白塗り

初めて会ったの高校生。ライブハウスで彼は真っ白な顔で首を振っていた。地獄から調達したギターで超絶テクニックを見せびらかして。

衝撃が走った。その日から授業のかわりに入ってくるのは地獄からの叫びとこれ以上歪みようがないギターの音色。爽やかな朝に全く相応しくないアラーム音で1日が始まる。

2日に1回ハリーポッターみたいに限られた人にしか見えない地獄行きの列車が発車する。

今日は何地獄かな〜ワクワク♪♪初めの2.3回までは次の日筋肉痛で首が動かなかった。これぞ地獄からの制裁!痛すぎるけどこの痛みこそファンの証。

ファン歴5年の私ももお大学生。そろそろ就活。でも彼らのせいで私も地獄を見たくなり、バンド付けの日々。対バンすることを夢見て走り続けた。が、夢叶わず、彼らはついに現世に降り立つことを許されなくなってしまったのだ。

対バンして、あわよくば嫁にしてもらって地獄で幸せに暮らそうと思ってたのに、、

あれから7年。結局社会人をしながら楽しくバンドをやっている。独身やけど音楽仲間もいっぱいいて現世に残るのも幸せやな〜と日々感じていた。

ある日、会社の同期の結婚式に行った。同期(女子)はとても幸せそうで、こっちまで幸せな気持ちになり、結婚ていいかも。とちょっと思い出した。

旦那さんめっちゃ優しそう。どこで出会ったんやろ。いつもアホな話しかしてないから全然知らんかった。

プロフィールムービーが流れた。まず旦那さん。かわいい赤ちゃん。お姉ちゃんと歌ってる写真。学生時代の仲間とバンドをやっている写真。この人もバンドマンやったんや〜と思ってみていると、あれ、あれあれあれ!?!?

次に流れた映像は長年愛した地獄バンドだった。2人は化粧してないし、ん?てことは旦那さん!?!?

私が結構本気で愛した彼が掴んだ幸せは、太陽の下でキラキラ輝く眩しい笑顔の同期でしたとさ。めでたしめでたし。早く幸せになろーっと。


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