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Spunding Rain リリースです!

【Spunding Rain】
Style:New Eazy Pils
ABV:4.0%

現役ブルワーが営む醸造設備会社「Spent Grain」とのコラボビール。設備の特徴を活かすことで、低めの度数ながら満足感のあるモルトのクリスピーさに、ホップからなる柑橘やハーバルな印象も加わり、爽快な1杯となりました。

現役ブルワーが営む醸造設備会社「Spent Grain」とのコラボビールができました。

Spent Grainはその名の通り、廃棄されてしまう麦芽粕(スペントグレイン)をアップサイクルして、犬用のクッキーの販売をするところから会社がスタートしました。現役ブルワーが営むというちょっとユニークなチームな訳ですが、次第にその商売の幅を広げ、今は醸造設備の販売やタップの施行などを主に行なっています。
醸造設備のメーカーは数あれど、それを取り扱うのがブルワーというのは意外と稀なケース。自分で実際に使う機材でもあるので、その理解度は当然高く、かゆいところに手の届くアプローチができるのです。絵の具屋さんが画家だったり、農家さんが料理人だったり、ギター職人がバンドマンだったり、なんかそんなイメージに近いです。
かくいうパシフィックの設備もスペントグレインが手がけたもの。幅広いスタイルに対応できる設備を、限られたスペースに納める必要があったのですが、彼らの協力のおかげで、期待通りのものになりました。こちらの要望はもちろん、ブルワー視点でのアドバイスなどもたくさんいただいたりと、とても頼もしいパートナーでした。

そんな彼らから、展示会などで提供するために一緒にビールをつくりたいと連絡をいただき、今回のコラボへと至りました。せっかくなので、パシフィックの設備を活かしたビールにするべくデコクションマッシングという手法を軸に置きつつ、低めのアルコールながら満足感のあるラガービールをつくることになりました。

仕上がりですが、ニュージーランドとドイツのホップの組み合わせからミントのような清涼感のある香りとモルトの柔らかいクリスピーさがあり、4%と低めの度数でありながら、薄い印象はなく適度なボリュームで満足感のある味わいです。スタイル名はニュージーランドのもじりなのですが、その名の通り実に今っぽいイージーな飲み口で何杯でも飲めてしまいそうな味わいです。

シンプルではありますが、醸造技術はもちろん、設備の特性まで熟知した彼らとだからこその、高い完成度になったのではないかと思います。繰り返し、杯を重ねてもらえたら幸いです。


おまけ

今回は醸造設備メーカー「Spent Grain」とのコラボレーション。というと、なんだか固い感じがしてしまいますが、2人ともよく知った仲でありまして。諒さんは、現CRAFTROCK Brewingのヘッドブルワー。僕は、パシフィックの開業準備をしながらクラフトロックに1年半くらい在籍していたので、元上司という訳です。年は僕よりだいぶ上ですが、業界に入ったのがほぼ同じタイミングなので、ある意味同期ともいえるような関係でもあります。また、永石さんは元Barbaric Worksのヘッドブルワーで、Hello Passificというビールも一緒に作らせてもらったり開業前からとてもお世話になっていて、今でも茅ヶ崎を拠点にしているので、わりと頻繁に会う間柄なのです。
なぜ設備メーカーがビールをつくるのか?というと、Spent Grainが横浜で開催されるJapan Brewers Cupのメインスポンサーになり、設備の展示などに加えてビールの提供もすることになったことから。今回はパシフィックの他にもYellow Monkey Brewing、蛍火醸造ともビールつくりを行いイベントで提供するそうです。

そもそも醸造設備メーカー、と言われてもあまりピンとこないですよね。スペントグレインは現在主に中国のTunwellというメーカーの設備の輸入販売を行っています。醸造設備というのは、既製品を購入するのではなくサイズや仕様にあわせて製作してもらうような形が多いので、スペントグレインは製造メーカーと僕らの間にたって、要望などをヒアリングしつつ、予算面などをすりあわせながら設備の仕様を固め、また完成したものを輸入、設置、組み立てを行い、今ではその先のビールつくりのサポートまでと、まさに醸造所開業におけるA to Zを担っているのです。
代理店を通さず設備のメーカーから直接購入することも可能で、当然コストも少し下がるのですが、言語の問題や認識の違いから思ったような仕上がりにならなかったり、煩雑な輸入手続きで苦労したりなど想定以上のメリットを感じ辛いというのが現実かと思います。
醸造設備は簡単に買い替えることができないので、スペントグレインチームとは、中国から送られてくる図面を見ながらあーでもない、こーでもないと毎日のように打ち合わせをしていました。1人でもオペレーションしやすく、かつ肉体的負荷を最小限に、そして多様なスタイルの醸造を行うために、細部に至るまで徹底的にレイアウトにこだわったのですが、こういうことを決めるのにも、ブルワー視点からのアドバイスなどもいただけたりするので、とても頼もしい存在でしたね。そして、Tunwell側のレスポンスもとてもよく、また設備の品質もとても高いことから、今でも不満がひとつも思い浮かばない?くらい良いものができたなと思っています。

僕らが購入を検討していた頃は、まだ数社ほどの導入実績でしたが、今では数十件を超える設備の導入を果たし、開業を考えている人の口からは1番最初に候補に上がる設備メーカーへと成長していて、流石だなと。物を売って終わりではなく、クラフトビールの未来のために醸造技術の指導も行うなど、もはやこの業界に欠かせない存在なのではないかとも思います。そんな彼らの活動の一端を担えた事はとても嬉しく光栄なことだったのでした。

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