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Larges リリースです!
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【Larges】
Style:IPL
ABV:6.0%
IPAのようなホップの柑橘系の香りや強い苦味がありながら、ラガーらしいクリスプでドライな飲み口も。両スタイルの良さをハッキリと感じられる、ハイブリッドな仕上がりとなりました。
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ラガーらしいクリスプでドライな味わいでありながらIPAのようなホップの苦味と香りを楽しめるビールができました。
IPLとは、India Pale Lagerの略称です。その名の通りIPAとラガーという一見相反するふたつのスタイルの特徴を併せ持つスタイルでもあります。
今となっては特段真新しいものでは無く、それこそ'10年代のIPAブームの最中にこれらのIPAの派生系、Belgian IPA、Black IPA、Session IPA...などが誕生しました。
IPLというスタイルは僕の中では大きく二つに分かれ、IPAをベースとしてラガー酵母を用いて発酵を行ったものと、ラガーをベースとしてアメリカンホップを組み合わせたものがあると思っています。これらは似て非なるものであり、味わいというより思想に近い部分の違いでもあるので、ちょっと分かり辛さはあるかと思います。
Largesがどちらに属するかというと、後者のラガーをベースとしたIPAとしてのIPLです。ややこしい。
これまで定番商品であるPassific Lagerを始めとして様々なスタイルのラガーをつくってきましたが、パシフィックらしさとして共通するのはデコクションマッシングを活用したモルトのクリスピーさの表現と、ノーブルホップによるシャープな苦味があると思います。
これらは通常のIPAには無い要素でもあるので、今回はこの2点を軸としながら、ホップの組み合わせや使用方法などでIPAらしさを組み込みました。
仕上がりですが、グレープフルーツのような爽快な柑橘感とマスカットを思わせる華やかな印象がありながら軽めのクリスピーな香りが広がります。味わいもホップの苦味とモルトの香ばしさが交互に感じられ、ボリュームのある味わいでありつつもドライなフィニッシュになっています。それぞれのスタイルの特徴がうまく調和したハイブリットな味わいになったのかなと。
やや技術的な話しが中心となってしまいましたが、Largesはクラフトビールに求める味の要素が色々含まれた、なんだか心地の良い一杯だとも思います。気兼ね無く飲んで、気分を良くしてもらえたら嬉しいです。
おまけ
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Largesはパシフィックでも初めてとなるIPLというスタイルのビールでした。本文にもありますが、誕生してから割と歴史が長いものの、やや中途半端なスタイルであることからか人気のスタイルとはとても言えないように思います。
IPLというスタイルの中での細分化がされていないと言うか、ホッピーなラガーもしくはスッキリとしたIPAというだけの印象のものになりがちなのかなと。
これまで色々なラガースタイルを作ってきた中で、このハイブリットかつ曖昧な立ち位置のビールの存在が気になり、仕込みをすることとなった訳です。
パシフィックでいうとYeedleは原料から製法までとことん正統派であり、それと比べてPassific Lagerはクラフトラガーとも言えるような製法をとっています。それはヨーロッパ産以外に、アメリカ産のホップをチョイスしたりそれらをドライホップという手法を用いて発酵後のビールに漬け込んだりしています。
LargesはPassific Lagerをベースと置きつつ、全体のバランス感をとることで最大限のホップを受け止められるような味わいを目指しました。
出来上がったレシピを見て気付いたことは、Cold IPAともかなり近い立ち位置になるのかなと。Cold IPAの定義は諸説ありますが、ラガー酵母で高温発酵+米を使ったドライなボディ+IPA並のホッピングあたりがベースになっています。このスタイルの誕生の経緯として、Hazy IPAなどの甘さ中心のビールへのアンチテーゼというのがあるでしょう。
行き過ぎたホップバトルの末に生まれたIPAの濃厚さには僕自身もやや辟易する部分もあるのですが、でもやっぱりIPAってクラフトビールを象徴するようなスタイルということもあり、切っても切り離せないような存在だと思うのです。
今回このビールを作って改めて思いましたが、IPLって今の気分にピッタリなのかもしれないと。ビールという飲みものとしての美味しさを損なわずに、トラディショナルなスタイルには無いホップの味わいを最大限に感じられる、なんだか絶妙な立ち位置のビールなんだなと。
混沌を極めるこの業界に一石を投じる、というほど大きな事では無いですが、僕らなりの一つの提案ということで何かを感じてもらえたら幸いです。