【英論抄読】複数のスポーツ参加と動作の非対称性
▼ 文献情報 と 抄録和訳
大学生を対象としたファンクショナルムーブメントスクリーンによる非対称性と正常値の検出
[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar
[背景]
Functional Movement Screen(FMS™)は、スポーツ医学の専門家が、定められた動作中の可動性と安定性を分析し、機能不全の動作パターンを特定するためによく用いられる検査である。近年、FMS™は研究対象として注目されていますが、大学生年代の学生における規範データや非対称性については研究によって確立されていません。
[目的]
FMS™の標準的なスコアを決定し、FMS™の非対称性の頻度数を報告し、FMS™の非対称性が確認された大学生において、高校時代に参加したスポーツシーズン数および異なるスポーツの数が異なるかどうかを明らかにすることを目的とした。
[方法]
大学生100名を対象に、高校時代にどのスポーツに何シーズン参加したかについて、FMS™とそれに付随するアンケートを実施した。FMSの総スコアが評価され、FMSのスクリーンで非対称性の有無が確認された。FMS™の非対称性は、身体の右と左の動きを評価するいずれかの画面で、スコアが不均等になることと定義された。
[データ分析]
データ分析には、記述統計学、ピアソン相関を利用し、プレーしたスポーツの数とスポーツシーズンの数の関係を調査した。Shapiro Wilk 検定で正規性を、Mann Whitney U 検定でスポーツ実施回数の群間差を検討した。すべての分析は SPSS ソフトウェアを使用して行われた。
[結果]
スポーツシーズン数およびスポーツ回数とFMS™総スコアには、統計的に有意な相関が認められた(r = 0.286, r2 = 0.08, p < 0.01)。さらに、FMS™で非対称性が検出されなかった参加者は、非対称性を呈した同世代の参加者に比べて、有意に多くのシーズン、多くのスポーツを行った(U = 946.5, z = -1.98, p = 0.047 )。実際のp値を括弧内に記入して終了。
[結論]
高校時代に複数のスポーツ、複数のスポーツシーズンに参加することは、FMS™の総得点が高いことと関連していた。結果は、複数のスポーツおよび複数のスポーツシーズンに参加することは、より少ない非対称性と関連し、その後の傷害リスクを減少させる可能性があることを示唆している。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
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”FMS”に関連した研究は非常に多い。特に、成長期~高齢期といった非常に幅広い範囲で妥当性が検討されているスポーツ障害に対するスクリーニング検査は、他にないように思う。その故、FMSに関連した論文紹介が多くなってしまっていることを許していただきたい。
今回の結果はいわゆる、スポーツ早期専門化、とも関連した内容かと思う。
スポーツ早期専門家、に関する論文では、様々な報告がされている。その一部を紹介する。
この論争は、今でも続いているものと思われる。また、各競技によっても、異なる見解を示していることがある。
ただ、このスポーツ早期専門化は、特に小学生までを指すことが多いようである。今回の論文の面白いところは、高校生の段階においても、複数のスポーツに参加することは、動作の機能不全を防ぐ可能性がある、というところである。もちろん、今回の論文はFMSのみ測定しているため、実際のスポーツ障害の頻度や、スポーツそのもののパフォーマンスはどうなのか、というところは分からない。
しかし、
・どの時期においてもスポーツの専門化は動作の機能不全や非対称性を生じるリスクがあること
・それを評価する方法としてFMSが用いられていること
この2つのことは知っておく必要があるだろう。
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