#5「流行り」のまちづくり
先日、元同僚と久しぶりに再会したときの会話の中で
私が違和感を感じた際の話です.
現在、転職活動中の私にとって普段から各企業への応募書類には
志望動機を記載する必要があります. つまりは、自己分析の上、「なぜ私は〇〇社を志望するのか」というストーリーを決められた文字数で表現することが求められます. 一見すると私の経歴は様々な点があちらこちらに飛ぶように見えるけれども、本人として共通しているキーワードがあります.
それは、
「場」の提供に尽力すること.
特に、ランドスケープデザインを学び始めてから、日常的に「場」とは何であるかということを考えています. この感覚を少しでも誰かと共有できたらなんて楽しい会話になるのだろうと、自分の目と感性で感じた、感動した場や風景の話を常にストックしています.
そんな私にとって、現代の視覚的優位な消費行動や、世間でもてはやされているまちづくり、というトレンドの消費行動が「流行」していることに
違和感を感じています. それを強く感じた会話がこちら ↓
A元同僚: 就活の方はどう~?
私: まあぼちぼち~自分と相性の良い場所が見つかればいいなぁ
A元同僚: 最近は、〇〇でもまちづくりが流行ってるからその辺も見てみたら?私の知り合いも〇〇で仕事をみつけたみたいだよ~私も誘われたけど。あの辺は、〇〇企業が運営しているから絶対安心だよ!
B元同僚: そうそう!あの辺だと、〇〇が美味しくて新しいお店があっていいんだって!やっぱり不動産系は強いよね~インスタにも載ってたよ!
一見すると、何でもない会話だと思います.
友人が知っている情報を提供している.
このご時世、仕事の有無や企業母体の安定さは重要でしょう.
でも、この会話の中で感じた私の違和感こそ、自分の考えるランドスケープデザインを通じた場の提供とは何だろうか?
と改める考えるきっかけを与えてくれ、
自分の方向性をさらに明確にすることができました.
私の理想とする「場」とは、誰にとっても「安心できる場」を提供したい.
これが、最も自分自身の信念ともいえる Core Valueだと思います.
では、「安心できる場」とはどういう空間を指すのか、
自分なりに深堀りしてみました.
●前提●
ランドスケープデザインとは、屋外空間にあるオープンスペースにおいて、私有地、公有地問わずして非建ぺい空間を対象とします. デザインプロセスにおいては、土木や建築、環境保全といった隣接する諸分野と連携し、その対象地が内包する歴史的背景、社会的背景を文脈から読み取り、機能性、デザイン性をもって、生活空間に質というエネルギーを与えるデザイン行為.
デザインは植物を代表とした自然界の要素(植物、水、大地、風、光、影など)を活用するのがランドスケープデザインならではといえる.
<私の考える誰にとっても安心できる場>
ある人にとっては、その場所は、誰にも邪魔されることなく自由に訪れることができて、沢山の緑に囲まれていて、時には自分の背丈よりもずいぶん大きい木々の下で、楽な姿勢で座れるベンチに座って、本を片手にお日様の柔らかな光を浴びながら、時間を忘れて本に集中できる空間. また、ある人にとっては、散歩の途中の経路に必ずその場所が入っていて腰を下ろしたり、街の人々が行き交うのをぼんやり眺めながらのんびり過ごせる立ち寄り空間ともいえるでしょうか. 恐らく、お酒好きの人にとって最も分かりやすい例えだと、「なぜか行きたくなる誰にも教えたくない馴染みのお店」的な空間ともいえるかもしれません.
つまり、
私の考える誰にとっても「安心できる場」とは、
人々の様々なニーズを受け止めることができる懐が大きい空間.
だと思います.
だからこそ、今回の私の感じた違和感とは、
地方創生事業、新しい働き方改革の一環、官民共同事業、社会的インフラストラクチュアの構築といった、今の日本が抱える社会的課題の解決を
経済効率の観点を軸に導き出す手法に対して抱いている感情であると思いました. 一辺倒にビジネスチャンスとして全面に打ち出していることに対して、それは安易にまちづくりとは言えないと私は思います.
そのビジネスが創り出す表面的な場は永続的に、健康的に、維持されることはなく、常に「消費され」、だんだんと疲弊し、
いつしか忘れ去られてしまう. 「消費する側」にも自覚をもって
その地域と関わる責任があると思います.
改めて、
A元同僚: 就活の方はどう~?
私: まあぼちぼち~自分と相性の良い場所が見つかればいいなぁ
A元同僚: 最近は、〇〇でもまちづくりが流行ってるからその辺も見てみたら?私の知り合いも〇〇で仕事をみつけたみたいだよ~私も誘われたけど。あの辺は、〇〇企業が運営しているから絶対安心だよ!
B元同僚: そうそう!あの辺だと、〇〇が美味しくて新しいお店があっていいんだって!やっぱり不動産系は強いよね~インスタにも載ってたよ!
現在、日本でもPark-PFI制度を活用する公園の維持、運営の形も変わりつつあります. 商業施設の誘致によって、その土地ならではの観光資源を生み出すのに成功した地方自治体もあり、経済効果のもたらす恩恵が多いのも事実です.
ただ、今回感じた違和感をいつか解消できるような仕事、仲間を見つけたいという思いと共に、自分の大切な人たちにとって「安心できる場」を自分の感性とデザインをもって創り出せるようになりたい.
そう強く思わざるを得ない体験でした.
<まとめ>
もしこんな私の拙い文章を読んでくださる懐が大きい読者の皆さんの中で、「誰にもいってない大切な場所」があったらこそっと教えてください.
ランドスケープデザインを学ぶ上で最も大切なのは、人の想いを次世代に繋ぐことなので、いろんな方々の大切な場所を知り、守りたいと思います.
Thanks to all
Photo by Smith Major, Federico Enni, and Srecko Skrobic on Unsplash
いつも同じ空の下で.
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Nagisa