イタリアのアニメイベント『Romics』参加レポ
イタリアの首都ローマ。 石造りの街並の合間に気まぐれのように古代の遺跡が顔を出す古都で行われるアニメイベント、それがRomicsです。
年二回、10月と4月に開催されるRomicsは、2015年10月のイベントでは200,000人の参加者を記録した大型コンベンション。
※ただしRomicsは正式にはComiconに分類され、日本のアニメだけでなく、アメコミやフランスのバンド・デジネ、ゲームや映画といった幅広いACG産業をカバーしています。
今回2016年9月29日から10月2日にかけて行われた第20回Romicsに参加してきたので、レポートしたいと思います!
イベント情報
Romicsは欧州に多い典型的な物販&コスプレイベント。
実に350あまりの個人や企業による物販ブースが5ホールに分けて連なり、会場内をコスプレイヤー達が闊歩します。 ゲストパフォーマンスや学問的な講演会もあるにはあるのですが、数は多くなく、アメリカやイスラエルのイベントで見られるようなファン主導のワークショップ(コスプレHow Toやアニメの歴史解説など)や、アジアに多い二次創作も見当たりませんでした。
この物販とコスプレへの偏重は、Romicsに限らず、欧州の多くのイベントに共通して言える特徴かと思います。 Romicsの参加者は、付き添いで来ている親を除くと全体的に低年齢。ざっと見たところ平均年齢22歳くらいではないでしょうか。 アメコミと日本の作品の割合は7:3くらい。グッズ売り場もコスプレコミュニティも両者ではっきりとは分かれておらず、混在しています。
企業・物販ブースの配置については、アメコミと漫画とでエリアが別れていてもよさそうなのですが、ごっちゃごちゃ。バットマンの隣にラブライブ!のことりちゃんが並んでいる感じ。 こうした配置も、ひとつのイベントが分裂しないよう意図してのものかもしれません(し、単にめんどくさかっただけかもしれない……)
会場自体は、二階に渡り廊下があり一階のホールまでは階段やエスカレーターで下る方式で、幕張メッセを彷彿とさせます。 企業ブースメインの展示と、家族連れが多く見られる参加者模様といい、雰囲気は少しジャンプフェスタに似ているかもしれません。
Romicsは5つのホール+屋外のスペースを使って開催されます。 それでは5つのホールの様子をパパッと順番に見ていきましょう。
① Movie Village……物販ブースの他に、ハリウッドやディズニー映画の宣伝立て看板が各所に置いてある、映画・放送関連の公式ブースが集まるホール。日本の作品では唯一ONE PIECEのGOLDの立て看板がありました。漫画や映画関連の講演会も開かれていたようですが、あまり人入りはよくなかったです。
② PALA COMICS……漫画・アメコミ・ヨーロッパの漫画(バンド・デジネ)が販売されているホール。
公式コミックの他に、アマチュアが出している同人誌を扱うブースも1・2個ありましたが、少数派。同人誌の輸入販売も見かけませんでした。(⇄アメリカでは同人誌を個人輸入してマージン乗せて販売している業者が結構多い。)
そして私はここで!海外訪れた際のmy恒例、黒子のバスケの青峰くんが出ている巻を購入!
青峰くん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!
ただ、その値段が一冊4ユーロと翻訳漫画にしてはやけに安くてびっくり。 Twitter上で、それは海賊版なのでは?と指摘され調べてみたところ、どうやら一応正規品のようではあったのですが、事情は複雑なようで。
欧州で漫画をライセンス販売している会社はいくつかあり、少年ジャンプ等の集英社作品についてはViz Mediaというところが基本扱っているのですが、私の買った漫画、最後の奥付けにしっかり「Copy right: Viz Media Europe」と書いておきながら、その上の方には「Star Comics」という別の会社の「Dragon202」というブランチが出版しているとの記載が。
どうやら、実際の翻訳と印刷はこのStar Comicsは行い、ライセンス自体はViz Mediaが保持しているという関係のようです。
※25/1/11 note移行時に追記:今となっては上記の事情が複雑でもなんでもなく、ごく普通の慣例だと分かります。出版権のライセンスにあたっては、Viz Mediaなどの大手が欧米圏全域の権利を「マスターライセンシー」として日本の権利者(この場合集英社)から許諾され、個別の国の出版社に「サブライセンス」(=権利の再許諾)するのが通例です。
PALA Comicsには、翻訳漫画・アメコミの販売ブースだけでなく、イタリア発の漫画出版社のブースもありました。 特に私が注目したのはここ、Shockdom。
イタリア人の漫画家の作品を専門に扱っている出版社です。
バスケ漫画が売られていました(※同人誌ではなくオリジナル作品)
Shockdomはデジタル版に力を入れており、多くの作品がPDFなどでダウンロード購入出来るため、興味のある方は是非。 ちなみに今回訪問時、現地で何気なく呟いた以下のツイートが5000RTされまして、 https://twitter.com/Persimmo87/status/782909548793323520
大変びっくりしたのですが、正解はこういうことでした。 https://twitter.com/Persimmo87/status/782909616925663232
③Comics Meeting& Lab Play Space……フランスバンド・デジネの作家が漫画の描き方を教えたり、マーベルコミックスの複製原画が展示されていたり、サイン界が開催されていたりしているブース。
FabLaboでの3Dプリンター展示なんかもありました。
④PALA Romics……ステージイベント用のホール。海外のイベントにも呼ばれることの多い殺陣パフォーマンス集団Kamuiの方々のゲスト演舞や、現地の吹き替え声優のトークショーが行われていました。
⑥ PALA Games……ゲームとYouTuberを特集したホール。YouTuberはイタリアでも大人気らしく、サインを求める人の山で一体誰が来ているのか分からないほどでした。
物販状況について
輸入代行業者のブースで売られているものは実に多様で、Tシャツやアクセサリー、コスプレ道具に被り物、フィギュアなどが多いように見えました。(被り物は25ユーロ程。トラファルガーローの帽子など。Tシャツは約15ユーロ。)
他の国で多く見られるようなポスターはそこまで多くなく、DVDの販売も見かけませんでした。
コスプレ用のウィッグやカラコン、武器も沢山販売されていました。
アメコミやフランス漫画は正規ブースを出しているところも多かったのですが、おそらく日本から正規で出展していたのはTamashii Nationという国際フィギュアラインを有するBANDAI、またそのグループ会社バンプレストのみ。
ただ集客は他の海賊版グッズ販売業者に比べると芳しくなく、おそらくですが、公式であることをアピールするためにガラスケースに整然とフィギュア商品を展示するという手法をとってしまったことが、「高そう」に見えて、かえって客を遠ざけてしまったのではないでしょうか。
残念なことに、安い海賊版が出回るイベントに慣れた海外のファンは、折角公式商品が販売されていても値段を理由に購入まで至らないケースが多いように思います。
プレミア品・イベント限定品目当ての来場者が多い日本のイベントと違い、そもそも日常生活でグッズを購入する機会自体がない海外では、とにかく安いグッズを求めて若者が集まっているのがイベントの現状。
ちなみにこちらは個人輸入業者のブース。
ラーメンやお菓子を売っているブースもあったのですが、案の上パッケージに書かれているのは日本語ではなく中国語や韓国語……。
会場内にチョコレートファウンテンを設置して、チョコがけワッフルを販売しているところも!
各ホールにはイタリア風のパン・揚げ菓子のスタンドも出ており、私はここでシシリアンみたいな名前の揚げたパンの中にご飯が詰まっている屋台飯を買って食べました。
また、こうしたイベントには珍しく、K-POPグッズの販売ブースをほとんど見かけませんでした。唯一1ブースあったところはあまり集客が芳しくなく、ただ途中ゲストで実際のアーティストを呼んだ時には人が集まっていました。
他に見かけたのは、その場でフェイスペインティングを施してくれるブース。
コスプレ
海外のアニメイベントの常として、コスプレを着た状態で皆さん基本来場。
コスプレでの来場者は入場料金が安くなるという特典もあるので、むしろ着てこなければ、という状況。
世界コスプレサミットのコンテストエントリー参加者は、さすがに思わず振り返ってみてしまうようなハイクオリティなコスプレイヤーさん達だったのですが、全体的には比較的簡単なコスプレが多い印象でした。 全参加者のうちコスプレしているのは5%〜10%程度。
コスプレされている作品や売られているグッズから判断するに、ファンのついている作品は一昔前の固定作品となっているように思われます。 コスプレのバリエーションもそこまで多くなく、犬夜叉(犬夜叉と殺生丸のコスプレイヤーがかなりいた)、ソードアートオンライン、ラブライブ!、終わりのセラフ(終わりのセラフ、日本より海外で存在感がある)、NARUTO、ワンピース、ハガレン、大体ジャンルでいうとこれくらい。(勿論中には、ヤッターマンや、東京ミュウミュウなどもいましたが極少数派でした。) ドラマダ(Dramatical Murder)ディアラバ(Diaboric Lovers)、刀剣乱舞を各人組ずつ見つけましたが、それ以外の最近の作品のものは見かけませんでした。おそ松さんやうたプリも無し。 一方でポケモンの擬人化は、今年7月にローンチされたポケモンGOの影響でかなりいました。エーフィとブラッキーの擬人化が特に人気で、面白いところではレアコイルの擬人化などもありました。
ポケモンはグッズでもその人気の高まりを見せ、ポケモンGOをモチーフにしたTシャツや缶バッジなどが数多く売られていました。
私は初日のみの参加だったため直接は見られなかったのですが、イベント二日目には世界コスプレサミットのイタリア予選も開催されました。 International Yamato Cosplay Cupというコンテストと共催です。これはヨーロッパを中心に行われているコンテストで、 世界コスプレサミットと違い、 ・ アメコミなども審査対象に含み ・ ペアの代わりに一人でもエントリー出来る コスプレ大会を、との理念から、ブラジルのサンパウロにあるYamato Cosplayという団体が主催して数年前から開催されるようになった大会だそうです。チャンピオンシップは毎年7月にサンパウロで開かれるアニメイベント、Anime Friendsで行われています。 確かに会場でも、アメコミに題材を得た非常に高いレベルのコスプレイヤーさんを何人も見かけました。 その他見かけた素敵レイヤーさん達。
その他
年齢層が若いこともあり会場は全体的に学園祭のようなノリで、誰かが歌を歌い始めたら周りの若者が一斉に唱和したり(アニソンというわけではなく、サッカーの応援歌のように聞こえた)道端に寝転んでじゃれあったりといった様子が見られました。
あと目立ったのが、Free hugと書かれた紙を持っている人々。
中には自分の顔にその言葉をペイントしてしまっている人までいました。海外のアニメイベントではフリーハグをしている人をよく見かけますが、ここまで多いのは初めて。すれ違う人の10分の1はFree Hungやってるんじゃないかってくらい。やっているのは主に10代のヤング層。一種のコミュニケーションの形としてイタリアでは今流行っているのでしょうか。
イベント概要
チケット情報
事前にオンラインでも購入出来る。値段は当日券と変わらないが、列に並ぶ必要が無いので便利。 一日10ユーロ、四日で22ユーロ。 当日券としては、金土日の三日間なら20ユーロで、土日だけなら15ユーロ。コスプレイヤー専用の割引券である5ユーロ(レイヤーが追加料金を払う日本と違い、海外ではコスプレイヤーは会場の人々を楽しませる一員と考えられ割引を受けられる)のチケットも販売されている。 私は土曜日の1時頃に会場に到着したのだが(オープンは10時)購入列は大体5分待ちでそこまで長くなかった。けれど朝一で着く予定の方は、事前に購入して印刷してから会場へ向かった方が賢明かもしれない。
会場情報
会場のFeria de Romaは、ローマのターミナル駅であるTermini駅から電車で南西へ下ること約1時間。ローマのFiumichino空港からは電車で10分の距離にある。私は今回ローマの北東、つまり真逆の方角の安宿に滞在していたため、朝一で行く予定のところを諸事情により11時半に宿を出て向かうことになったのだが、イタリアの交通システムは本当に分かりづらくて(昼になると電車が無くなったりストライキで電車が無くなったり)予定より長く、到着まで一時間半かかってしまった。電車の中は会場に行く人達で満員。Feria de Romaはとても小さい駅で、人二人が並んで通れる位の階段しかない。切符販売機に関してはひとつもない。
(これについてトラブったので、いずれイタリア旅に関するポストに書きます。イタリアの鉄道会社とは4日間の滞在で三回トラブルがあり、現在クレーム対応を求めている状況……)
行きは昼過ぎに行ったからいいものの、帰り直接空港に向かう際、駅に入るのに長蛇の列で、30分程待たされた。列整理がうまく出来ていない印象。とにかく列が全然進まなかったので、後に予定がつかえた状態で参加される予定の方は要注意。
というわけで、以上、イタリアのアニメイベントRomics参加レポートでした!