【英論抄読】転倒恐怖感を軽減するための理学療法
▼ 文献情報 と 抄録和訳
神経疾患患者における転倒の恐怖を軽減するための理学療法介入の有効性-システマティックレビューとメタアナリシス
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[目的]
神経疾患を持つ人の転倒恐怖症(FOF)を軽減するための理学療法介入の有効性をまとめること。
[データソース]
PubMed,Physiotherapy Evidence Database,Scopus,Web of Science,PsycINFO,Cumulative Index to Nursing and Allied Health,SportDiscussを創刊から2019年12月まで検索対象とした。
[研究の選択]
神経疾患を有する成人のFOFを減少させることを主目的または副目的とする臨床試験を選択した。
[データ抽出]
候補となる論文を適格性審査し、独立した2名の研究者がデータを抽出した。バイアスのリスクは、ランダム化比較試験についてはCochrane Risk of Bias tool、事前事後研究についてはNational Institutes of Health Quality Assessment Toolにより評価した。メタアナリシスは、臨床的特徴が類似している試験間で実施した。GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)により、エビデンスの質を総合的に評価した。
[結果]
61試験、3954人がレビューに含まれ、53試験、3524人がメタアナリシスに含まれた。含まれる研究は、一般的に、低から高バイアスリスクで示された。パーキンソン病(PD)患者のFOFの減少において、歩行訓練とバランス訓練の併用は、歩行訓練単独と比較して有意に有効であった(平均差[MD]=11.80;95%CI、8.22~15.38;P<0.001)。多発性硬化症(MS)において、ホームベースの運動および余暇の運動は、通常のケアよりもFOFの減少において有意な改善を示した(MD=15.27;95%CI、6.15-24.38;P=0.001)。脳卒中および脊髄損傷者では、統計的に有意な群間差は報告されていない。このレビューで示されたエビデンスの全体的な質は、GRADEアプローチによる評価では、非常に低いものから中程度のものであった。
[結論]
下肢歩行訓練とバランス訓練を併用することは、PD患者のFOFの減少に効果的である。また、MS患者では、自宅での運動や余暇の運動が効果的である。しかし、対象とした研究にはいくつかの限界があるため、神経疾患を有する個人におけるFOFへの介入の有効性を検討するためには、さらなる研究が必要である。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
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PD患者とMS患者で、転倒恐怖感の軽減に効果的な理学療法の内容が若干異なることが面白い。
転倒恐怖感を軽減するための介入に関しては、「Cochrane」でもレビューされている。
このような転倒恐怖感に関する研究でいつも感じることが、「それは適切な転倒恐怖感であるのか」ということだ。つまり、その方のバランス機能等を考慮した上で、適量の転倒恐怖感なのであれば、それは問題ないだろう。というより、適量の転倒恐怖感は、むしろ必要な場合もあると思われる。そしてこの、「適量の転倒恐怖感」というのが、現状あまり解明されていないように思う。バランス機能の関連させた転倒恐怖感の基準が分かれば、理学療法の質も高まることは確かだ。
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医療従事者と研究活動における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。
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