見出し画像

タイショーラガー リリースです!

【タイショーラガー】
Style:Yakionigiri Lager
ABV:5.5%

茅ヶ崎の焼き鳥屋「とり介」の20周年を記念したビール。名物料理の焼きおにぎり!?を隠し味に使ったラガースタイルで、ほんのりと香ばしさがありながら、キレのある苦味も楽しめる芳醇な仕上がりとなりました。
Illustrated by Uno Yoshihiko

茅ヶ崎の焼き鳥屋「とり介」の20周年を記念したビールができました!

20年前というと僕はまだ12歳、居酒屋でアフターファイブを過ごした思い出がまだ無い頃です。
茅ヶ崎は小さな居酒屋がとても多く、飲食するのに事欠かないのですが、とり介ができたばかりの頃はまだそれほどでもなく、小さな酒場やスナックなどがちらほらある程度だったとか。そんな時代から、場所も変えず、スタイルも変えず、20年間日々の営業を続けているというのは、本当にすごいことだと思います。

大人になってからは、近くでバイトをしていたのもあって、何かと焼き鳥を食べに行くように。パシフィックができてからは、缶ビールも置いてもらっていて、居心地の良い座敷とかもあるので、今でもしょっちゅう飲みに行く大好きなお店です。

とり介の魅力は、新しさでも古さでも無く、かといって退屈なことなんて全然ない、とてもいい意味での、"ちょうどいい"空気感なのかなと。"ちょうどいい"というのは、実に難しいのですが、この独特の安心感というのを味わいたくて、僕はこの店を選ぶのかもしれません。当然、焼き鳥もおつまみも酒の品揃えも最高な訳で。僕のお気に入りはももニンニクのタレに、鹿児島の芋焼酎をあわせること。夏はソーダ割り、冬はお湯割り。これだけで、何杯だっていけてしまう魅力があるのです。

そんなとり介の大将から20周年を記念したビールをつくりたいと相談いただき早速打ち合わせを。(もちろん、焼き鳥を食べながら!)
居酒屋らしく和の要素や、焼き鳥との相性など、色々と考えた末にたどり着いたのは、焼き鳥屋と言えば!の焼きおにぎりを使うことに。
一見、奇抜なアイデアにもみえますが、お米はドライな後味を表現してくれるし、焼かれたおにぎりの表面は、焙煎麦芽のような役割を果たしてくれるはず、と理にかなった方法でもあるのです。
そんなこんなで、朝早くから大将にブルワリーまで足を運んでもらい一緒におにぎりを握るところから仕込みがスタートしました。全部で40合を超えるお米を炊き、2時間ほどかけて焼きおにぎりをつくり続けました。香ばしいかおりは食欲をそそるもので、ビールにしてしまうのは勿体無い!?ほどでしたね。

仕上がりですが、麦芽からなるやや甘みをもったクリスピーな味わいでありながら、シャープな苦味とドライさからさっぱりとした印象も。焼きおにぎりらしく、優しく鼻に抜ける香ばしさも感じられます。全体に柔らかく厚みがありながらも、芯はしっかりとした一杯になったかと思います。

20年変わらずに、どんと構えながらも、来た人を包みこむようなお店。そんな「とり介」の節目にぴったりのビールになりました。


おまけ

わかりやすそうで、わかりにくい、なんとも独特な魅力を持った大将。頑固もののようで柔軟だし、ちょっと怖い人なのかと思ったら子供みたいに笑うし、大真面目に仕事をしたかと思ったら、急にふざけてみたり。一緒にビールをつくる中で、もう少しこの人のことを理解できるかと思ったけど、そんなこともなかったのです。ひとつだけわかったのは、奥深い魅力を持った人だってこと。で、それが具体的になにかと言うと、この段落の最初に戻る訳なのです...。

本文にもありますが、とり介がオープンしたのは20年も前のこと。僕はまだ12歳なので、その時のことは良く知りません。この町がどんな風だったのかとか、子供目線には記憶がありますが、飲み屋の事情とかはよくわからんのです。
で、とり介との1番遠い記憶を辿るとハタチくらいの頃になるわけなのですが(そりゃそうだ)、今のお店とあまり変わってないような気がするんですよね。内装とかメニューの雰囲気とか。だいぶ昔のことだし、記憶が曖昧なのかとも思って大将に聞いてみると、敢えてほとんど変えてないとのこと。なるほど。変えられなかったと、変えて無いのでは大違い、当然とり介は後者にあたる訳ですが、これは僕からしたらとてもすごいことで。自分の内面とか、社会の事情とか、まあとにかく色々なことを前にすると、つい変化を求めてしまうんですよね。言い換えると変わらないことへの不安に負けてしまうというか。新しいことに挑戦することは大切なことでもあるのですが、忘れてはいけないのは、良いものを提供するということが目的であること。変化することはあくまで過程なので、それ自体には特に意味は無いんですよね。で、変化するにしても、しないにしても、その過程の中にいる内は、それが正しい選択だったのか不安な訳ですよ。答えがでるのが明日なのか、10年後かもわからないですからね。そんな、日々の不安がきっとあったであろう状況で、"あえて変わらない"という選択をとりながら20年という月日を歩んだ事実というのは、何よりもすごいことだなとしみじみと感じたのです。

もう一つ大将が大切にしているのが、続けること。これは、僕も会社を始めたときからずっと向きあっていることでもあります。世界を大きく変えるようなインパクトを一度だけ残す、というのもすごいことなんだけど、実はこの続けるというのもとっても大切かつ難しいことなんですよね。商売で言えば、当然お金の心配だってある訳だし、例えそこがうまくいっても今度は自分が飽きないように、わくわくとし続けるという気持ちを持っていないといけない。みんな趣味とか部活とか、なにかしら経験があると思うけど、急に飽きちゃったり、ぽきっとやる気がなくなっちゃたりとか。そんなことは僕にだってよく起きることでもあります。
続ける、という一見シンプルな行動も20年を積み重ねた人の口から聞くとその重みが全然違いますね。

缶詰めを一緒にしながら「20年もやると、30年目も見えてくるもの?」と聞いたら、「20年目より、もっと見えない」って。ドキッとした。なんだか、先は長そうだなって。
僕らが立っているのは、途方もなく長い旅路の入り口なんだなと、実感。でも、怖くは無いかも。なんせ、近くにこんなに頼れる先輩がいるのだからね。背中追っていきますよ、タイショー!

いいなと思ったら応援しよう!