運動イメージ”という概念を臨床に応用していきたい。
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医療従事者と研究活動における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。
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