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【英論抄読】複数のスポーツ参加と動作の非対称性

▼ 文献情報 と 抄録和訳

大学生を対象としたファンクショナルムーブメントスクリーンによる非対称性と正常値の検出

Triplett CR, Dorrel BS, Symonds ML, Selland CA, Jensen DD, Poole CN. Functional Movement Screen Detected Asymmetry & Normative Values Among College-Aged Students. Int J Sports Phys Ther. 2021 Apr 1;16(2):450-458.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

[背景]
Functional Movement Screen(FMS™)は、スポーツ医学の専門家が、定められた動作中の可動性と安定性を分析し、機能不全の動作パターンを特定するためによく用いられる検査である。近年、FMS™は研究対象として注目されていますが、大学生年代の学生における規範データや非対称性については研究によって確立されていません。

[目的]
FMS™の標準的なスコアを決定し、FMS™の非対称性の頻度数を報告し、FMS™の非対称性が確認された大学生において、高校時代に参加したスポーツシーズン数および異なるスポーツの数が異なるかどうかを明らかにすることを目的とした。

[方法]
大学生100名を対象に、高校時代にどのスポーツに何シーズン参加したかについて、FMS™とそれに付随するアンケートを実施した。FMSの総スコアが評価され、FMSのスクリーンで非対称性の有無が確認された。FMS™の非対称性は、身体の右と左の動きを評価するいずれかの画面で、スコアが不均等になることと定義された。

[データ分析]
データ分析には、記述統計学、ピアソン相関を利用し、プレーしたスポーツの数とスポーツシーズンの数の関係を調査した。Shapiro Wilk 検定で正規性を、Mann Whitney U 検定でスポーツ実施回数の群間差を検討した。すべての分析は SPSS ソフトウェアを使用して行われた。

[結果]
スポーツシーズン数およびスポーツ回数とFMS™総スコアには、統計的に有意な相関が認められた(r = 0.286, r2 = 0.08, p < 0.01)。さらに、FMS™で非対称性が検出されなかった参加者は、非対称性を呈した同世代の参加者に比べて、有意に多くのシーズン、多くのスポーツを行った(U = 946.5, z = -1.98, p = 0.047 )。実際のp値を括弧内に記入して終了。

[結論]
高校時代に複数のスポーツ、複数のスポーツシーズンに参加することは、FMS™の総得点が高いことと関連していた。結果は、複数のスポーツおよび複数のスポーツシーズンに参加することは、より少ない非対称性と関連し、その後の傷害リスクを減少させる可能性があることを示唆している

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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”FMS”に関連した研究は非常に多い。特に、成長期~高齢期といった非常に幅広い範囲で妥当性が検討されているスポーツ障害に対するスクリーニング検査は、他にないように思う。その故、FMSに関連した論文紹介が多くなってしまっていることを許していただきたい。

今回の結果はいわゆる、スポーツ早期専門化、とも関連した内容かと思う。
スポーツ早期専門家、に関する論文では、様々な報告がされている。その一部を紹介する。

Moesch K, Elbe AM, Hauge ML, Wikman JM. Late specialization: the key to success in centimeters, grams, or seconds (cgs) sports. Scand J Med Sci Sports. 2011 Dec;21(6):e282-90.
[概要]
エリートスポーツ界では、Ericssonらが提案するように若いアスリートが早期に専門化する必要があるのか、それともCôtéらが提案する、幼少期に様々なスポーツ経験を積み、青年期以降に専門化するという早期多様化の道を辿る方が有益なのかということが議論の的になっている。本研究では、デンマークのcgsスポーツ(センチメートル、グラム、秒単位で計測されるスポーツ)のエリート148名と準エリート95名をサンプルとし、キャリアの初期段階における累積練習時間、他のスポーツへの関与、キャリア形成に関する集団差を調査するとともに、これらの変数がエリート集団への所属を予測するか否かを決定するものであった。その結果、エリートアスリートは、専門性を高める時期が遅く、幼少期のトレーニング量が少ないことが明らかになった。しかし、エリートアスリートは、エリートに近い仲間よりも、青年期後期にトレーニング体制を強化することが示された。他のスポーツへの関与は、グループ間で差がなく、成功を予測するものでもない。このことから、10代半ばの練習体制に関する要因が、CGSスポーツにおける国際的な成功に重要であると結論づけられる。今後の研究では、因果関係を推論できるような縦断的なデザインを採用する必要がある。

この論争は、今でも続いているものと思われる。また、各競技によっても、異なる見解を示していることがある。

ただ、このスポーツ早期専門化は、特に小学生までを指すことが多いようである。今回の論文の面白いところは、高校生の段階においても、複数のスポーツに参加することは、動作の機能不全を防ぐ可能性がある、というところである。もちろん、今回の論文はFMSのみ測定しているため、実際のスポーツ障害の頻度や、スポーツそのもののパフォーマンスはどうなのか、というところは分からない。
しかし、
・どの時期においてもスポーツの専門化は動作の機能不全や非対称性を生じるリスクがあること
・それを評価する方法としてFMSが用いられていること
この2つのことは知っておく必要があるだろう。

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