"スロートレーニング”によりTKA後の筋力低下を予防する
▼ 文献情報 と 抄録和訳
変形性膝関節症患者における人工膝関節全置換術後の初期の大腿四頭筋の筋力低下に対する術前の低速運動によるトレーニングの効果:傾向スコアマッチによるレトロスペクティブ研究
Y Kubo, S Sugiyama, R Takachu, et al.: Effects of preoperative low-intensity training with slow movement on early quadriceps weakness after total knee arthroplasty in patients with knee osteoarthritis: a retrospective propensity score-matched study. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2020;12(1):72.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar
[背景] 人工膝関節全置換術(TKA)後の重度かつ早期の大腿四頭筋脱力(QW)は、外科的外傷による急性炎症や止血帯による虚血再灌流(IR)傷害が原因であり、特に問題となりうる。我々が止血帯起因のIR傷害に注目したのは、虚血や運動のプレコンディショニングによって予防可能であることが示されているからである。ゆっくりとした動きで緊張性の力を発生させる低強度レジスタンス運動(LST)は、虚血や運動のプレコンディショニングと共通点がある。本研究では、TKA患者における早期QWのためのプレハビリテーションとしての術前LSTプログラムの有効性を、傾向スコアマッチング解析を用いて明らかにすることを目的とした。
[方法] この単施設のレトロスペクティブな観察研究では、2015年8月から2017年1月に片側TKAを受ける予定だった変形性膝関節症患者(n=277)のデータを用いた。検査を実施できないためにアウトカムデータが欠損している者は除外した。LST群には、手術前の3カ月間、LSTと有酸素運動(LSTセッション)を7回以上行った参加者を含めた。対照群には、術前3カ月間にLSTセッションを8回未満、一般的な軽い運動を行った者、または運動を行わなかった者を含めた。術前および術後4日目に、膝囲、大腿部体積、大腿四頭筋力テスト(QST)およびタイムドアップ&ゴーテスト(TUG)時の膝の痛み、大腿四頭筋力、TUGを測定した。膝の腫れ、大腿部の腫れ、Δ膝の痛み、QW、ΔTUGは、術前と術後の測定値を比較して決定した。
本研究におけるLST方法
抵抗運動の種類:スクワット、フォワードランジ、座位での両側膝関節伸展方法:ゆっくりとした動作で緊張性の力を発生させながら、10回×3セットとして実施した(3秒間のエキセントリック動作,5秒間のアイソメトリック動作,3秒間のコンセントリック動作を,繰り返しの間に休まずに行った)。レジスタンス運動の項目間およびセット間の休息時間は60秒とした。
[結果] 傾向スコアマッチングにより、ほぼバランスのとれた41組のマッチドペアが作成された。LST群は対照群に比べて、膝と大腿部の腫れ、QW、ΔTUGが有意に低かった(すべて、p < 0.05)。QSTおよびTUG時のΔ膝の痛みについては、両群間に有意な差は認められなかった(いずれも、p>0.05)。
[結論] 本研究では、TKA直後の膝の腫れ、大腿部の腫れ、QW、歩行障害に対する術前LSTプログラムの有益な効果が示された。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
まず、厚生労働省のホームページにも”スロートレーニング”として方法や効果が紹介されているので、確認して頂きたい。
特に高齢者に対して筋力増強を行うのであれば、”スロートレーニング”を利用しない手はないだろう。ただ、当然であるが筋トレもスローに行った方が疲れるし、上記の記事で示されているように”パンプアップ”しやすい。低負荷で行う場合もスロートレーニングを実施する際には過負荷に注意する必要はあるだろう。
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