見出し画像

「FINE LINE」 アートワークに寄せて

FINE LINE Artwork

ついに「FINE LINE」リリースということで、少しジャケットについてご紹介したいなーと思います。

音楽についてはHATIHATI PRO.の自社販売特典のちっさい振り返りコメント集(まだ出てない?)や、インタビューやら、今後も無限に話すと思うのでそちらをチェックいただければと!

我々、1stアルバムからジャケットには拘ってきたつもりですが、回を重ねるたびにジャケットの重要度が増してきまして、今作は今までで一番大きな役割を果たしてくれたと感じました。その分、制作にかかる予算、労力、人員など全てが文字通り桁違いで、ぶっちゃけ蓋を開けると音楽原盤作る1.5倍くらいアートワークとフィジカルデザインに投入したのですが、本当にやってよかったなという気持ちです。

さて苦労のかいもあり、内容的にもとてもエキサイティングだったので、少しばかりその内側をご紹介したいと思います。

まず今回のキーパーソンといえばアートディレクターで指揮を取ってくださったとんだ林蘭さんですが、とんださんにはめちゃめちゃお世話になりました。とんださんはあいみょん氏のアートワーク周りをずっと担当されていることでも有名な方ですが、最近謎の交流で僕ら周りと仲良くしてくれていました(フジロック見てくれたりカラオケ行ったり!)。今作の宇宙人コンセプトがなんとなく頭にあって、マッチしそうなADさんを探していたときに、とんだ林さんならこれまでにない素敵なアートワークを作ってくれるに違いないと感じたのでした。用件言わずに相談があるんですとだだけ伝えて、ヒカリエの最上階のカフェに来てもらったら、「歌ってとか言うのかと思ったよ〜」と言われて、それもアリだなと一瞬思ったんですけど今回は叶わなかったのでまたどこかでお願いするかもしれません。笑

 急なお願いを快諾してくださったとんださんがその後、制作チームのコーディネートもしてくださって、蓋を開けると本当に有名な方々ばかり集まってくださって驚きっぱなしでした。みなさんすごすぎプロフェッショナルなので後ほどクレジットのお名前で検索してみてください。

 さて、今作のテーマというのを最初にお伝えした際の資料があったのですが、ほとんど写真や動画のリファレンスを集めたビジュアルボードみたいなものでした。その中で一番自分の中でクリティカルな映像だったのが、 GUCCI×PALACEのコレクションのトレイラー映像で音楽をProdigyが担当していたものでした。


これは最初に見たときにかっこいい映像だなと思ったのですが、アルバムのビジュアル考える時に思い出して、空気感とかユーモアの感じがかなりイメージに近くて参考にしました。(実際はっきりグレイスタイルの宇宙人が出てくるので、結構直球オマージュかもですね、、)要素としてはLA的な乾いた空気感、カジュアルだけど洒脱なファッション、日常の中に非日常的な存在が馴染んでいる状況などがキーワードで、その感じにそのときあった音デモの感じを合わせて重ねていただいて、後日とんださんがだしてくださったラフがほとんど完成形の構図と近いものだったと思います。そのまま、大きなリテイクもなく、撮影へと進んでいくこととなりました。

それでどうやってこういう画を撮るかという話になったのですが、これがかなり大変で。まず大きな問題が2つありました。1つは砂漠をどのようにして再現するか。もう1つが宇宙人の用意です。

1つ目の砂漠については、完全にCGで合成する案や鳥取砂丘とかまで行って撮影する案などデジタル・アナログ共に色々と検討されたのですが、完全合成は砂のテクスチャーの再現が難しく、砂丘に行くのは移動問題や照明問題などでNGとなり、最終的に室内スタジオの床に砂の近似色の塗料を塗った布を敷き、その上に砂をまいてテクスチャを作るという方法に落ち着きました。言葉でいうと簡単な感じなんですが、何も知らずに当日スタジオに入った我々は信じられない量の砂を目の当たりしてびっくりすることとなります。後ほど量を聞くと砂の総重量1トンとのことでした。ヤバすぎ!1トン搬入してもまだ十分ではないので、塗料を塗った布で補完し、最終的にレタッチして仕上げるということだったようです。1トンという数字のデカさを知ってから、このアルバムの音がなんだか骨太になったように聞こえてきます…。

砂のスタンバイ(ほんの一部)


 もう1つの問題が宇宙人どうするか問題。CGも案として上がりましたが、やはり実写の中に混ぜるには違和感が大きくなってしまうかもしれないため、実際に特殊造形で制作したほうが良いとなりました。それで、制作チームより提案いただいたのが合同会社ワザモノ(wazamono LLC.)さんでした。こちらもgoogleで調べてみてください。よく知ってる着ぐるみとか特殊造形がたくさん出てくるすごい会社さんです。こちらの職人さんにイメージに近づけるどころか、さらに造形物として印象的でより見た目の優れたものを提案してもらいまして、完成となりました。

Mica Levi - skunk boyのこいつがリファレンス
メンバーが適当に書いたイラスト
ワザモノさんからもらったラフ(可愛い)
3Dに起こして大体完成形に。


マスク完成後も難しいポイントはあって、特にマスクを被ってくれたらくちゃんがまだ年長さんなのもあってマスクをして真っ暗な中はいるのはかなりのストレス。涙が出るほど怖い思いと戦ってくれてなんとか撮影できました。らくちゃんとお母様には頭が上がりません! 本当にありがとうございました涙。

マスクを被るらくちゃん

これまでの制作ですとわりとミニマルに自分たちのコントロール下でできるデザインをデザイナーのスケブリさんと相談しながら作ってきまして、それらもとても満足感がアートワークとなっていましたが、今回はどちらかというと、自分たちのコントロールできない部分の大きい、巨大な動きにある意味翻弄されて、音楽もそれに導かれるように形を変えて、最終的に一つの結末に落ち着くような物凄くエキサイティングなアルバム作りとなったと感じています。今回は「他人の意識を制作にいれる」というのも裏テーマにしていたので、それが達成できたことにもとても満足しています。

僕たちの音楽やイメージを汲み取りつつ、大胆に新しいカラーを入れてくださったとんだ林さんとチームの皆さんには感謝してもしきれません! またぶっちゃけ話としてインディーミュージシャンの予算感の中で可能な限り理想を形にするために調整してくださった制作のミニトマト佐藤さん&大野さん、本当にありがとうございました!

そして、今作大胆にビジュアルの舵を切りつつも、これまでのアルバムのコアな部分を担保しつつ、しっかりとパソコン部らしいデザインにまとめ上げてくださったスケブリさんにも本当に感謝です! 文字まわりや印刷、DTP周りの経験への圧倒的な信頼感があるのはもちろんのこと、スケブリさんとは僕たちのデザインの趣味嗜好がツーカーなので、スケさんが最終的にまとめてくれるという安心感があったからこそ冒険することができたと思います。

というわけで今作かなりドラマティックに出来上がっておりますので「FINE LINE」はぜひ音楽と同じくらいアートワークにも注目していただきたいなと思います。特に限定盤、通常盤共に、フィジカルはスケブリ先生の珠玉の作品となっています! 個人的には音楽なんでもこのフィジカルだったら買っちゃうなという域に来てますのぜひチェックしてみてください。

こういう面白いことが多いので、サブスク時代、売れないCD作るのもなかなかやめられませんね。皆さんもぜひ手にとって1トンの砂の重みを感じてくださいませ〜〜

"FINE LINE" Artwork Credit
Album Art Director: Tondabayashi Ran 
Producer: Shinnosuke Sato, Erika Ohno
Photographer: Ryo Hanabusa
Stylist: Chie Ninomiya
Hair&make: Kanto Hitomi (people)
Designer: Shunsuke Sugiyama (mimoid.inc)
Retoucher: 安藤 瑠美/Rumi Ando
Props Art: Morii Kosaku (Morii-Bijutsu)
Props: Fritz Hansen
Assistant photographer: Kotaro Sato
Assistant stylist: Ekarina Shimodaira
green boy: Raku Hirashima
Model: Aki Shimizu
Model: Yoshie Nunoda
Model: Aika Nakamura (minitomato inc.)
Dog: Joji


お利口すぎるジョージを膝に乗せるスケブリ先生
とんだ林蘭さんと弊部(ありがとうございました!)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?