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Qombo リリースです!
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【Qombo】
Style:Westside IPA
ABV:6.0%
毎回異なる2つのホップをチョイスし、仕込みの日にフレッシュバッグを開封してつくるIPA。Rakau,Simcoeバージョンのこのバッチは、オレンジやパイナップルのような甘さと爽快さを感じられる仕上がりになっています。
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毎回2種類のホップをチョイスして、仕込みの日にフレッシュバッグを開封して仕込むIPAのQomboが出来上がりました。
言うまでもないですが、ビールつくりに欠かせない原料の一つでもあるホップ。IPAなどのホップのキャラクターが重要なスタイルが増えてきたのもあり、もはや麦酒というより鞠花酒と表記した方がしっくりくるようなビールもたくさんありますね。
ホップはビールの苦味と香りの基ですが、産地や品種によってその苦味の質や香りの種類など実に幅広い選択肢があります。毎年、各地で新しい品種が誕生し、時にはホップが主体で新しいビアスタイルが生まれるほど重要な存在です。
日本においてもIPAが普及するに伴い、新品種や入手困難なホップなどに注目が集まるように。その後はCryoやExtractなどに代表される新形態のホップという選択肢も増えてきました。これはホップから香りの成分を効率よく抽出したもので、Hazy IPAなどの醸造には欠かせないものとなっています。
近年ではより"品質" の部分に目を向けるブルワリーも増え、栽培する農家の選定や、収穫からの日数及び鮮度、そして畑の中の1番良いホップをまとめ買いするなど、原材料をこだわり抜くことで世界のトップクラスにも負けないような高品質なビールが生まれるようになった、と感じています。
パシフィックでも当然、よりよいものをという精神で、少し値が張っても品質の高い原料を使用したり、適切な在庫量にすることで鮮度の良い状態を維持しています。
ただ、小さなブルワリー故、できないことも多く少し歯がゆい思いをしているというのも確かなことです。
ということで、今できる中で、1番品質の良いホップを使用してビールをつくりたいと思って仕込んだのがこのQomboという訳です。最新の収穫クロップ+仕込み当日にフレッシュバッグを開封することを条件に、その時気になるホップなどをチョイスして仕上げます。パシフィックの設備だと1仕込みに対して2パック(5kgx2)がIPAをつくるのにちょうど良い量でもあるのです。
今回はNZのRakauと、USのSimcoeの2種類をチョイス。Rakauは初めてつかうホップですが、近年注目されているNZホップの一種で、くどくない甘さと明るい印象が特徴。Simcoeは往年の人気ホップで、苦味つけから香りつけまでビールの骨格をつくるのにとても万能なホップです。
仕上がりですが、パイナップルやオレンジ系の甘さもありながら爽快な香りで、口に含むとジューシーさもありつつドライな印象もあり、果実感を伴った苦味をしっかり感じられます。
Westcoast、というほど苦味は強くはないですが明らかにノリはウェッサイより。全体にかなり明るい印象なのはホップの鮮度にもよるところなのかな、とも思います。
今後もその時々のベストなホップをチョイスしながら楽しんでつくろうと思っているので、次回もお楽しみに!
おまけ
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新鮮なホップを2袋つかって仕込むIPA!と、実にシンプルなコンセプトのこのビール。
安直な風にも捉えられるかもしれませんが、色々思うところもあって生まれたビールでもあります。
ビール、というか飲み物や食べ物に限らずものつくりをしていく中での一つの喜び?として"素材の良さを感じる瞬間"というのがあるかと思います。料理なんかの方がイメージが湧きやすいかとも思いますが、例えば茹でで塩をかけただけなのになんかめっちゃうまい、みたいなことです。何かと技術とかアイデアに目がいきがちなのです、いわゆる引き算的思考の末に辿りつくのは"素材"の重要性だと思います。クラフトビールの世界なんかはまさにその象徴のようでもあるなと思っていて、それは特に日本においては原料のほぼ全てを海外産に頼っている現状も大きな理由の一つだと思います。僕もビールつくりをしていて、素材が良かっただけ、と本当に謙遜とかなしで素直に思うときがあるのですが、そのほとんどは副原料(果実など)を使ったビールです。旬を感じたいという思いから、副原料を使うときは必ず未加工で、季節に沿ったもの、できれば顔が見える関係の方から購入させていただいています。そうしていると自然と、商業的というよりかは、こだわりを持った栽培をしている方と出会えるので、それらは当然とても良いものだったりします。で、先の話しに戻りますが、こちらは大したことをしていないのにびっくりするくらい美味しいビールが出来上がることが多々あり、そういう場面で"素材の良さ"を痛感するのです。
麦芽やホップはどうか?という問いに関しては、なんとも微妙な返答になりそうです。これは、使っているものが低品質という訳では全くないのですが、90点くらいの代物という感覚です。残りの10点を補うのはスペック的な問題ではなくて、物理的な距離とか思い入れとかそういう部分が大きいのではないかなと思っています。僕はこれまで、輸入の原料ということにコンプクレックスを抱いていたと思っていましたが、もっと重要なのは"素材"として向き合いきれない環境そのものなんじゃないかと、最近は思います。
そんなこともあって、まずは素材に自信を持った上でビールつくりをしたら、もっと自分の技術とも向き合えるのではないかと思っていて、その中で今僕ができることは仕込みの日にフレッシュバッグを開封するという行為だったのです。
もう少し大きなブルワリーにとっては毎日のように訪れる光景だとも思いますが、パシフィックのようなマイクロブルワリーは数仕込みで1袋を消費するくらいのスケールなのです。
僕らも真空冷蔵保存など最善策はとっているのですが、どこか言い訳じみた感じになってしまう時もあるので、そういう逃げ道みたいなものを作らないようにする意味合いもあるのです。
なんとなくずっとあった、もやっとした感情のひとつの話しでした。今回、良く考えて挑戦してみたら少しだけすっきりしました。まだまだやれることはありそう。ちゃんと、美味しいビールで勝負したい。と、日々のトライアンドエラーはつづくのであった...。