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透析患者の転倒予防にはまず血圧管理をしっかりと!

▼ 文献情報 と 抄録和訳

血液透析患者における転倒の運動療法的予測因子としての虚弱性、身体機能および心血管機能の相対的重要性:前向きコホート研究

Zanotto T, Mercer TH, van der Linden ML, et al.: The relative importance of frailty, physical and cardiovascular function as exercise-modifiable predictors of falls in haemodialysis patients: a prospective cohort study, BMC Nephrol (IF: 1.913; Q2). 2020 Mar 14;21(1):99.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 血液透析(HD)を受けているステージ5の慢性腎臓病(CKD-5)患者は、事故による転倒のリスクが高い。これまでの研究で、フレイル(虚弱)がこの臨床集団における転倒リスクの増加の主な要因の一つであることが示されている。しかし、血液透析患者には、圧反射障害や起立性の血圧調節障害などの心血管機能の異常が見られることが多く、これらも転倒の原因となっている可能性があります。そこで本研究では、HD患者の転倒の予測因子として、虚弱性と心血管機能の相対的な重要性を検討することを目的とした。

[方法] 2015年10月から2018年8月の間に実施されたこの前向きコホート研究には、3つの腎疾患ユニットからHDを受けている有病のCKD-5患者93人がリクルートされた。ベースラインでは、Friedのフレイル表現型を用いてフレイル状態を評価し、身体機能はTimed up and go(TUG)、5反復椅子座位から立位(CSTS-5)、客観的に測定された身体活動、および最大随意等尺性筋力によって評価した。また、安静時および60°ヘッドアップティルトテスト(HUT-60°)に対する圧反射および血行動態の機能を、タスクフォースモニターを用いて評価した。転倒回数は、12ヵ月の追跡調査期間中、月に1回記録した。

[結果] 単変量負の二項回帰分析では、虚弱(RR:4.10、95%CI:1.60-10.51、p=0.003)およびその他の身体機能の決定要因は、転倒回数の増加と関連していた。しかし、多変量解析では、圧反射機能の低下(RR: 0.96, 95%CI: 0.94-0.99, p = 0.004)およびHUT-60°までの起立性血圧低下(RR: 0.93, 95%CI: 0.87-0.99, p = 0.033)のみが転倒数の増加と有意に関連していた。調査期間中に80件の転倒が記録され、その大部分(41.3%)は参加者から報告されためまいの症状によって引き起こされていた。

[結論] 今回の前向き研究では、CKD-5のHD患者の転倒を予測する上で、BPの短期的な調節に関与する心血管機構が虚弱性よりも相対的に重要であることが示された。転倒の多くは、自己申告によるめまい症状の優位性からも明らかなように、心血管の調節障害が関与していると思われた。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

当然、HD患者の血圧管理は大事だが「転倒予防」を意識して管理はしていなかった。「転倒予防」としての血圧管理を考えるなら、リハビリ中のリスク管理のためだけではなく、退院後どのように自己管理してして頂くか?という視点で指導・教育していくことが重要になるだろう。

少しでも参考になりましたら、サポートして頂ければ幸いです。