いまさら真面目に読む『美味しんぼ』各話感想 第25話「肉の旨味」
「初期の『美味しんぼ』からしか得られない栄養素がある…そんなSNSの噂を検証するべく、特派員(私)はジャングルへ向かった…
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■ あらすじ
肉の調理に関するテクニカルなお話
今回はあまりドラマ性がなく、肉の旨味を引き出すテクニックやら技法の話がメインなのでサラリといきます。
おせんべいの話で山岡たちが頑張って引き合わせた三谷・三村カップルからのお礼ということで、いま評判のステーキハウスで食事をすることになった文化部若手一行。その店は設えも出てくる料理も、ステーキハウスというよりはフレンチのような洒落た感じで、前菜の盛り合わせなども出てくるので若い客に人気を博している。そしてシェフもイケメン(設定)とくればとりわけ女性に"効く"というわけだ。肉も手抜かりなく、「日本一美味しい」と評判の大南牧場の牛を仕入れている。まさに完璧な店…のはずが、肝心要のステーキの味については山岡・栗田&三谷の若旦那も納得がいっていない様子。
そんなところ、洒落た店にはおよそ似つかわしくないスゲーデケーオヤジが来店してスゲーデケー声でスゲーデケーステーキを注文する。300g×2て。しかもシェフご自慢のソースや前菜等はいらんときた。
そのスゲーデケーオヤジは一口ステーキを食べるとオイオイ大声で泣き出してしまう。テンションの高低差の生み出す乱気流に周りの人間は飲み込まれてしまい脱出不可能で、店じゅうの注目を集めてしまっている。スゲーデケーオヤジはなんで泣いているのかというと、ステーキが不味くて泣いているというのだ。「まずいんだよ。このステーキがまずいんだよ」「まずくって、いくら何でもこれはひどすぎる」と泣きじゃくる。お客様…もう少しこう、手心というか…言い方?
自慢の前菜やソースもいらないと言われた上に、メインのステーキについても人目も憚らず「まずい」と大声で泣き喚かれてはたまらず、いたくプライドを傷つけられたシェフは当然キレる。
「あんたは何も味なんか分かっちゃいない、うちの肉はそこらのステーキ屋とは違うんだ」「うちの店の肉は大南牧場の牛の肉だ、日本一の味と評価されている肉なんだよ」とまくしたてるがスゲーデケーオヤジは伝家の宝刀を抜く。
「わかっている!!私が大南牧場の当主大南重吉だ。この肉は私が育てた牛のものだ!!」伝家の宝刀=生産者最強の法則。日本一の牧場の当主に(当主って言い方するのか?牧場?)こう言われてしまっては立つ瀬がない。まさか生産者に、しかも仕入元にさらなる文句を言えるはずもない。シェフは日サロで焼いたとおぼしき黒い顔を青白くさせてしょんぼりするしかない。
女性客の前で愛想を振りまいていたさっきまでの夢の時間が嘘のようだな、シェフ。
それでも三谷の若旦那が(なぜか)シェフに同情して、相談に乗ってやろうという。若旦那としては、前菜には感動していたらしく、また、ステーキの名人といわれる伝助老人という料理人も見知っていたため手を貸したくなったのだそうな。
伝助老人のステーキの焼き方を習得し、大南さんを招待して味を見てもらうことになった。
果たして、シェフのステーキは大南さんのお眼鏡にかない、これからも肉を卸してもらえることになった。しかもこの笑顔である。
ぶっきらぼうな職人には一度気に入られてしまえばチョロいという美味しんぼ第◯法則にのっとったキャラであった。
◆ たぶんナレーションは栗田さん
花村さんと「おせんべ屋さん」という言い方、めちゃくちゃキュートできゅんきゅんする。おせんべいでもせんべいでもなく、おせんべ。はぁ尊い。
◆ ほんとうにフランスで修行していたのか…?
三谷の若旦那が相談に乗った際にシェフが言うには、彼はフランスで10年修行していて、当地ではステーキとジャガイモは日常的なものなので「肉さえ良ければあとは適当に焼くだけでいいと思い込んで、本気で勉強しなかった…」ということだがそんなことはありえないと思うのだが。
肉に火を入れる係には専門の職人を雇うところもあり、しかも厨房内での序列はシェフに次ぐほどに高いのだ。ときにはスー・シェフ(副料理長)より高い。それを10年修行していて知らないということはありえないのではないか、と思う。
フレンチではメインディッシュは基本肉。魚や他のものでメインは張れないという考えで、その肉に手をいれる人間は自ずと地位が高くなる。フランスでの修行は、山岡も前菜をほめていることからしていたのだろうが、肉に関する知識がこれでは…やっぱ日サロに行ってるやつは信用ならねえな。
◆ あまりにもありえないシェフのステーキの焼き方
・ひく油はサラダ油
・無意味フランベ
・レアは生のことだと思っている
もうこいつから肉を取り上げろ!スゲーデケーオヤジ大南さんが泣いたのもむべなるかな。なぜわざわざサラダ油を使うのか、肉を仕入れてトリミングした際に出る牛脂は捨ててるのか?なんというアホだ。
フランベというのは仕上げにするもので調理過程でするものではない。肉を片面焼いてひっくり返すときにやってしまっては、フランベの香気が飛んでしまい無意味になる。レアは生という意味ではないということを初めて知る10年フランスで修行したシェフとは一体…
イケメン+おしゃれ+フランスという『美味しんぼ』がこき下ろす三大要素が揃ってしまったのでとことん無能にさせられたシェフ。三谷の若旦那の道場はそうしたメタ要素があったのかも…?
今回はここまで!
・ 今さら読む『美味しんぼ』
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・私の本業は…
私の本業は観光促進、移動交通におけるバリアフリーを目的とする組織のイチ職員で、食い物のことに関しては偉そうに話せる立場にないんです。
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