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Himmel リリースです!

【Himmel】
Style:Helles
ABV:4.5%

ドイツ発祥の"淡いラガー"のヘレス。その名の通り、穏やかでありながら麦芽の風味と香りや、心地よい苦味が楽しめる味わい。ゆっくりと何度も杯を重ねたくなるようなビールです。

ドイツ発祥の"淡いラガー"のヘレスができあがりました。

2023年の春に行ったヨーロッパ研修。あれからもう1年半が経ちますが、未だにこの時の体験は自分にとってとても色濃く、ビールつくりにも多大な影響を与えています。

ヘレスとはドイツ語で"淡い"という意味で、南部のバイエルン地方にルーツを持ちます。当時はまだ濃色系のラガービールが主流だったので、それと比較して淡いという表現のようです。
一見するとPilsなどとそう変わらない見た目なのですが、それらに比べるとホップのキャラクターは実に穏やかで、その分モルトからなるパンのような風味であることが特徴です。
味を構成する要素が少ない分、とても繊細なビールで、作ってみたいけど良いバランスに収めるのがとても難しそうだな、という印象がありました。

これは、ヨーロッパの旅を経て感じた持論ではあるのですが、Pils,Helles,Kölschの3者には連立方程式のような相関関係があると思っています。端的に言うと、Pilsを起点にホップを少し減らしたものがHelles、そしてそれを上面発酵、低温熟成したものがKölschということです。これまでにYeedle(Pils)、Tutu(Kölsch)と醸造を重ねてきて、全体のバランス感への自信もついてきたので、今回の醸造へと至りました。
実際にレシピを組んでみると上記の方程式とほぼ合致。細かい要素やホップの品種こそ多少違いますが3者が生まれた背景と、その歴史とが結びついた印象です。

仕上がりですが、モルト由来のやや甘やかな香りと穏やかなクリスピーさのある口当たり。ホップのキャラクターはかなり弱いですが、適度に全体のバランス感の下支えになっている印象です。杯を重ねるとパンのような柔らかさが口に広がりつつもくどさは無く、もう一口と手が伸びる味わいです。低温でシャープなガス感と共に飲むのも良いですが、やや温度が上がってガスが落ち着いた時の印象もまた良いものなのです。

穏やかながら、表情も豊かで、季節を選ばず日常に寄り添うような、そんなビールになりました。


おまけ

たまには、レシピの話しなど。
本文でも触れた、Pils,Helles,Kölschの3者における連立方程式のような相関関係について。
上記の表は実際にパシフィックでつくったYeedle,Himmel,Tutuのスペックの1部をまとめたものです。
モルトの配合、IBU(苦味の単位)、ホップ量、初期糖度を指標としています。

端的に言うと、Pilsを起点にホップを少し減らしたものがHelles、そしてそれを上面発酵、低温熟成したものがKölschということです。

本文より

これらを参考にしながらそれぞれのビールのレシピについて比較していきましょう。まずは、PilsとHelles。モルトの構成はHellesの方がVienna Maltが+2%、これはクリスピーな印象を強化するためですが、かなり微細な違いです。ホップは-800g、IBUは-7程度。ホップ量や苦味を抑えることで、相対的にモルトのキャラクターを強調することが狙いで、ここがHellesのレシピつくりのキーポイントという認識です。
つづいて、HellesとKölsch。Vienna Maltの半量をWheat Maltに置き換えています。これはKölschらしいやや柔らかな印象を持たせるためですが、2.5%というのはかなりささやかな量です。ホップ量やIBUはほぼ同じで、初期糖度が-1plato、アルコール換算で-0.5%程度に相当します。飲んだ時の印象は結構違いを感じる両者ですが、スペック的にはかなり近い位置にいることが分かります。
また、PilsとHellesは同じ下面発酵酵母、Kölschは上面発酵酵母を用いて低温発酵をしています。他にもホップの品種や仕込みのプロセスなど色々と違いはあるのですが、根幹となるスペック的な部分はそれぞれにかなり近いところもあり、上記にあるような端的な相関性と一致するのかな、と思います。
それぞれのスタイルにももう少し幅があるので、作り手によっても全然違うアプローチがあるのですが、僕がヨーロッパで感じた3者の関係を改めて俯瞰してみると頭の中のイメージと合致する箇所も多く、とても面白い結果となりました。

どれもシンプルなビールではありますが、それ故にとても奥が深く、仕込みの度にこうして細かい部分に焦点を当てながら仕上げていく行程がとても好きなのです。

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