ウェアラブルデバイスで転倒者を予測する
▼ 文献情報 と 抄録和訳
ウェアラブルデバイスで測定した時空間的な歩行特性に基づいて転倒者を特定するための神経学的患者の分類
Zhou Y, et al.: Classification of Neurological Patients to Identify Fallers Based on Spatial-Temporal Gait Characteristics Measured by a Wearable Device, Sensors (Basel) (IF: 4.02; Q1). 2020 Jul 23;20(15):4098.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar
[目的] 神経症患者は、転倒の原因となる重度の歩行障害を持つことがある。歩行異常から転倒を予測することは、臨床医や患者が転倒リスクを軽減するのに役立つと考えられる。本研究の目的は、神経疾患患者の異種集団を対象に、ウェアラブルデバイスで測定した空間的・時間的な歩行特性から転倒状態を予測することであった。
[方法] 参加者(n = 384,年齢49~80歳)は、大学病院の神経科病棟で募集した。参加者は、快適な速度で20mを歩き(シングルタスク:ST)、運動成分を含むデュアルタスク(DT1)と認知成分を含むデュアルタスク(DT2)を実行しながら歩いた。腰と両足首に装着したウェアラブルセンサーにより、27の空間的・時間的歩行変数を測定した。そして、PLS-DA(Partial least square discriminant analysis)を用いて、転倒者と非転倒者を分類した。
[結果] PLS-DAによる分類モデルは、3つの歩行課題(ST,DT1,DT2)すべてにおいて良好な性能を示し、分類性能の受信者動作特性曲線下面積(AUC)は、それぞれ0.7、0.6、0.7であった。また、転倒者は非転倒者と比べて、その歩行パターンが異なっていた。
[結論] 本研究の結果は、神経症患者の転倒リスクに関連した歩行障害についての理解を深め、個々の患者に合わせた転倒予防のための介入方法の設計に役立つと考えられる。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
こうしたウェアラブルセンサーを、療法士が行うルーティンでの評価として、次第に取り入れていければ良いと思う。
10MWT、TUGなどのカットオフ値は療法士間では浸透している知識であり、「〇〇秒以内に歩ければ転倒のリスクが少ないと言われていますよ~」と患者に説明する療法士も多いと思う。しかし、そのカットオフ値以内に歩くためにはどうすればいいのか、これらの検査だけでは分からない。正直、「評価のための評価」になってしまっている場面も少なくないと思う。
その点、こうした研究が進み、転倒者、非転倒者の「質的な基準」ができれば、その基準をクリアするために何をすればいいのかが分かり、「介入のための評価」となり得るのではないか、と思う。