イメージング能力の低い人には道具を持つことによる触覚入力が有効?
▼ 文献情報 と 抄録和訳
体性感覚入力の運動イメージへの影響は運動イメージ能力に依存する
Nobuaki M, Takahiro Y, Hiroki Nakata, et al.: The effect of somatosensory input on motor imagery depends upon motor imagery capability, Front Psychol6, 2015; 104.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[目的] 本研究では、運動イメージ能力と、テニスラケットを握ったときの触覚入力がフォアハンドおよびバックハンドのスイングの運動イメージに与える影響との関係を検討した。
[方法] 17人のテニスプレーヤーが、フォアハンドグリップ、バックハンドグリップ、または何も持たずにフォアハンドとバックハンドのスイングをイメージした。その効果は、運動イメージに利用した時間(メンタルクロノメトリー)で評価した。
[結果] いずれの場合も、スイングをイメージする時間は、実際のスイングに要する時間よりも長くなった。バックハンドのスイングをイメージする際、バックハンドグリップでラケットを握ると、フォアハンドグリップで握った場合や何も持たずに握った場合に比べて、イメージする時間が短くなった(p<0.05)。一方、バックハンドのグリップでラケットを握ると、フォアハンドのスイングのイメージ時間が長くなる傾向があった。何も持たない状態でより長い時間を要した選手(イメージング能力が低い)では、一致したバックハンドグリップの効果が大きかった(r = 0.67, p < 0.01)。しかし、フォアハンドのグリップを一致させても、フォアハンドのスイングの運動イメージは向上しなかった。
[結論] これらの結果から、バックハンドのスイングの運動イメージは、グリップが一致すると向上し、一致しないと悪化することが示唆された。今回の研究では、参加者のうち15人がバックハンドに比べてフォアハンドのスイングを好んでいたため、参加者はフォアハンドのスイングに慣れていたと考えられる。そのため、ラケットを持っていなくても、(慣れ親しんだ)フォアハンドのスイングを鮮明に想像することができたのではないかと考えられる。このように、道具を持つことによる触覚入力は、特にイメージング能力の低い人にとって、なじみの薄い動作の運動イメージの鮮明さを向上させるのではないかと考えられる。今後は、道具を持つことに伴う触覚入力の効果が、動作の慣れやパフォーマンスレベルに依存するかどうかを明らかにすることが重要であると考えられる。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
臨床において、イメージを想起させやすくするために「鏡をみる」であったり「映像をみる」ことはあるが、「道具をもつ」という選択肢は意外にないのではないだろうか。臨床のちょっとしたヒントとなるだろう。