テレビ放映された傷害場面の映像から行う運動学的分析
▼ 文献情報 と 抄録和訳
バドミントンの後方ステップ時に発生した足首の捻挫:テレビ放映された傷害場面の症例報告
Daniel T P Fong, et al.: A lateral ankle sprain during a lateral backward step in badminton:A case report of a televised injury incident, J Sport Health Sci (IF: 5.2; Q1). 2021 Mar 17;S2095-2546(21)00032-6.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景] 本研究では、テレビ放映されたバドミントンの試合中に発生した急性の足関節外側捻挫の運動学的分析を行った。この損傷の運動学は、公表されている文献に記載されている19例の既報のものと比較した。
[方法] テレビ中継されたバドミントンの試合中に発生した急性外側足関節捻挫の4つのカメラ映像を同期させ、3次元アニメーションソフトでレンダリングした。仮想環境上に寸法が既知のバドミントンコートを構築し,負傷した選手の身長に合わせてスケールアップした骨格モデルを用いて,骨格のマッチングを行った。この急性傷害の足関節の角度と角速度のプロファイルを,公表されている文献に掲載されている既報の19例から得られた知見をまとめたものと比較した。
[結果] 足部接地時、足関節は2° everted、33° plantarflexed、18° internal rotatedであった。最大inversion角度は114°、最大internal rotation角度は69°で、それぞれ足部打鍵後0.24秒、0.20秒であった。足を踏み入れた後、足関節は初期位置である足底屈から背屈へと移動し、足底屈33°から背屈53°(範囲=86°)となった。足部打撲後0.12秒での最大inversion角速度は1262°/s、背屈角速度は961°/s、内転角速度は677°/sであった。
[結論] バドミントンでは、足関節を底屈させ、内旋させたフォアフット着地姿勢が、急性の足関節外側捻挫傷害を引き起こす可能性がある。バドミントンにおける外側足関節捻挫の予防は、フォアフット着地時の足関節角度の制御と安定性、特に選手が横方向と後方へのステップを組み合わせて行う場合に焦点を当てるべきである。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
こんな解析方法もあるとは知らなかった。今までの研究は、動作解析室で測定することが多いが、当然、実際のスポーツ場面とは状況が異なる。確かに測定の信頼性はある程度担保されるが、それって本当に実際のスポーツ現場で活かせるデータなの?と疑問に思っていた。こうした解析が普及し、且つ簡便に行えるようになれば、スポーツ現場での応用だけでなく、様々な場面で、より「リアル」な傷害時の運動学的特徴が分かるようになるだろう。